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≪REVENGE†GAME≫

≪REVENGE†GAME≫



■説明書■



◆所要時間約10時間の新しい形のシミュレーションゲームです。


◆1日1回しかプレイできません。


◆復讐したい相手のお名前をご登録下さい。(10名までご登録出来ます)


◆メンバーの誰かが死んだら、一旦そこでゲーム終了となります。


◆リセット機能やセーブ機能はありません。(本体の電源を落とした時に、自動的にセーブされます)




■注意事項■



◆メンバーの入れ替えは出来ません。


◆必ず1日1回プレイして下さい。何日もゲームを起動しないと、強制的にランダムでメンバーが減ります。


◆1回のプレイ時間が極端に短時間であると、強制的にランダムでメンバーが減ります。


◆ゲームを起動していても、極端にストーリーが進まないと、強制的にランダムでメンバーが減ります。


◆本ゲームはひとり1度だけしかプレイ出来ません。


◆本ゲームはどなたでもプレイ出来ますので、ゲーム終了後、ご満足頂けましたら必ず廃棄して下さい。






~では、お楽しみ下さい~






**********






私は、真っ黒な小包を手にして首を捻った。



宛名は確かに私宛て。



けれども、送り主の記載がない。

宅配便を利用する様な荷物の大きさにも関わらず、宅配業者を利用した形跡もない。

切手も貼ってないし、当然消印もない。

郵便受けに入る筈もないその小包は玄関先で転がっていた。




……これは、直接持ってきたのかな?



その考えに至った私は、一軒家の、防犯としては役に立ってなさそうな門扉まで戻り、キョロキョロと辺りを見回した。


しかし、家に帰ってきた時と同様、やはり人の気配はなかった。




家の中に入って二階の自室にあがり、制服から部屋着に着替え、落ち着いたところで小包を開けてみる。



小包から出てきたのは、真っ黒なゲーム機? だった。

それと、これまた真っ黒な二つ折りの紙切れ……説明書? であろうか。



そのハンディタイプのゲーム機本体は、見たことがない機種だった。

勿論、私が知らないだけの可能性もある。


小学四年生の弟はゲーマーでしょっちゅうテレビにかじりついているが、私は弟に付き合う程度にやるくらいで、自ら積極的にはゲームをやらないからだ。



後で、弟にちょっと聞いてみる事にしよう。



そう思いながら、ゲーム機だけでは何もできないよなと思いつつ、真っ黒な紙切れを開いてみる。




読んで、固まった。

REVENGE†GAME、と書いてあったからだ。


REVENGE……復讐。

なんだか、気持ち悪い。


ちょっとホラー系統の表題が気持ち悪かったのではなかった。

今の私の心境を読んだかのようなタイミングが、気持ち悪かったのだ。






**********






夕飯前に弟の部屋を覗くと、案の定ゲームをプレイしている最中だった。

画面を見ると、今流行りのロールプレイングゲームだ。


丁度戦闘中で、プレイヤーの名前はリューヤ、リン、カズシ、ケイコ。


我が家の家族全員、勢揃いをしている。


今まで何度色んな冒険に私が駆り出されたかわからないが、生意気になってきた弟のこんな部分は、小学生らしくて微笑ましい。



戦闘が終わったタイミングを見計らい、真っ黒なゲーム機を見せつつ「これ知ってる?」と聞いてみた。


「なんだよねーちゃん! それ新しいゲーム機? 俺にもやらせてくれ!」

弟は目を輝かせ、興味津々で食いついてくる。


ゲーマーな弟も、知らないようだ。


「これはゲームソフトがないから使えないの!」

私はそう誤魔化したが、弟は引き下がらない。


「そんなこと言って、ゲーム機本体にソフトがダウンロードされてるんじゃないの?」



あ、なるほど。

ゲームソフトが同梱されていない理由は弟のお陰でわかったが、弟にやらせたい内容のゲームではない。



「あ、ほら何か飛んでるよ?」

私は弟が手にしているゲーム機の画面を指差して弟の目線を画面に戻すことに成功し、苦し紛れだったもののなんとかその隙にさっさと部屋から抜け出した。






**********






家族四人揃って夕飯をいただき、お風呂に入って自室に引きこもる。



私は真っ黒なゲーム機を前にして、ぼーっと早紀のことを考えていた。

早紀は、私の親友だ。

小学校時代から今通っている高校まで、ずっと仲良くしていた。


ところが最近、早紀の様子がどうにも変だったのだ。

聞いたら、イジメられているという。


早紀を虐める集団は派手で目立つ為、私も知っていた。

けれども私は臆病で、早紀の為にイジメを止めるように、注意することが出来なかった。



私が一番嫌なのは、その集団ではなく、注意すら出来ない自分だ。


早紀を虐めた彼女達に復讐したい、なんて表現は大袈裟過ぎる。

けれども、早紀の代わりに、せめてゲームの中でだけでいいからちょっとだけ……ほんのちょっとだけ、やり返してやりたい、と思ってしまった。




真っ黒な二つ折りの簡単な説明書には、所要時間はたったの十時間ほどと記載してある。


いくら私があまりゲームをやらないといっても、シミュレーションゲームでこの所要時間はかなり短いと理解できた。



だから私は。


こんなことでほんの少し、気が晴れるなら、と。





REVENGE†GAMEを、起動……してしまった。

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