もし魔王にもプロローグがあるなら
関節痛が…
インフルじゃないといいな
生まれも分からず、何故か生き延びた。
ゴミを漁りゴミと罵られ生きたことに後悔してなお生きることにしがみついた。
体は小枝のようで背も小さく声も出ず、何故生まれたのかと、何故自分だけが生き残ったのか嘆き、死にたくないと涙を流してうずくまった。
次第に動けなくなった。
唯一の財産だった毛布をクソ餓鬼どもに目の前で焼かれても、もう贖う力なんてなかった。
涙も枯れ、目も開かず、
このまま死ぬのかと心の奥底で思い、少し安堵した。
そして神を恨み呪った。
夜なのか昼なのか朝なのか、ここは何処なのか自分さえ誰なのかわからなくなった。
死んだら楽園があると言うが、皆からゴミとして扱われる自分でも入れてもらえるのだろうか……。
このまま死ぬのは嫌だ。
もし…体が動くなら、誰でもいいっ!
誰か、幸せな誰を道連れにしてやりたい。
そんな湧き上がる気持ちに動かない体を呪い世界を呪った。
誰か、誰か誰か誰か!
力を
力を下さい
ーーー力が……欲しいか?
ッ!?
その声は、耳によく入って来た。
すでに聞こえなくなったはずの耳からその声は聞こえて来た。
力が…欲しいか と
力、ああ、そうだ
力
力が欲しい
欲しい欲しい
力があれば
やり返せる、奪える、殺せる!
欲しい!くれぇ!寄越せ!
力があるものが奪い、自分もそうされて来た、ならば力…があれば
欲しい、そんなもの
与えられるものならば、与えてみろ
多分、声は出なかったと思うが口は大きく開いてそれから動かなかったはずの体は動いて右手が彼の足を掴んでいた。
ーーふふふ、はははは!良かろう良かろう
ーーー少し眠れ
◆◇
懐かしい夢を見た。
まだ自分が人間だった頃の話かな。
孤児として生まれ孤児院にも入れず世間から見捨てられたスラム街でも更に見捨てられたゴミ捨て場で私は生きてきた。
誰かが捨てた何かがスラムに集まって、スラム街の誰かが捨てた正真正銘のゴミがゴミ捨て場に集まる。
そんなゴミ捨て場の住人からしたら、捨てられるゴミも宝だ。
腐ったパンのカスも、何かの骨も、ゴミ捨て場の住人も…。
昨日の友人が今日のご飯なんてよくある話だ。食べ物に困ったから殺しましたなんてザラにある。
スラム街に慈悲を与えにきた聖女様は慰め者になりスラム街の人間に慈悲を与えぼろぼろになってゴミ捨て場に捨てられて食べ物として私たちにも慈悲を与えてくれた。
しかし、それっきりで、それからはまた同じ繰り返し。
そして死にかけていた。人生に絶望していた私を救ってくれたのは慈悲深き聖女でも神様でもなく錬金術師だった。
神は嘘ばかりだが、錬金術師は嘘はつかなかった。
力を望んだ力を与えてくれた。
望めば望むだけ。
やせ細った体は人間の大きさを超え肥大化し見えなくなった目は開き、万物を見通す魔眼として開眼した。
聞こえなかった耳は些細な物音でも聞こえる程によくなり、背中には羽が生え、口からはブレスが吐けるようになっていた。
種族名をアビスナイトデビルキメラドラゴンとか言っていた。
彼がまだ待てと言ったが、私が人間の頃から溜め込んでいた恨みが溜まりに溜まり、ついにいい付けを破って同じ境遇の仲間達と脱走した。
本能の赴くままに木を焼き、山を削り人を薙ぎ払った。
少し前まで恐ろしかった剣は通らず、魔法は弾いた。
この素晴らしい体に感謝をしたとともに強者の快感を味わった。
初めて自分が強者になれた瞬間…怯える人間を見て私たちは獰猛な笑みを浮かべて泣き叫ぶ悲鳴を聴きながらゆっくりと握り潰した。
快感に溺れ、幸せな誰かをこの世界を恨みんだ私達は自身らの強さに気づいた。
あらゆる魔物より早く走り鉄すら引きちぎる怪力を持つ者。
山を貫通する程の魔法を操る者。
ありとあらゆるものを食べそのものの能力を得られる者。
私たち…いや我々は、あの神よりも慈悲深い錬金術師によって魔物の力を取り込んだ人間として改造された仲間達の意味を込めて、人間を超越する種族。魔族を名乗った。
そしてかの錬金術師を我らの希望、魔族の神"魔神ディール"として崇拝した。
それと同時に世界中に存在する偽物の神とそれらを崇める国家を襲撃し滅ぼしていった。
いくつか滅ぼし、人間どめを虐殺してようやく落ち着いた頃には何年も経っていて、脱走したことを謝って力を与えてくれたことに感謝しようと施設に赴いたがすでにもぬけのからで我々は後悔した。
我らの神に懸賞金をかける不届き者は数多くいたが、情報はなく結局あえていない。
人間の支配地を魔族の支配地に塗り替え国を築いてからは戦争は少し落ち着いた。
落ち着いてからは、つがいになるものも多く魔族は繁殖力が強くここ数百年で人間の3分の1程にまで人数を増やした。
身体的な利のある魔族と知と数に利のある人間との戦争は泥沼化した。
人間は努力しなければ強くなれないが技術によって対抗する。
魔族はただ生きてるだけで強くなる、食べたらもっと強くなる努力したら更に強くなる、戦うとかなり強くなる、傷つくと信じられないくらい強くなる。
そういうように作られた。
強く強く強く強くなった。
強くなっても更に強さを求めて努力した。
世界は人間だけじゃない、ドラゴンも、得体の知れないものもいる。
肥大化した体は洗練され、次第に小さく魔力は濃く濃縮された。
そして人間に姿が戻った時、私は魔族の長、魔王に正式になった。
魔族で魔王を名乗る奴らを力でねじ伏せた。
今日から魔王になる×××××だ。今までの緩いやり方はもうウンザリだ。
我々魔族がなんなのか忘れていないか?
絶望だ。あの絶望を思い出せ。
弱い自身を呪い、幸せそうな誰かを憎んだあの日を。
我々に剣を向け、魔法を打ち効かないとわかって怯えた愚かな人間どもを!
さあ、進撃だ。滅ぼせ、殺せ、喰い散らせ!
自慢の牙で、爪で、炎で!
奪ってやろう。
全てを奪い世界を絶望に塗り替えてやろう。進め、進め、もっと進め、行けるところまで行ってやろうではないか!
さあ、蹂躙せよ!
アレは若木の至りというやつだね。ちょっと恥ずかしいな。
しかし、こんな夢を見た日だ。
きっとそろそろ会えるんじゃないかと思っている。
読んでいただきありがとうございます
次回も章にあれとおりプロローグです(まだ書いてない