第5回 懐かしの再会
今回は、久しぶりに友人と会って
歩があることを決意します。
プチ同窓会が開かれるまでは良かったのだが、全員の都合が合わず、結局そのまま晴香がつわりになってしまい、彼女のつわりが落ち着いてきた妊娠4ヶ月目、ようやく僕らは再会した。
「とりあえず・・・カンパーイ!」
焼肉屋でのプチ同窓会。そこの片隅でそれは行われた。
「それから、中西夫妻にカンパイ!」
改めてそんなふうに言われると照れくさくなる。僕らは顔を見合わせて苦笑した。
中学、高校とエスカレーター式の学校に通い、当時特に仲が良かった男子4人、女子3人で集まり、今まで忙しくて会えなかった時間が嘘のように会話が弾む。
「高校で歩と晴香がつきあうことになったときは2人で泣いたよなー、クマ」
すでに酔い始めた内田が、向かい側に座る熊谷に話をふる。通称クマは焼肉を頬張りながらこくこくと頷く。これは男だけの会話だった。
「でも、俺は自分がモテないことわかってたから半分あきらめてたけど・・・内田は結構本気だったんじゃない?」
「まあな。歩よりは仲良かった自信があったからな」
そんな内田に睨まれて、僕は苦笑いでやり過ごす。
当時、僕も内田と一緒に一目惚れした晴香と仲良くなろうと頑張ってきたつもりだったが、どうもそれがもどかしく、さらに長い時間そうだったためか、逆に晴香のほうから告白されてしまったのだ。
「まぁなんとなくわかってたけど。今だから言えるけど、晴香の奴、中学んときからずーっと歩のこと見てんだぜ?当の本人それに気づかねぇでさ」
内田はやだやだと言ってイスの背もたれにもたれかかる。
「葉山も学生結婚しちまうし」
急に話をふられた葉山は苦笑いをしながらビールを飲む。
「葉山んとこの子供って、今何歳だっけ?」
「2歳。子供はいいぞー」
そう言って、葉山は僕のほうを見た。僕は友人の中で人生の先輩である葉山を見返す。
「歩、足の臭い親父にだけはなるなよ」
ありがたい忠告をもらった。
「楽しみにしていた割には落ち着いてるね」
始終僕の周りをパタパタと飛んだり、肩で羽を休めたりしていたテンにようやく話しかけたのは、僕がトイレに行って1人になったときだった。
「だって・・・もっと俺たちの仲間に会えると思ったのに・・・ここ全然いないんだもん」
テンは寂しがっているが、それは少なくともこの中で誰かがすぐに死ぬということはないということだ。少しだけほっとした。
「そういえば・・・テンはなんで死神になったの?その前はなんだったの?」
「そんなの覚えてないよ。ただわかってるのは・・・俺はこれからずっとこのままなんだよ」
言っている意味がわからない。テンはいつものように明るい声だったが、ほんの少し寂しそうに言った。
「お兄さんには終わりがあるでしょ?だけど、それが俺にはない・・・」
「そう・・・なの?」
「でもいいんだ!これが俺の生き方なんだ!」
急に無邪気さが加わる。僕は言いようのない感情を覚えた。
「お兄さんは?」
「え・・・?」
「自分の生き方に満足してる?」
∞
テンが本当のことを言っているということはあれから一緒にいるだけでよくわかった。
その上で僕が出した結論は、今まで1度も考えたことがないものだった。
それを言うために、僕は心の中で何度もシュミレーションした。何度も何度も失うために・・・
「晴香」
自宅のドアを開けたとき、ようやく僕はそれを決行した。
「離婚してほしいんだ」
「え・・・・・・」
玄関で立ち止まる晴香。僕は彼女のほうを見ずに言い放った。
「他に好きな人ができた。その人と結婚したいと思ってる」
初めての嘘を・・・
この話は、ちょっとした遊び心が
入っています。
気づいた人だけ気づいてほしいです。




