表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守りたいもの  作者:
4/10

第4回 心配かけたくない


今回は、テンが本当に死神だと

認識する話です。



 結局事故に遭った車に乗っていた運転手は助からなかった。しかし後部座席に乗っていた、運転手の子供は奇跡的に一命を取り留めた。

 目撃者として警察に事情聴取され、いろいろな意味でくたくたになった僕は、いつもよりかなり遅い時間に帰宅した。

 マンションのエレベーターに乗った直後、今までどこにいたのか急にテンが話しかけてきた。

「どう?これで俺の言ったこと信じてくれた?」

 いつ聞いても明るく無邪気な声。僕はげっそりしながらため息をついた。

「・・・テンは本当に死神だったの?」

「そうだよ。死神とはちょっと違うけどね。お兄さんはそう思ってくれてもいいよ」

 パタパタと頭上を飛び回るテン。死神なんて聞くと、とある有名マンガの死神を思い出すが、あれとは根本的に何かが違うと思う。

「むっ・・まだ信じてないな!じゃあこれならどう?明日の午前3時、芸能人のナンセンス加藤さんが突然の脳梗塞(のうこうそく)!」

「わかった!・・・わかったから、もういいよ」

 言いながら、昨日朝の生放送番組にナンセンス加藤が出ていたことを思い出した。

 もし彼が死んだら、本当に信じなくてはいけない。もうすぐ自分が死ぬことを。



「ただいまー」

「歩!」

 玄関のドアが開くと同時に、待っていたらしい晴香が飛びついてきた。突然のことだったから、僕は驚いてしまった。

「事故現場に遭ったんでしょ?ケガはない?大丈夫?」

 本当に心配していたんだろう。矢継ぎ早に繰り出される質問に、僕は胸が痛くなるのを感じた。

 晴香に心配をかけたくない。

「大丈夫だよ。それより遅くなっちゃってごめん」

「ううん・・・本当に大丈夫なの・・?」

「大丈夫だって。事故現場に遭ったって言っても、結構離れてたからね」

「そうじゃなくて・・・・・・歩、傷ついてないよね?」

 晴香のその言葉に少し驚いた。彼女は僕の内面の心配をしているのだ。

 やっぱり・・・晴香には敵わないな・・・

 心配をかけたくないと思ったすぐ後に、すでに心配をかけていた。

「心配かけて・・・ごめん」

 ただ、それだけしか言うことができなかった。


          ∞


 翌日、朝のニュースで、ナンセンス加藤の突然の死亡が報道された。

 テンと一緒になってテレビを見ていたが、晴香はそれに気づかない。どうやら、テンの姿が見えるのは僕だけのようだ。

「ほらねー!すっげーだろ、俺」

 ついでに声も聞こえないらしい。

 テンには訊きたいことが山ほどある。さすがに晴香が傍にいる状態で話しかけるわけにはいかないので、2人になったときに訊こうと思った、そのときだ。

 家の電話が鳴った。

「もしもし、中西です」

 電話に近い僕が出る。

『歩か?内田だけどー』

 電話の向こうから聞こえてくる懐かしい声。途端に心が弾んだ。

「内田!?久しぶりー!」

 僕の声に反応して晴香も傍にやって来る。

『久しぶりって・・・昨日メールで話したじゃんか・・・子供ができたって。まぁ、声聞くのは久しぶりか』

 中学時代の僕の恋敵である内田とは、変わらずに今でも交流をしている。だけど、こんなふうに声を聞くのは本当に久しぶりなことだった。

『でな、今度中学高校で仲良かった奴らだけで集まって、プチ同窓会しようって話になったんだ。お前らの懐妊祝いも兼ねてな』

「懐妊祝いはついで?」

『冗談だって!とにかく主役が来いよ?葉山もクマも楽しみにしてるって』

「行く行く」



 少し暗くなりかけていた僕に嬉しい出来事がやって来た。

 僕も晴香も楽しみにその日を待っていたが、僕らよりも楽しみにしていたのが、

「すげーすげー!!俺、超楽しみなんだけどー!!」

 最近では、テンが毎日カレンダーの周りを飛ぶようになった。

主人公が思い描いていた死神とは…

マンガであり、アニメであり、小説であり、

実写版にもなった作品の死神です。

全然違いますけどね…


ナンセンス加藤は特に深い意味はありませんから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ