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理由

刺激を受けた動画:

『 双翼の独奏歌 神崎蘭子、二宮飛鳥 』

https://www.youtube.com/watch?v=DNCHJD10GRM

『 ØωØver!! 前川みく、多田李衣菜 』

https://www.youtube.com/watch?v=AAB-aeEHAvg

人格転移マインドアップローディング技術開発の功労者たる、

新帝国の科学長官ストラスは、感慨(ぶか)げににかく語れり。


「〝帝国〟の最先進種族は、量子頭脳への人格転移によりて、

高度演算・共有人格形成能力を獲得すると共に、

その人格群もまた生物学的寿命を克服せり」


「一方、その量子頭脳内においては、人口爆発や政策の硬直化を防ぐべく、

量子人格の複製を原則として禁止すると共に、

歳月の経過に伴いて徐々に類似の記憶や人格を整理・統合し、

外界での経験を有する新生者・帰還者や他種族との交流人格に席を与える、

演算指示プログラムが機能せり」


「この規則は、現皇帝種族たる〝光輝帝ルシファー〟サタンにつきても

公平に適用せられたり」


「然し、サタンの人格群は特に永き独立寿命を以て知られ、

種族自体もまた様々な危機を乗り越えつつ、現在の地位を得たり。

近年の研究によれば、かかる長寿と繁栄の理由とは次の三点なり」


「第一は、歴史上の苦難が育みたる、知性なり。

サタンは元来、小型惑星の貧しき自然環境のもとで、

他の生物をあやめることなく樹液や血液を摂取すべく進化せる、

猫と蝙蝠こうもりの合いの子の如き、愛らしき種族なり。

この種族はその後も、母星の地磁気減衰や近隣恒星の新星化によりて、

生存のためにあらゆる技術・政策的可能性の検討を求められ、

広範な学習と柔軟な思考を重視する文化を獲得せり。

故にその各個体もまた、広き視野を持って創造性を養い、

新しく若々しき発想を社会に提供し続け得たり。

このことが、出生・移入や人格統合による世代交代の数が少なくとも、

同種族の効率的かつ持続的な発展を可能とせり」


「第二は、彼女自身の努力が与えたる、謙虚さなり。

他方において、地磁気の減衰や新星の出現に先立ち、

サタンは惑星統一政府の設立に成功せり。

ゆえに、同種族は一致協力してその危機に立ち向かう中で、

多様な意見を取り入れながら、調整し得る文化を生み出せり。

彼女はまた、その過程において、自らの〝内なる自然〟、

すなわち知性に伴う欲求の無制限性や、

本能が知性に与える感情的影響を知り、

個人や集団の欲求や感情を制御する必要性を学びたり。

これにより彼女は、旧帝国の軍事種族優越主義にとらわれず、

産業・技術・途上種族や非酸素・非炭素系種族への偏見を免れ、

軍事種族間の内戦による旧帝国の崩壊時においても、

多くの種族から支持を得て、混乱を収拾することに成功せり」


「第三は、〝先帝〟種族との融和が与えたる、多様性ダイバーシティーなり。

天文学的危機と苦闘せるサタンを最終的に救いし者は、

銀白色のうろこに覆われし軟体動物類似の生物から進化し、

高き知性と強靭な肉体を備えし〝先帝〟種族なり。

サタンの名もまたこの時、彼女から与えられしものにして、

その言語で〝逆境に抗う者〟〝滅びを拒む者〟を意味する名称なり。

サタンはその恩義に報いるべく、発展途上種族の文明開発に貢献すると共に、

帝国完成後は側近団たる中枢種族群に傀儡かいらい化されゆく同種族から、

多くの亡命者を各界の指導者として受け入れたり」


「かつては秘められし、この第三の理由こそ、

人格の長寿と種族の繁栄を説明する、最大の理由ならん。

生来のサタンは、自ら悪役を演じる伝承説話まで用いて途上種族を支援せる、

才知豊かで心優しき種族なり。

一方〝先帝〟種族は、多数の軍事種族を率いて銀河系統一の偉功を挙げたる、

こころざし強く厳格な種族なり。

両者は〝全ての種族の発展〟という気高き理想においては共通せるも、

性格においては温順おんじゅん峻厳しゅんげんという、対照的な気質を有せり。

加えてサタンは多数の発展途上種族への支援を通じ、

〝先帝〟亡命者達は自らの政策への反省の過程において、

さらに多くの知識を得つつ、異なる価値観を学びたり。

これによる意見の多様性は、記憶や人格の整理・統合を抑制すると共に、

種族全体としての環境適応性を高めたり」


「サタンの知性と優しさが、銀河系という環境的限界への到達を前に、

軍事的拡大から民生持続への転換の必要性を発見したる時、

その内にある〝先帝〟の覇気と不屈の精神もまた、

かつて自ら築きたる軍事帝国の創造的破壊をいとうことなく、

両者は一体となりて、国家再生の勇断とその成功を導けり」


「以上の如き、事実上の〝混血種族〟サタンの事例を見る限り、

個体においても種族においても、長寿と繁栄の秘訣ひけつとは、

たゆまず謙虚に学びを求め、生存の選択肢を増やしつつ、

最良の決定を極め続けんとする知性、あるいは人間性ならん」


「何となれば文明とは高度な知性、すなわち環境の変化を知り、

それに応じて活動を多様・柔軟に制御する能力を用いて、

より良き生存を達成し得る、生命活動の様式なればなり」と。

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