祈り 願い
「お前!…耐性持ちか!」
騎士が叫ぶ。
「耐性?そんなのもあったなぁ?これは耐性みたいな糞とは比べてもらっちゃ困るぜぇ?これは魔王様のご加護なんだよぉ!」
そう言って盗賊はファイン・バルタクティスを放った騎士に向けて剣を振り下ろした。
「意味わからないこと言いやがって!…」
騎士と盗賊の技術は同じくらいだろう。両者は何度も剣と剣をぶつけ合わせた。その度にカンッ という音が鳴り響く。ただ、この音はあちこちから聞こえていた。
「そろそろ終わりにしようぜぇ」
「負けを認めたか。ならば、痛みなく殺してやろう。これは慈悲だ。感謝するんだな!」
そういった騎士は剣を振り下ろした …… はずだった。
「負けぇ?お前の負けだよ‼︎」
振り下ろした先には盗賊はいなかった。そして、自分の胸に剣を突き刺す盗賊がいた。
「ガハッ!…どう…い…うこと……だ…」
もう騎士は助からないだろう。剣は騎士の体を貫通していたからだ。
「教えてやろうかぁ?これはなぁ 魔王様のご加護なんだよぉ!」
そういった男は騎士の体を貫いている剣を抜いた。その瞬間後ろで見ていた盗賊達が拍手を送り始めた。
「あいつら!…ふざけいるのか!」
1人の騎士が叫ぶ。しかしそれに対する答えはなかった。騎士を殺した盗賊は後ろの盗賊に合流するためか他の騎士を襲おうとはせず、下がっていった。
「怖いよ…助けてよ……」
ミルエが言ってきた。私はミルエを抱きしめる。そして、かすれた声でいった。
「大丈夫だよ…騎士達が悪い奴らを倒してくれるから…」
嘘だ。このままでは騎士が負けることは必然だった。こうしている今も騎士がやられているかもしれない。ここは町と死者の森の丁度真ん中くらいだ。冒険者や商人が通らない訳ではないが、通る量は少ないだろう。仮に通って助けてくれようとしても、獅子王の牙に勝てるとは到底思えない。ほぼ、詰んでいるのだ。
私は祈った。神じゃないなにかに。必死に願った。私達を助けてくれる存在に。獅子王の牙を倒し、私達を救い出してくれる王子様に!願った。祈った。もちろん祈るだけで何かが変わる訳じゃない。それでも祈った。願った。そうすれば誰かが助けてくれるそう信じた。
魔力の塊が後ろで見ていた盗賊の頭を貫く。
シャルロットの祈りが届いたのかは分からない。偶然かもしれない。でも、偶然だったとしても運が良かっただけだとしても、彼が現れたことは現実なのだから。
いいセンスだσ`・ω・´)σ(^p^)キラッ☆