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Paradise Gate   作者: UNDERSON
1章 ウェスタンブルー
6/20

旅立ち

ーグリーシア城 城門ー


「──皆の者、無事な姿を見せてくれる日を楽しみにしておる。では行くが良い」


 ギルとの激闘から夜が明け、俺達は旅立ちの儀を受けていた。ギルはやはりというべきか来なかった。代わりと言ってはなんだが、ギルの両親がお見送りに来てくれた。昨日の息子の無礼を謝罪したかったようで出会い頭に謝られた。もちろんギルが悪い訳ではないということは伝えた。


「それでは行ってきますねおじさん、おばさん。ギルによろしくお伝えください」


 こうして俺達はグリーシアから旅立ったのだった。



ーグリーシア平原ー


 グリーシアの地は周りを高い山に囲まれており、西側にある唯一の出口も湖といった自然によって生まれた要塞となっている。グリーシアは遠い昔の戦乱の時に作られた国家で難攻不落の要塞国家と呼ばれていたらしい。

 俺達はその出口からそれなりに近くにある街、ウェスタンブルーに向かっていた。

 ウェスタンブルーはグリーシア城を攻め落とすために作られた偵察と前線の砦用の役割だったという生い立ちがあるが、今は活気に満ちた商店街となっている。またそういう生い立ちから年に2度、闘技大会を実施していることもこの街の特徴である。


「しかし本当にあちこちに魔物が徘徊しているのね。少し前には考えられない光景だわ」

「ここは平原で開けた場所だから尚更そう感じるのかもしれないな。とにかく周辺に注意して今日中にウェスタンブルーに着けるよう頑張ろう」


 実際俺達は今日中にウェスタンブルーに着く予定で移動していた。そのため簡素な携帯食料以外は持っていないのだ。旅が始まったばかりで危険な夜営ということだけはどうしても避けたかった。

 しばらくしてシャナルが何かに気付いたかのように質問した。


「そういやレーくんさー。湖どうやって渡るのー?この時間は船魔物が出てきてるから船頭さんウェスタンブルーに戻ってるんじゃないー?」


 これは今朝の旅立ちの儀の時に王から直接説明されたことだった。最も商人が移動することが多い早朝と昼間以外は危険だということで船頭はウェスタンブルーに戻っているのである。

 ちなみに商人は大抵の場合キャラバンを組んでおり、腕利きの傭兵が付いていることがほとんどなので魔物に襲われても心配はあまりない。

 シャナルの言う通りこのままでは湖を渡ることが出来ないため、避けたい夜営をせざるを得なくなってしまう。俺は少し考えてから結論を出した。


「泳いで渡るか」

「ええ!?私の鎧重いので私溺れちゃいますよ!?」


 エリーが非難の声を挙げる。それを見てセリアがジト目で俺を見た。


「レヴィンさん。エリーさんをあまりからかってはいけませんよ?冗談も全部間に受けてしまうんですから」

「割と本気だったんだが?」

「……え?」

「……え?」


 旅も順調に進んでいるようだった。途中長い槍を扱うの人形のような魔物や体がゴムのような素材で出来ている丸い塊の魔物と戦闘をした。初めての魔物相手の戦闘で最初はみんな緊張していたが、夕方頃にはみんな慣れてきたのか動きが良くなっていた。そして日没前に湖の前にたどり着いたのである。


ー関門の湖ー


「なんとか着いたねー。ちょっち時間かかったかなー?」

「そうね。魔物との戦闘が思ったよりも多かったものね」

「で、先輩。この湖どう攻略するんですか?船頭さんはやっぱりいないですし。……まさか本当に泳いで渡るとか…?」

「お前まだそんなこと信じてたのか…?まあ、それがいいならそうするが?」

「勘弁して下さい!でも先輩。その言い草だともう考えがあるんですね?」

「ああ。全員で急いで作れば日没前に到着も可能だろう」

「ならちゃちゃっとやっちゃいましょう!で、レヴィン。私達はなにをすればいいのかしら?」


 俺達は湖の対岸に渡るためのを作り始めた。しかし、途中で全員が俺の方を向いて何かを言いたそうにしていた。


「どうした?早く作らないと日没前に着かなくなるぞ?」

「…レヴィンさん。これって一体なんですか……?」

「本当にこんなので渡れるのー?見るからに正攻法じゃないんだけどー?」

「見て分からないか?これは人間発射台パチンコと言ってだな」

「…先輩。私、嫌な予感しかしないのですが……」

「同感よエリー。レヴィン、まさかとは思うけどこれで私達を飛ばして対岸に渡るとか言わないでしょうね?」

「流石クリス。理解が早くて助かる。長くてしなりもなかなか良い槍とゴムがあればやることは1つだろう?大丈夫だ、魔術で身体とこのパチンコを強化して飛ばすから湖に落ちたり、地面に着地して大怪我するということはないと思うぞ?」


 全員が溜息をついた。こういうことはこいつに任せてはいけない、と深く反省するのであった。



ーウェスタンブルー 宿屋ー


「ようこそ旅のお方。…その様子だと随分と魔物と遭遇したようですね?大丈夫でした?」

「いえ、違うわ。これは魔物との戦闘での怪我ではないわ。安心してちょうだい」

「ええ、そうですわ。安心してくださいな」

「…なるほど。それではお部屋をご用意致しますので」


 何かを察した様子の宿屋の店主が気まずそうにそそくさと戻っていった。今の俺の姿をみれば誰もがそうするだろう。この怪我が魔物にやられた怪我ではないとすれば答えは1つしかないからだ。

 人間パチンコをした後、俺は4人の鬼 (のような形相をした何か)に襲われた。全く生きていることが不思議なくらいの大怪我のはずなのだが、神は俺にまだ死ぬ時ではないと仰せられたようだ。俺の言った通り彼女らは湖に落ちなかったし、怪我もしなかった。であるにも関わらず何故俺がボコボコにされたのか全く分からない。発射する時に何やら柔らかいものに触れた気もするが、あれは水袋ではなかったのだろうか?全く検討もつかない。


「…それで明日はどう行動するつもりなの?」


 まるで胸を隠すかのように腕を組んだクリスが俺を睨みつけながら聞いてきた。よく見ると皆同じように腕を組んでいた。


「クリスとセリアのしたいようにしてくれ。一応俺も護衛の1人だ」

「そうですわね…。明日はこの街を一通り見てまわりませんか?本来の旅の目的はそれですし」

「じゃあそういう事で。それでは解散!」

「…結局あなたが仕切るんじゃないの」


 夕ご飯を皆で済ませた後、俺はシャナルと共に酒場へ情報収集をしに行った。他のメンバーは初めての旅で疲れていたのだろう、部屋に戻った後は眠ってしまっていた。


「シャナルは大丈夫なのか?お前も初めての旅で疲れてるんじゃないのか?」

「私はこの中では年長さんだからねー。あの子達の代わりにこういう裏の仕事をするのも役割だと思ってるからねー」

「そうか、無理はするなよ?」

「レーくんこそー。疲れたならお姉さんに言ってねー?」


 俺達が何故情報収集をしているかというとこの街付近ではどんな魔物が出現しているかをあらかじめ把握するためである。情報は最強の武器なのである。

 酒場では沢山の戦士が集まって魔物との戦闘の武勇伝を肴に酒を飲んでいた。


「随分と人がいるんだな」

「そりゃー酒場だものー。レーくんはグリーシアの酒場に行ったことは無かったっけー?」

「俺はまだ未成年だからな…と、俺が言いたいのはそうじゃなくて見たところ彼らは戦士だろう?何故こんなに戦士が集まっているのかと」


 俺が最後まで言い終わる前に手を横に広げ、はあ〜と呆れたような仕草でシャナルが口を挟んだ。


「レーくん、今の時期は丁度闘技大会の時期だよー?戦士が沢山集まってても不思議ではないよー?」

「なるほどな。しかし今こんな状況なのによく開催しようとしたな」

「こんな状況だからだよー、レーくん。ここで実力を示せば各国のお偉いさんに傭兵として雇って貰えるかもしれないでしょー?だからみんな張り切ってるんだと思うよー」

「じゃあ俺達も参加してみるのも悪くないかもな。良さそうな人材を確保して王城に回したら陛下もさぞかしお喜びになるだろうしな」

「お?レーくんやる気になったの?いいねー。私も参加してみよっかなー」


 結局俺達が参加するかどうかはクリス達に聞くことにし、各国から来たであろう戦士から魔物についての聞き込み調査を開始した。

 酒の場でつまらんことを聞くんじゃねえ!と言われてつまみ出されるかと思ったが、俺達の服装を見て、「グリーシア王立学園の生徒か!?こっちに来て色々話、聞かせてくれよ!」とむしろウェルカム状態であった。グリーシア城近辺の情報とウェスタンブルー街近辺の情報を交換しつつ、闘技大会の情報も入手した。かなりの情報を得ることが出来たため、これで危険を減らすことが出来たと俺達は満足して宿屋へと帰った。

 翌日。俺達は闘技大会のことを皆に話した。すると意外なことにセリアまでもが乗り気であった。これからの旅は守られるだけではいけない、命の取り合いをしない闘技大会で護身術を試したいとのことであった。

 闘技大会は明日開催だそうで、俺達は予定通り街中を探索することにした。俺以外女性ということもあって周りからは白い目で見られていた気もするが、仲間達の今まで見ることの出来なかった一面が見れたことで俺は満足だった。

 楽しい時間はあっという間に流れる。俺達は早めの夕食を済ませ、明日に備えて早めに寝ることにした。

 そして、闘技大会が開催されたのである。

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