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Paradise Gate   作者: UNDERSON
2章 地下に眠りしもの
18/20

対峙

ーオルガの部屋ー


「…どうやら近くで戦闘があったようだな」

「ふむ。という事は…」

「奴が…あの男がいよいよここを嗅ぎつけたか」


 そういうオルガの顔は先程までとは異なり、元の、威厳ある者のソレになっていた。


「オルガ殿、まずはここから移動しましょう。ここでは襲われた時に逃げ場がありませんので」

「ならば広場に向かうとしよう。仲間が残っているやもしれん」


 俺達は広場へと向かうことにした。何があっても良いようにとオルガが必要なものをまとめるのを待ってから部屋を出た。


ー 坑道 広場ー


 幸い広場に到着するまでに男と会うことは無かった。しかし、広場にはドワーフの死体が散乱していた。そしてその中心にはゴウザの姿があった。


「ゴウザ!」


 オルガがゴウザに駆け寄った。ゴウザはこちらに気づくとその場にへたり込んだ。


「ゴウザ!何があった!」

「や、奴が…みんなを……それで…オルガ様の…部屋に…」

「ゴウザ殿、それは誠か!?ワシらは道中 ()()()()()()()のだぞ!?」

「そんな…はずは……。確かにオルガ様の部屋に向かって…」


 背後に悪寒が走った。咄嗟に俺は振り向きざまに『氷塊盾アイスシールド』を放った。瞬間、『氷塊盾アイスシールド』に何重ものヒビが入った。まるで何かに切り裂かれたかのように。


「…随分な御挨拶だな」

「やれやれ、偶然なのか知らんがよく相殺したな」


 暗闇から男が姿を現した。それもゴウザの言う通りオルガの部屋の方面からであった。


「お前が12の神徒を探しているという奴か?」

「さあな。違うって言ったら…見逃してくれるのか?」

「まあ…問答無用だな。そっちの件はグレーゾーンだとしても今確実に俺たちを殺す気だったからな。一応近衛騎士として主人を害する者は排除させてもらおう」


 俺と男は互いの動向を伺っていた。数秒後、男が片手を上げて振り下ろした。瞬間、カマイタチが起こり俺に向かってきた。俺はそれを『氷柱矢アイシクルアロー』で迎撃する。


「先程のハイディングといい、このカマイタチといい、これは単なる魔法や魔術の類ではないな?」

「ほう…?」


 男は俺の言ったことに興味が湧いたらしく、攻撃の手を止めた。


「ハイディングに関してはまだ分からない事があるが……、カマイタチは魔力というよりは本当に空を切り裂いて発生させたものと解釈した方が合点が行くことが多いのでな」

「ふむ、キミの推理を聞かせてもらおうか、名探偵くん」


 男が興味深そうに続きを促す。


「カマイタチを発生させた時のモーションだが…、あの過程に魔力の行使を認められなかったのが第一の理由だな。それに…『氷塊盾アイスシールド』や『氷柱矢アイシクルアロー』で相殺した時も感じた魔力は俺のものだけだった」

「ほう?」


 俺は後ろを振り向き、クリスに目で尋ねた。クリスは俺と目を合わせると大きく頷いた。やはり魔力を感知していないらしい。

 俺は男を見据えてこう言い放った。


「お前は何者だ。武器を何も持たず、魔力を用いず、気を練らずにカマイタチを発生させた。普通の人間だとはどうしても思えない。…まさか12の神徒の1人か?」


 男はフッと鼻で笑い、そして肩をすくめながらこう言った。


「さあてな。それは俺に勝ったら御褒美として教えてやるよ。まあ、ありえん話だがな」

「それは楽しみだな。エリー、シャナル、サムシン殿はクリス、セリア、オルガ殿、ゴウザ殿の護衛を頼む。クリスは俺の援護、セリアは助かりそうな人を助けてくれ」

「了解だよー」

「了解しました!」

「承知」

「分かったわ」

「分かりました!」


 それぞれに指示を出し、返事を聞いてから俺は目の前に立つ男をもう1度見据えた。

 やはり、只者では無いのだろう、彼から滲み出てくる殺気がそれを物語っている。

 俺は『錬金アルケミー』で近くに転がっていたな鉄鉱石を剣へと変化させる。


「さあて、楽しい殺し合い(パーティ)の始まりだ。すぐに終わらせて(くたばって)くれるなよ?」


 男の顔が狂気の色に染まったかと思うと、奇声をあげながら両手を振りかざし、そのまま振り下ろした。途端、カマイタチが生まれ、俺達に襲いかかってくる。

 俺達はすかさず回避行動をとった。しかし。


「!?」


 カマイタチを避けようとしたクリスの足ががくんと落ちた。それを男が見逃すはずかなく、追撃をしてくる。


「『錬金アルケミー』、『土壁グランドプレス』!」


 クリスの目の前の土を盛り上げてそれを盾とし、間一髪でカマイタチを防ぐ。

 続く攻撃を今度は鉄鉱石を用いた『土壁グランドプレス』を作り出すことで防いだ。

 その間に俺はクリスの元へと辿り着いた。


「大丈夫かクリス?」

「ええ、ありがとう。突然足に力が入らなくなって……。けど今は大丈夫。心配をかけたわ」


 クリスを引っ張って起こした時だった。少し離れた所で今度はシャナルが崩れ落ちた。


「シャナル!?」

「うう…レーくん面目ない……。なんか急に頭がズンって重くなって、そしたら足に力が……」

「シャナルも同じか」


 俺は奇声をあげながらカマイタチを放っている男をもう一度みた。

 先程までは落ち着いた様子だった男が何故奇声をあげながら攻撃を仕掛けて来るのか…。そう考えた途端、俺に一つの答えが導かれた。

 そう、大声ではなく、奇声。耳がキーンとしたとシャナルは言っていた。そして急に足に力が入らなくなったと言っていた。つまりそれは……。そしてそれの対処法は───


「『剣舞ブレイドダンス』、『状態異常付与デバッファー』、『転調モジュレーション、シャープ』、対象は……あの男が発している低周波音だ」


 途端に先程から耳元に渦巻いていた奇妙な感覚が払拭された。どうやら倒れはしなかったものの、俺にもきていたらしい。


「身体の自由が効くようになった…?」

「さっきまでの体調不良が嘘みたいだねー。これは一体どういうからくりなんだい?」

「ああ、クリスとシャナルの症状から見て低周波音による障害だね。低周波音は聴覚や知覚、平衡感覚に障害をきたすんだ。低周波音に曝露ばくろされると前庭機能が障害されて頭が揺らされている感覚に陥ったり、運動障害が起きたりするんだ。恐らくあの男が発していたんだろうね」


 俺は解説を終えると未だに発狂しながら暴れ回っている男を一瞥した。

 なるほど、大声をあげているのは低周波音に気づかれないようにするためだけではなく、自身にも振りかかっている運動障害などを大声をあげることによってアドレナリンを生み出して無理やり動かしているということか。

 俺はクリスに目をやるとクリスが意図を察したように頷いた。


「『ブレイドダンス』、『追走カノン』、『連射リピート』!」


 魔力の剣が男に向かってガトリング砲のように一直線上に連射されていく。男はそれを横へステップして避けていく。

 そして、それに合わせてクリスが『火矢フレイムアロー』を放つ。

 男は超音波を出し続けながら、ひたすらステップして避けていった。

 そして、男が反撃に移ろうとしたその刹那。男が一瞬行動が鈍ったその瞬間をオレは見逃さなかった。


「『錬金アルケミー』、『土壁グランドプレス』!」


 勢いよく真下から突き出された土の壁を男は避けることが出来なかった。そのまま天井へと突き上げられ、男の発していた超音波が止まった。


「さて……終わったか」


 俺は土壁の近くまでいき、男の意識が途絶えているのを確認しようとした時だった。

 俺はものすごい勢いで後ろに吹き飛ばされた。

 何が起きたのか周りを確認すると、土壁の前には見た事のある姿があった。


「いよお。こないだは随分とやってくれたみてえじゃねえか」

「お前は……!」


 それは決勝戦で乱入し、そしてアルスによって倒されたはずのドライと名乗った男であった。

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