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Paradise Gate   作者: UNDERSON
1章 ウェスタンブルー
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闘技大会 決勝戦 後編

ー闘技ホールー


「ギャアアアアアアアアッッッ!」

「ちっ、こんなちゃちな武器じゃいくら攻撃しても全く効かない!」


 アルスはバジリスクと対峙し恐ろしいスピードで斬りつけていた。しかし、彼の手にあるのは俺が錬金した防御用のナイフであり、堅い鱗を持つドラゴンの親戚にあたるバジリスクになかなか深手を負わせることが出来ずにいた。

 一方のサムシンはと言うとアルスに頼まれ、観客に被害が出ないように毒のブレスを『風裂刃』で霧払いをしていた。また、観戦していたクリス達は観客の避難を指示を行っていた。


「アルス・シーケイド!あと5分以内に観客の避難が完了するぞ!」

「分かった、爺さんは避難勧告している嬢さん方の避難も完了したらこっちに戻ってくれ!俺と爺さんだけが分身体スペアボディだから万が一やられても被害は少ない!」


 アルスがバジリスクの鱗を1枚ずつ剥がしながら次の指示を出す。やはり即席のナイフでは硬い鱗を上手く剥がせないらしくかなり苦戦していた。そして片方のナイフが折れ、アルスがそれを修復しようと『錬金アルケミー』を試みたが発動しなかった。


「くそっ!俺じゃこいつの錬金術を操れねー!」


 その時、バジリスク目掛けて小太刀が飛んできた。サムシンが放ったもので飛んでる途中でアルスがキャッチした。


「アルス・シーケイド!そいつを使え!ワシの太刀程ではないが名匠が打った傑作であることに違いはない!そいつならバジリスクに対抗することが出来るはずだ!」

「恩に着るぜ!爺さん!!それじゃ、第2ラウンドと行くぜ!」


 それからのアルスの猛攻は凄まじく、サムシンが戻ってくる頃には硬い鱗は殆ど剥がされており、何箇所か斬りつけられた跡があった。


「なんと……。バジリスクの鱗は筋骨隆々の大男でさえ剥がすのがやっとだと聞いていたが……」

「俺とそこらの一般人を比べることがまず間違ってるぜ?さ、あとはこいつを料理して……ん?」


 アルスが穴に目を向けると即座に小太刀で飛んできた何かを弾いた。見るとそれは暗殺用の短剣であった。そしてそれが飛んできた穴に再度目を向けるとそこには体長2mはある大男が下衆な笑みを浮かべて立っていた。


「おーおー、俺の可愛いペットがこんなになっちまってよう。お前らどうしてくれるんだあ?」

「さあな。どういうつもりかは知らんが、お前からは凄まじい悪意の匂いがするな。俺が直々に潰してやるよ。爺さん、バジリスクの方は任せたぞ」

「うむ。お主が鱗を剥がしてくれたお陰でかなり戦いやすくなったわい」


 アルスは現れ出た大男に向き合うと小太刀を両手で持ち、左脇の辺りで中段に構えると、そのまま駆け出した。


「へっ、バジリスクの鱗をどうやって剥がしたかは知らんが、このドライ様の前では貴様など…」

「そういう御託はあの世でじっくりやってくれ」


 アルスがドライと名乗った男に斬りつけるが、それを華麗に躱し、ガラ空きになったアルスの左脇に回し蹴りを入れようとして…踏みとどまった。彼の左手にナイフがあるのが見えたからだ。


「おおっと危ねぇ危ねぇ。お前さん見かけによらず……」

「口を動かす暇があるなら身体を動かす事だな。木偶の坊」


 アルスがすかさず斬り返し、ドライの左脇腹を裂いた。が、全くダメージを負った素振りも見せずに今度は右の拳でアルスの腹部目掛けて突きあげてきた。アルスはそれをバックステップで躱すと右手だけで小太刀を握り、ナイフを逆手で持って水平に構え、それを己とドライの間に来るような形で半身になって構えた。


「…追撃してこなかったところを見るにお前、かなりやるなぁ」

「冗談はよせ、わざわざ追撃を狙わせるように動いておいて。お前さんの実力からしてさっきの攻撃くらいは楽に捌けるだろうが」


 アルスはこのドライという男が己を殺すためだけでなく、素直に戦いを楽しんでいるように思えたのだ。実戦で、命のやり取りの最中でそう出来るものは余程の馬鹿か、腕に自信のあるの者だけだ。


「そんじゃま、こちとら本気で殺らせてもらいますかぁ!!」


 そう言うとドライは鎌が2つ両端についている鎖鎌を取り出し、ヌンチャクのように振り回すと、そのままアルスに向けて投擲した。アルスはそれを左手で持っていたナイフを投げて迎撃した。金属がぶつかる音がした後、ナイフにたちまち鎖鎌が絡みついた。それを見届ける前に背後から襲い掛かってきた回し蹴りを屈んで避け、続いて頭上から振ってきたナイフを前転で避ける。ドライがヒューっと茶化すように口笛を吹いた。


「おいおい、これを初見で見抜くかぁ?やるねぇ兄ちゃん」


 未だにドライからは余裕が消えない。まだ何かを隠し持っているらしいとアルスの直感が警鐘を鳴らしていた。今ある得物は小太刀だけで迂闊に飛び込みにもいけない。どう攻めるか考えていたまさにその時、体内の変化にアルスは気付いた。


「んん〜っ?兄ちゃんさっきまでの勢いはどうしたのさぁ?」

「そういうお前こそ本気出したんじゃなかったか?まさかあんな連携攻撃だけで本気タイム終了とか言わないだろうな?」

「おぅおぅ、怖いねぇ。じゃあこっちのターン続行させてもらうぜぇ!」


 ドライが殴りかかってきた。それを見てニヤリと笑うと、小太刀を逆手に持ち変えて下から上に振った。すると衝撃波が生まれ、ドライと衝突する。ドライの身体から鮮血が舞った。しかし勢いは止まらない。


「おぃおぃ、飛び道具使えんのかよぉ!!まあ、でも関係ねぇ!お前さん THE END!!」

「それはこっちのセリフだな」

「っ!?」


 ドライが恐ろしい勢いで放たれた拳はアルスをすり抜け、衝撃波が向かいの壁を破壊する。標的がどこへ行ったかドライは周囲を見渡した。だが、その探している人物はに()()()


「あまり苦しまないようにあの世に送ってやるよ。『朱雀之太刀 鳳凰烈火』!!」


 燃え盛る炎、いや太陽のような熱量を宿した小太刀をバツ字を描くように振り抜くと、そこから鳳凰を模した火の鳥が生まれた。そしてドライへと突き進んで行く。


「何かと思えば……。これくらい、耐え抜いて見せるわぁ!!」


 ドライは瞬時に振り向くと、身体の前で両腕をクロスに組んで守りの姿勢を見せたドライと火の鳥が激突し爆発が起きた。その衝撃で辺りにものすごい熱波と光が撒き散らされた。

 爆発の起点では両腕をクロスに組んだままのドライがいた。よく見ると身体のほとんどの部分が炭化していた。しかし、姿勢はそのままであったがドライが話しかけてきた。


「……いやあ、とんでもねぇもの喰らったなぁ……。お前さん…こんな攻撃出来たのかよ……」

「この身体の持ち主がようやく魔力をこちらに回してくれたのでな。俺とこいつの身体の魔力のリンクにここまで時間がかかるとは思わなかったが。それよりお前、ドライとか言ったか?俺達を奇襲した理由、話してもらおうか」

「嫌だと言ったら……?」

「お前に拒否権は無い」


 ドライは喉の奥で笑うと、「そうだなあ」と話を始めた。


「理由は単純だぁ。お前達の能力チカラを身を以て調べるためさぁ。まあ俺の戦闘データはツヴァイのやつが記録しただろうから俺の役目はどうやらここで終わりのようだがなぁ」


 そう言うとドライの身体が崩れだした。そして最後に彼は


「12の魔将。お前達が…これから戦う俺の仲間達の総称だぁ……。へっ……せいぜい…悪足掻きを……」


 こう言い残し、その後ドライの声が聞こえてくる事は無かった。アルスは視線を感じ、そちらに顔を向けるとサムシンが視線を向けていた。どうやらバジリスク討伐も終わったらしく、彼の後ろには無惨に斬り捨てられたバジリスクがあった。


「ありがとな爺さん。この小太刀とても役に……」


 小太刀に視線を向けると小太刀の刃の部分が赤熱し溶けていた。どうやら『朱雀之太刀 鳳凰烈火』で溶けてしまったらしく、慌てて弁明しようとするとサムシンは首を振ってこちらに向かってきた。


「小太刀のことはよい。無事にあれを倒したのだからな。だが、アルス・シーケイドよ。そなたとの決着は着いておらん。どうしても償いたいと言うのであればワシと今から戦え」


 飛んだ戦闘狂であった。この爺さんバジリスクと死闘繰り広げたんじゃないのか……。そう思わずを得なかった。しかも『どうしても』とこちらに選択肢を与えているにもかかわらず既に構えを取ってるので強制的に戦闘が続行された。


「行くぞ!アルス・シーケイド!!」

「いや、爺さんもう既に時間切れ……」

「ハァァァッッッ!!」

「…すまない、レヴィン」


 サムシンの渾身の一撃はアルスから身体の主導権が戻ってきた俺に炸裂した。この瞬間、闘技大会の優勝者が決定したのであった。


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