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9つのお題より:『棄てられた人造兵器はヒトの夢を見るか』

▼お借りしたお題

眼鏡

傭兵

研究施設

塵時螺鈿飾剣

帆船

二つの太陽

循環


※塵時螺鈿飾剣:よ、読めない……(笑) ちょっとそのまま使うのは難しかったため、お題上では【剣】という扱いに。

※眼鏡:【球体レンズ】として扱っています。



▼創作したもの(約2836文字)

 ついに最終戦争が平和的解決を迎え、滅びを免れた人類が復興の一歩を辿ろうとしている世界。

 各地には戦争の無残な爪痕が残され、制御を失った機械兵器が暴れまわり、残留した生物科学兵器が戦争を生き抜いた人々を苦しめていた。


 主人公は、最終戦争中に開発された決戦兵器のひとつ。

 状況に応じて体内から無尽蔵に武器弾薬を生成する機構、同種の決戦兵器を弱体化させるサウンドジャマーなどを備える強力な人造戦士だ。彼は兵器でありながら開発主に愛され、希薄ながらも感情を持つことができていた。

 しかし戦争が終わったことで用済みとなり、廃棄処分される手筈となる主人公たち、数々の人造兵器。開発主は命を賭して、彼らを【研究施設】から逃がしたのだった。


 主人公は注いでくれた愛情の恩義を返すため、開発主の願いであった

「戦争中に使用され未だ残留する特殊な【毒】を回収し、大地に再生の【循環】を促す」

「戦いの最中に拡散してしまった先史文明の危険な兵器のデータを処分する」

 の2つを、代わりに果たすことを心に誓う。


 そんな主人公を守る【傭兵】として名乗りをあげたのが、同じ人造兵器の類であり、今までに交流もあった二人の少女だった。少女達は「あなたは一人で旅などできない」「世間知らずだから絶対に苦労する」「私たちが助けてあげてもいい」といった言葉を並べ、主人公の計画に便乗し無理やりついてくることに。かくして3人の旅は幕を開けた。


 戦争によって生み出された「兵器」という存在に対し、過剰に敏感となり恐れを抱く一般人から迫害される主人公たち。あるいは、戦うこと以外に意味を見出せない狂った兵器たちに襲撃されることもあった。

 主人公は自らの力を使って、はびこる戦争の残滓を処分しては、大地の【毒】をその身に宿しながら土地を浄化させていく。例え、自らの存在が人類に拒絶されているとしても。


 そんな殺伐とした旅路に潤いをもたらしてくれるのが、強引についてきた二人の少女だった。

 彼女たちの屈託のない明るさや【豆】知識の数々は、常識や感情に乏しい主人公にとって、陰を照らしてくれる【二つの太陽】のような存在。

 彼女達は、自らに宿る能力や武器を日常ではあまり使おうとはせず、不器用ながらも自分の力だけで生き抜こうと四苦八苦していた。少女達の言動が非効率にしか見えない主人公は、能力を使って少女達を支えようとし怒られたりするなど、賑やかに日常を過ごしていく。

 少女達も戦争に作られた兵器に違いはなく、切れないが不思議な癒しの力を持つ【剣】や、相手の弱点部位や損傷などを分析して見抜く【球体レンズ】といった機構を用いて、有事の際は主人公を助け、虐げられる人々を助けていく。


 やがて、大地に【毒】を拡散させている根源の正体が、先史文明の技術を使って開発された禁断の秘密兵器であるという情報を入手した主人公。少女達を危険な戦いに巻き込むことを避けるため、単身で決戦へと臨む。しかし、今まで無数の兵器を屠ってきた主人公でさえも苦戦してしまう強敵であり、ついに主人公は敗北してしまう。


 そこへやってきた少女に助けられ、何とか戦場から一時的に逃げ出すことに成功した一行。しかし敵は、主人公が今までに回収した【毒】や兵器情報や特性のすべてを吸収してしまっており、更なる兵器へと進化を遂げて暴走をはじめた。


 開発主の願いも果たせず、自らの存在価値であった能力のすべても失ってしまったことから、主人公は己の存在価値を見出せなくなり、もう立ち上がることができないでいた。

 そんな彼に、少女達が言い放つ。


 自分たちの能力や武器は人から与えられたものであり、便利だけれど、それだけが自分たちの価値ではないはずだと。

「ひとは能力がなくても幸せになれる」ということを信じて、今まで能力を使わずに生活をしてきて、そしてやはり能力を使わずとも今までの旅路は幸せなものだったと。

 能力を使わなくても幸せになれるし、能力がなくとも存在する価値はある。

 だから自分達は、何も無くなった主人公を見捨てないし、これからも3人でたくさん幸せを感じていきたい。そのためなら、封印していた機能を使ってでもあの敵を倒す――と。


 少女達はそこで初めて、自らの能力を完全に覚醒させる。少女たちはもともと1つの個体であり、能力を制限して寿命を延ばすために2つに分離をしていたのだ。

 本来の姿と力を取り戻し、主人公を守るために暴走兵器に立ち向かってゆく。しかし数多くの能力をもった主人公ですらも勝てなかった相手に、覚醒少女も次第に追い詰められていく。


 覚醒少女が傷ついていく様を見上げながら、主人公は自問自答する。少女たちの言葉を反芻する。

 すべてを失った自分にも価値があるし、幸せになれると言ってくれた。その未来のために、少女たちは無理をして力を行使し、戦ってくれている。自分はこのままでいいのか、と。

 機能の大半を喪失した主人公は、この戦場が数多くの先史文明の禁忌情報が眠る遺跡だと気がつく。暴走兵器がここにいたのも、このデータを吸収するつもりだったのだ。

 データ書庫が生きていることを確認すると、主人公は戦いの余波でできた大地の裂け目に身を投げ、その果てにあった無数の兵器情報に触れ、そこに遺されていた【帆船】を模した大型戦艦と一体化。覚醒少女の窮地に駆けつけると、戦艦から人型に変形して暴走兵器と再び戦闘を行う。

 新しい体と能力に馴染めず苦戦するものの、敵はかつて自分が持っていた力である故に、その弱点も主人公が一番良く知っている。少女がもつ癒しの【剣】の能力で損傷箇所を修復してもらいながら、さらに弱点を分析する【球体レンズ】の力にも支えてもらい、ついに暴走兵器を破壊することに成功する。


 少女たちはもとに戻ったものの、主人公は既に本来のからだを失い、異形の巨大機械生命体となってしまった。けれど少女達は、かつて主人公にそうしていたように、愛しげに鉄の肌を撫でるのだった。


 3人とも無事に戦いを切り抜けたが損害は大きく、少女達も主人公も修復のため、休眠待機モードで眠りにつく必要があった。主人公が一体化した大型戦艦内部にある施設を使い、少女達を修復のため休眠させることにする主人公。

 少女達を、巨大な機械である己の中で眠らせている様に、どこか懐かしさを覚える主人公。それは旅路の途中、眠る少女達二人を抱えながら夜を明かした日の思い出だった。

 自分の姿も性質も変わってしまったが、幸せを感じる心や、二人を守りたいという気持ちは変わっていないのだと知り、自分はただの兵器ではなくきちんと「生きて」ゆける存在になれたのだと、主人公は安堵する。


 そして巨大な己の姿を隠すため、体内の少女たちを守るために、主人公は巨体を大地の中に沈ませていく。

 いつか目覚めたとき、【循環】を取り戻した大地が緑に溢れているような、開発主が願った素晴らしい世界が広がっていることを、夢見ながら。



▼思いつきの台詞集

「……だっこして」

「なぜだい」

「だっこ」

「僕の体に接触することで、君に何らかの恩恵があるとは思えない。休息を取るなら、あのベッドで横になったほうが効率的だよ」

「だっこしてって! 言ってるでしょう!」

「なぜ殴るんだい」


 †


「……何を、しているのかな」

「あ、あっとね。お料理を……しているんです」

「栄養を摂取するなら、研究施設から持ち出したカプセルで事足りるし、予備も充分にある。なぜわざわざそうして有機物を加工する手間を――」

「う、ううっ……す、すみません……ひっく……ご、ごめんなさい……ええう」

「なぜ泣いているんだい。……怪我をしている?」

「――あー、また泣かしましたね! なんであなたはこう、いつもでりかしーが無いんですか、まったく!」

「なぜ殴るんだい」

「うるさいです、少し黙ってて頂戴! ――うー、よしよし。大丈夫? またあのデクの坊が何か言ったのね」

「ち、違うの……わたし……余計な、こと……して……だから……」

「よしよし、あなたは悪くないですよ。なでなで」

「……すまなかった」

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