第2話 現実に存在する自分の意思
ただ、俺はひたすら何時間も泣いていただろう。兄を失い、大切な幼馴染を失い、クラスメイトを一瞬にして失ったのだから。
「うっ…っ…くっ…」
泣かないでいようと思うのに、涙は自然とこぼれてくる。
泣かないでいたい。悲しませたくないから。
たとえわがままだといわれても泣かないでいたいんだ。でも、涙は一向に止まらない。あいつらには安らかに眠ってほしいのに…こんなことで心配かけたくない。俺は、1人でも生きていけるところを見せてやりたい。
だから――――…
「だからなに?泣かないようにしてほしいの?」
「うわっ!?」
人が、少女がそこに立っていた。全く人の気配なんてなかったのに…いったいどこから…。
「あそこの窓からよ。開いてたし適当に入ったわ。別に誰もいないって知ってたから入ったけどね」
炎髪。そして碧眼。非常にアンバランスな組み合わせ。
小柄な体型、背伸びした口調。そのどれを見てもかわいらしいとしか言えない少女だった。
「何よ、人の体をじろじろ見て。あんたってもしかして、この世界でいう≪変態≫ってやつなの?やだ~、気持ち悪~い」
「変態じゃねぇし、じろじろ見てない。というか、お前はいったい誰なんだよ」
「はぁ?人に名乗れっていうの、自分は名乗ってないくせして!しかも女の子によ!信じられない!だから日本に…この地球ってやつに来たくなかったのよ、あたしは!」
「待ってくれ。お前はどこに住んでるんだ。地球じゃなかったら異世界から来たってのかよ…」
「そうよ、異世界。作られた世界から来たの。≪イマジネーション・ソーシャル≫ってところ」
作られた…世界からの侵入者…?どういうことなんだよ…これは。
「侵入者じゃないわ。あなたを迎えに来てあげたのよ、赤津具優斗」
「なんで…名前…知って…」
「当たり前じゃない。作られたあの世界での2番目の権力者≪マリア・エンペラー≫様だからよ、あたしがね」
「マリア・エンペラー…」
「そうよ。私は最高権力者である方に唯一つかえている者。あの方、人が大嫌いでね。でも、あたしは許してもらえたのよ。この世界から生贄である32人を連れてこい、って約束を今まさに果たそうとしてるから」
こいつによると、俺以外に31人の生贄がおり、そいつらはとっくに作られた世界≪イマジネーション・ソーシャル≫に転送されているらしい。つまり、俺は最後の1人というわけだ。
「じゃあ、俺をこれからその世界に転送する気か?」
「当たり前。じゃなきゃ、あの方との契約が破棄されてしまうもの。自分の命を守るためにやらなきゃいけないことなの。だから、あたしの命を守るために協力しなさい、赤津具優斗!」
「どうして…俺がお前を守らなきゃいけないんだよっ!」
、、、、、、、、、 、、、、
「あなたが選ばれた人間だから。あなたの潜在能力があの方はほしいと思っていらっしゃるから」
あいつの命を守るため。そして、俺の潜在能力。俺に何があるっていうのかよ…俺はただの人間に過ぎないのに…意味が分からない。
「はっきり言うわ。行きたくないのなら、あたしはあんたをこれから殺す。行くっていうのなら転送してあげるわ、ほかの仲間のところへ…」
「仲間…」
「そう。あんたみたいなやつばかりごろごろいる世界」
「俺みたいなやつってどんな奴らなんだよ」
「あぁ、説明不足みたいね。自殺志願者がごろごろいる世界、ってことよ」
自殺志願者がごろごろいる世界。そこに俺はこれから連れていかれるんだ…行くと宣言したら。
もし、行かないと宣言すれば…間違いなく俺は満足な死とは言えない状況で死ぬだろう。
どちらを取るべきか。
「あんた、自分の存在価値を知りたいようね。じゃあ、行くことにしていい?」
「なっ…!」
「いけばあんたの存在価値を知ることができるし、クラスメイト達の死んだ理由をもしかしたら暴ける。行かなければ一生後悔すると思うけど?」
存在価値を知ることができる?死んだ理由を暴ける?じゃあ、俺はそうするしかないよな、こうなったら。
「行ってやるよ。その≪イマジネーション・ソーシャル≫ってやつに」
「悔いはない?」
「ああ。絶対に暴いてやる。あいつらが死んだ理由をな!」
「じゃ、聞くわ。もしもあっちの世界で仲間に殺されたとしても仲間をずっと信じることはできる?」
「当たり前だろ?仲間は仲間。殺さなきゃいけない運命だってあるわけだし、仲間は最高の人生の誘導者だと思ってる。だから、大丈夫だ。ずっと、信じる」
「そう。じゃあ行くわよ。仲間たちの待つ世界へ」
「いつでもどうぞ」
俺は、その日を忘れないだろう。
たとえ、あんな残酷な終末を迎えたとしても。
最近更新できなくてすみません。支倉式織です。
ちゃんと話はできていたんですよ、頭の中で!でも、時間がなかったのです。すみません。
さてさて、新キャラ登場ですね。マリア・エンペラー。気軽に呼んであげてください。マリアでも何でもいいですよ。炎髪碧眼。書いている私としましても、アンバランスと思います。
今回は優斗とマリアの2人だけでした。次は新キャラがどっと出ます。作られた世界≪イマジネーション・ソーシャル≫に行ったわけですから。
最後の言葉はきっと最終回でわかりますよ。
それまでしばらくお待ちください。
今回も読んでくださった皆様。本当にありがとうございました。感謝です。
次は第3話。物語もどんどん動き出しますよ~お楽しみに。
今回は書いていて結構楽しかった第2話でした。
また、3話でお会いしましょう!
支倉式織