第1話 最悪の現実と夢に見た幻
「――――斗!早く起きなさいよね、こんのアホっ!」
「うわっ!?」
いきなり世界が反転。いったい何があったんだよ…。
「って!いてぇなおい!」
「うるさいわねぇ!ゆすっても何をしても起きないのが悪いんでしょ!」
というか、なんでお前が俺の家にいるんだ。
「は?私があんたの教育係だからじゃない」
そんなもん、いつからあったんだよ…知らなかったのは俺だけか?
「うん、そうよ」
幼馴染だと思っていた少女、葵柚希≪あおいゆずき≫がさらっと言い放つ。年齢詐称とかこいつしてねぇよな。
「とにかく、起きろ!学校に遅れてもお前のせいだからな、優斗!」
「はいはい」
「はいは一回でいい」
あれ、なんか寒い気がする。と思ったら窓がねぇ!?
「今日は窓から颯爽と登場した柚希ちゃんですっ☆」
……一回、殴り飛ばしてもいいですか?え?駄目ですか。はい、またの機会にしようと思います。
はぁ。窓の修理代どれだけかかると思ってんだよ…あいつは。
この時、俺は色んな意味で年齢を詐称していると思った。16の少女がやることじゃないし。
*
「おはようございます。優斗君、柚希さん」
さわやかなスマイルが見える。あぁ、こいつは間違いない。俺の実の兄である赤津具彩斗≪あかつぐさいと≫だ。
「お、早いね!さすがだと思うよ、彩斗君!」
「年下の子にそうほめられると照れますね」
いや待て。彩斗は今現在26だぞ。何が早いだ。教師なんだから……
「何よ。気に入らないの?私と彩斗君が話してること」
「べっ別にそういう意味じゃねぇよ!」
と、こんなことをしていると
キーンコーンカーンコーン
「やっば、予鈴じゃん!急がないと遅刻する!」
まぁ、間に合ったんだけどね。実際のところ。
*
時間はどんどん過ぎていく。今日も何もなく日常は進んでいく、と思っていた矢先
「きゃっ!」
いきなり風が吹いてきた。窓も開いていないというのに。
(いったい何があったんだ…)
これだけじゃない。次の瞬間――――……
どんっ!
大爆発の音が。
「何っ!?何があったっていうのよ!」
「皆落ち着いてください!指示を待ちましょう!」
今は4時限目。英語。俺の兄である彩斗の担当科目。
「優斗君、僕は様子をうかがってきますので後をよろしくお願いします。あと、柚希さんも!」
「でも、危ないわよっ!彩斗君、やめておいたほうがいいって!」
確かに危ない気がする。柚希が止めたのも無理はないと思う。だが、彩斗は本気で行くつもりだ。
「大丈夫です。皆さんを死なせはしませんから。僕はどうなってもいいんです。ただ、皆さんの笑顔さえ守ることができたらそれでいい」
何がどうなってもいいだ。お前はこのクラスの担任であり、俺のたった一人の家族。一人にさせる気かよ!
「待てよ!お前が死んだらどうなるんだよ、このクラスは。それも考えられねぇのに簡単に死んでもいいなんて言うんじゃねぇよ!」
「それは…優斗君と柚希さんがいれば安心でしょう?違いますか?」
「何よ、彩斗君。そんなこと考えるような人じゃないと思ってたのに!あと、クラスだけじゃないわ。残された弟はどうなるってのよ!」
彩斗が言葉を詰まらせた。
「ほら、大事なんでしょ?それだけ愛してるってことでしょ、優斗のこと。おじさんとおばさんを亡くして初めて大事だって気づいた、なんていってたじゃない。あの頃の彩斗君はどこに消えたのっ?」
「確かにその時に気づきました。ですが、僕なんかいらないんですよ。あなたがいれば優斗君は輝けるんですから」
「ふざけんな!」
教室が静けさを取り戻す。
「今の話はなんなんだよ。わけ分かんねぇ。俺はずっとお前の背中を追い続けてきた。お前がいないと俺は輝けねぇんだよ!」
「……っ」
俺が教師になりたいと思った理由はこいつにある。それに、たった一人の大切な家族だ。亡くす悲しみは誰よりも知っている。だから…
「いかないでくれ…彩斗」
やっと本音を言えた。そう思った瞬間……
「煙!?」
柚希が気づいた。理科室だとしたら遠く離れているというのにどうしてこんなに早く煙が……
「っ!?」
クラスメイトが倒れている。どうやら有毒のようだ。
「うっ……優斗…」
「柚希っおい、しっかりしろ!」
柚希まで……お願いだ。生き延びてくれ…頼むから…
彩斗もだ。
気が付けば俺以外は皆倒れていた。
「あのね…優斗。言いたいことがある…」
「なんだ?何でも聞いてやる」
「ずっとずっと…はぁ…はぁ…好きだったよ…君のこと…」
いう相手を間違ってないか…?
「ううん。優斗が好き。ずっとあ…」
「柚希!?おい、しっかりしろ、柚希!柚希ぃいいいい!」
俺の返事無くして、柚希はなくなった。その間に彩斗もだ。
誰一人として生き延びていない。唯一の生存者は俺。
静かすぎる教室で、俺は一人泣いていた。
こんにちは、支倉式織です。
第1話終了いたしましたが、皆様いかがだったでしょうか?
残酷な世界になってきましたねぇ、さっそく。
書いている私自身、胸が痛かったです。
特に告白は…泣きそうになりました。柚希がかわいそうで…。
さて、優斗の返事はどっちだったのでしょうか。
これに答えは存在しているのですが、まぁ皆さんの想像にお任せします。
プロローグから推理してもいいかもしれませんよ?
作者しか知らない答えを導いてみてください!
次は2話ですか。どういう話にしていこうか現在模索中…ではありません。
もうできてますよ!最後まで考えております。
いやぁ、いつ終わるんでしょうかねぇ。考えているものよりも長くなりそうです。
頑張ります!
完結まで温かく見守っていただけるだけで嬉しいです。
それでは、作者はこの辺で。
支倉式織