ある夏のできごと
どうもー、こんにちは湯たんぽといいます。
なにを思ったか急に、短編を書いてみたくなり投稿しました。
短い文ですが最後まで読んでいただけると幸いです。
もうひとつ連載の方でオタクな彼女というのを現在やっています。時間があればそちらの方もみて見てください。
それでは、どうぞ!
夏真っ盛り、最近の暑さはピークに達している。
外に出ると倒れる人が続出で前、学校に向かう途中人が点々と倒れていたのには流石に驚いた。それでも今は学校が夏休みに入っているから、現代人らしく外に出ずクーラーガンガンで部屋でゴロゴロして過ごしている。家で友達と遊ぶ時は外に出たくないから、いつもどちらの家に来さすかで言い合いになる。
昼はそんな感じに過ごしているが、最近夜の過ごし方に変化が起きている。
今晩もその夜のようだ。
寝る前ベッドに軽く横になると奴の気配を感じる。体を起こし部屋全体を見渡してみるが奴の姿は見えない。ただこの部屋に確実に居る事だけは分かる。
見やすいように壁際に移動してみる。
その時、視界の端に奴を捕らえた。急いでその近くに行くが奴もう見えなくなっていた。
そんな行動が何十回か続いた。そして、ついに絶好の位置に奴が来た。
その距離は一メートルも離れてなく、この距離なら奴を見逃すことはなかった。
「勝ったな」
そう言い両手を勢いよく合わせた。
パァン!
乾いた音が部屋に響き渡った。
そして、両手を広げるとそこには、蚊が潰れていた。他に気配を探ってみるがなく、どうやら今日はこの一匹だけだったようだ。
「ふう」
これでようやく今日もゆっくり寝られると思い、手を軽くティシュで拭いた。その時、突然勢いよく部屋のドアが開かれた。
「っるっっっっせ――――――」
そこに立っていたのは僕の姉だった。これから寝るところだったのか、それとも寝ていたのかショートパンツにTシャツというかなり楽な格好だった。髪はセミロングより少し長いロングに位置する。顔も美人でスタイルも良くモテる。
けど、それは怒らなければである。この前しつこく言い寄ってくる男がいたので、姉が怒ってその男を張り倒した。その男はその時の恐怖がトラウマでしばらく学校を休んだという話を姉の友達から聞いた。
とりあえずこれ以上怒らせないようにした。
「ど、どうしたのですか、お姉様」
「ああ!!」
赤鬼も真っ青な青鬼になりそうな般若の顔で睨まれた。
「どうしたじゃねーよ。毎晩毎晩、一人でドタバタうっせーんだよ」
般若に睨まれ、ヘビに睨まれたカエルのごとく体が、声すらも出せない。
しかし、なにか言わなければ確実に自分の身が危ない。歯と歯が上手く噛み合わずガチガチと鳴っていたが、意を決して言ってみた。
「かかかかっかか」
かと、っ、しか言葉が出なかった。
仕方ないじゃん。こんな殺気だけで本当に人が殺せそうなのを前にすると、誰だってこうなるって。
お姉様の機嫌がさらに悪くなっていくのが手に取るようにわかった。気のせいかこめかみに青筋がうっすら見える気がする。
というか気のせいじゃない。本当に見えてる。
「なに。私の顔になんかついているのか?」
首が取れんばかりの勢いで、横に振った。
そして、深呼吸して気持ちを落ち着かせ口を開いた。
「さ、さっきうるさかったのはへ、部屋にいた蚊を退治していたからなんだよ」
さっきの出来事を簡単に話した。
それを聞いたお姉様は僕を睨んだまま一言返した。
「そう」
それだけ言うと二人の間に沈黙が訪れた。
それは時間にすると一分にも満たないはずだったが、僕には何十分、何時間という時間が過ぎたように感じた。
途中自分の人生を振り返った気がする。それにはもう死んだ祖母や幼稚園の頃遊んだ思い出が……ってこれって走馬灯じゃね。
初めての体験をしたがこんな体験、自分が本当に死ぬ時にするので充分だと思う。
そんなことを考えているとお姉様が動いた。
どうやら自分の部屋に帰るようだ。ほっと胸を撫で下ろして部屋のドアを閉めようとすると、お姉様が再び部屋から出て来て自分の前に来た。
その手には野口さんが握られていて、無言で渡された。それを訳の分からないまま受け取る。そして、
「買って来い」
ただ一言そう言われた。
「な、なにを?」
「蚊取り線香」
「もう、僕の部屋には蚊はいないからだいじょ…」
「いいから、つべこべ言わずに買って来い!」
「は、はい」
後で分かったことだが、お姉様の部屋にも蚊がいたらしいのだった。
だけど、そんなこと知らない僕は深夜のコンビニに買いに走るのだった。
どうでしたか? 評価または感想、疑問点でもいいですかくださるとありがたいです。