宇宙海賊アルビオンの日々(短編)
ども、和人です。今回は宇宙海賊と言うテーマで執筆してます。初めてですので、指摘感想等ございましたらコメントよろしくお願いします。
「――おいトリス、爆薬の量が3オンス多いぞ。これではハッチだけでなく、中の獲物の価値まで吹き飛ぶ。気をつけるのじゃ。」
爆煙と鋭い火花が渦巻く密輸船のドッキング・ポート。
歪んだ鉄扉を蹴破って現れたのは、白い装甲に黒い肩、そして胸と頭にドクロのレリーフが付けられた一体の人型ロボットであった。
その名は'バッカニア'。
かつて宇宙全域を震撼させた伝説の宇宙海賊「宇宙海賊アルビオン」の主力機体であったものを、キャプテンクロノアから譲り受け、改修したものである。
「わかってますって、ゴメスさん。このペースで使うと、そろそろ爆薬も尽きそうですし。」
バッカニアのコックピットから少年は身を乗り出し、密輸船の中に潜入する。この少年こそが、新生宇宙海賊アルビオンのキャプテン、トリスタンである。彼はアルビオンの解体後、仕事のなくなった元メンバーを誘い、表向きは運送会社、裏は宇宙海賊の仕事を行っているのであった。
「やれやれ、まぁとにかく頑張れよ……。この仕事が成功すれば、報酬も多く運送の方も人気が出るだろう。」
構成員はざっと15人程度だが、どれも信頼できるメンバーである。今話しているのは、アルビオンにつく前は地球連邦軍で働いていたゴメスさんである。通信の向こうで、母船のブリッジからトリスタンの無茶を見守ってくれている。
「おい、お前何者だ……っ!?」
通路の奥から、色めき立った密輸組織の男たちがレーザー銃を構えて飛び出してきた。
トリスタンはすかさずコックピットへ戻り、操縦桿を握る。
「何者かって? 見りゃ分かるだろ、お前らの身ぐるみを剥ぎに来た海賊さ!」
トリスタンが操縦桿を叩きつけると、バッカニアの右腕が獰猛に駆動した。手首から発生した高熱の実体刃が赤く燃え上がり、凄まじい駆動音とともに通路の壁ごと敵の銃器を叩き折る。
「ひ、ひぃっ! ASRを出せ! 侵入者だ!」
逃げ惑う密輸業者たちを追って、バッカニアはズシン、ズシンと重い足音を響かせて船内へと進む。目指すは、この船の最深部にあるコンテナ区画だ。事前につかんだ情報では、ここには密輸するのに最適で高価な希少鉱石が積まれているはずだった。この宝石は元々持ち主があるものであり、今回の任務はその宝石の奪還である。
だが――。
バッカニアが巨大な鉄の拳で厳重にロックされた倉庫の扉をぶち破ったとき、トリスタンは息を呑んだ。
「……おい、これって....」
薄暗い倉庫の中に並んでいたのは、鉱石の箱ではなかった。
冷たい鉄格子のケージ。その中に押し込められていたのは、怯えた目でこちらを見上げる、植民惑星の幼い少女たちだった。首には、違法な人身売買組織がつける認識票のタグが鈍く光っている。
モニター越しに倉庫の惨状を見たゴメスが、絶句して声を低くした。
「……奴隷か。どうやら依頼主のオッサン、わしらに嘘を吐きおったな。鉱石なんてハナからなかったんだ。依頼主め、裏でこっちと繋がっておったのじゃ。わしらを罠にハメる気だったんじゃろう。これでは会社は赤字どころの騒ぎではないぞ」
「そんな金、いりませんよ」
トリスタンは操縦桿を握る手に力を込めた。優しさを残す少年の瞳の奥に、猛烈な怒りの炎が灯る。
「ゴメスさん。クロノアの旦那が遺してくれた、アルビオンのルールを忘れたわけじゃないでしょう?」
「……他人の自由を奪う外道からは、命も含めて全てを略奪してよい……じゃな。フン、まったく、お前のそういう青臭いところは、キャプテンにそっくりじゃよ」
通信の向こうで、ゴメスが呆れたように、しかし嬉しそうに鼻を鳴らした。
「決まりだ! こんなクソみたいな仕事してる奴ら、うちの仲間は誰も許しちゃくれません! 罠を仕掛けた依頼主のクソジジイにも、後で絶対にケジメをつけさせてやります!」
トリスタンは不敵に笑い、バッカニアの出力を最大まで跳ね上げた。白い装甲が駆動音を吠えさせる。その時、倉庫の奥の隔壁がけたたましい警報とともに跳ね上がった。
「敵じゃ、トリス! 数は5機!機体はトルーパーMark5のカスタムモデル、ビーム・ライフルを装備しておるぞ!」
「上等だ! 数と遠距離武器で勝負が決まるなら、海賊なんてやってません!」
現れたトルーパーMark5の銃口から、眩い光条――ビームが放たれた。
ズガァァァン!!
無数のレーザーがバッカニアを襲う。だが、その攻撃は一つも当たっていなかった。
「こいつを喰らいなァッ!!」
トリスタンが叫び、操縦桿のトリガーを親指で押し込む。するとバッカニアの腕部アーマーが展開しビームが形成された。ビームスパイクは敵機のコックピットを貫き、次々と破壊していった。
激しい爆風の中、トルーパーは音を立てて崩れ落ちる。だが、安堵する間もなく、コンテナ区画の天井が、激しい爆音とともに崩落した。
「――甘いぞ、野良犬め!」
上層から踊り出てきたのはけばけばしい緑のトルーパーMark5ブラストであった。 外部スピーカーから響くそのダミ声は、紛れもなくトリスタンたちに鉱石の運送を依頼した、あの『依頼主』の声だった。両腕の高出力ビーム・キャノンが、容赦なくバッカニアへと向けられる。
「トリス、上じゃ! あ奴、初めからわしらをここでまとめて口封じする気だったんじゃ! 回避は間に合わん、最大出力で防御に……」
「大丈夫です!海賊の本気、目にもの見せてあげます!」
スラスターを全開に引き出すと、 バッカニアの頭部装甲が、キシキシと音を立てて上下にスライドした。内部の強制冷却スリットが露出し、凶悪なフェイスが姿を現した。
「終わらせるぞ、バッカニア!」
Mark5はが必死にビーム・キャノンを連射するが、スラスターを自在に駆使するバッカニアの変則的な軌道にはかすりもしない。一瞬で懐へ潜り込んだバッカニアは、敵の視界を完全に塞いだ。
「これで、本当に終わりだァァァッ!!」
トリスタンの叫びとともに、バッカニアの腕部アーマーが再び展開。最大出力のビームスパイクが形成される。Mark5の機体の胸部に、嗤う髑髏の光の刃が突き刺さった。
連続する爆音。最新鋭のトルーパーMark5は内側から激しく引き裂かれるように四散し、裏切り者の依頼主とともに爆炎の中に沈んでいった。
* * *
数時間後。
密輸船のコントロールを奪ったトリスタンは、鉄格子から解放された子供たちを、最寄りの治安維持星系のシャトルへと移送させていた。
ついでに、ボスの隠し口座と、あの自分たちを裏切った依頼主の隠し資産から「ホワイト運送」の口座へ、身代金と迷惑料代わりの大金をきっちり送金することも忘れなかった。これで又企業が大きくなる。
「お兄ちゃん、本当に正義の味方じゃないの?」
別れ際、一人の小さな女の子が、コックピットから顔を出したトリスタンを見上げて言った。
トリスタンは少し照れくさそうに頭を掻き、それから、バッカニアの胸に刻まれた白いドクロのレリーフをトン、と叩いた。
「違うな、俺たちはただの海賊さ。他人の自由を奪う奴らから、全部を奪っていく大悪党なんだよ。」
トリスタンは少年のような純粋な目で、ニカッと笑った。
「そういえば、お兄さんのASRってなんて名前なの?」
「バッ・・いや。スカルハートって名前なんだ。」
女の子がふふっと笑い、手を振る。子供たちを乗せたシャトルが遠ざかっていくのを見送りながら、通信からゴメスの笑い声が聞こえた。
「ククク、減点30じゃな。最後のセリフ、少々格好をつけすぎじゃ。クロノアキャプテンならもっと渋く決めておったぞ。……しかし、スカルハートか。いい名じゃな。トリス」
「うるさいなぁゴメスさん! これが僕の、キャプテン・トリスタンの掟なんですから!」
トリスタンはシャトルが見えなくなった青い大空を見上げた。
宇宙海賊『アルビオン』。
表は運送屋、裏は海賊。15人の仲間たちの未来を背負った少年キャプテンの旅は、まだまだ終わらない。
(完)
いかがでしょうか。機体の名前のバッカニアはカリブ海の海賊の名前だそうです。実際この話は自分が初めて考えた宇宙戦争という名前(被ってますが)の一部という感じです。理由はこっちの話のほうが短編でわかりやすいと思ったからです。この話が好評だったらそちらも載せようかなと思います。アニメ化向けて人気になるぞー!おー!




