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プロローグ

低ランクのダンジョンが孤立する静かな町の外れ


その一角に、緑に囲まれた小さな喫茶店がある


木漏れ日が差し込む庭には、季節の花が咲き


風に揺られた葉が囁き語り合う様に聞こえる




店主は金髪に青い瞳の青年


彼のもとで働くのは、双子のエルフの兄妹


兄は薄花色の髪を持ち、妹は撫子色の髪を揺らして、今日もテキパキと働いている




ある日、扉の鈴が軽やかに鳴った


入ってきたのは、長い銀髪を編み込んだエルフの女性


その姿を見て、店主は微笑んだ




「師匠、いらっしゃい」




「今日のオススメと、クリュバーバ(たんぽぽ)コーヒーをお願い」




「オススメじゃないけど…


ようやく納得のいくパスタができたんだ


食べてみてくれない?」




「ふふ、じゃあ、それで」




店内には他に客の姿はなく、静寂の中に包丁の音とフライパンの香ばしい音が響く。


撫子色の髪の妹が食器を整え、兄が丁寧にたんぽぽコーヒーを淹れる。




「お待たせしました」


薄花色の髪の兄が、湯気の立つカップをそっとテーブルに置く。




「ありがとう。いい香りね」


「先生のために、ちょっと丁寧に淹れましたから」


ふっと笑い合う二人の間に、柔らかな空気が流れる。




やがて、店主が運んできたのは、湯気を立てるパスタ


「当店自慢、【ナポリタン】


喫茶店と言ったらコレ入れたかったんだよね」




目が覚める様な赤く艶やかなトマトソースが絡んだパスタに、炒めた玉ねぎとピーマン、香ばしいベーコンが彩り添え、香りが空腹を余計に刺激する


ゴクリと唾を飲み込むのは容易の反応




「……いただきます」




フォークを手に取り、ひと口


もちもちとした麺に、甘みと酸味のバランスが絶妙なソースが絡みつく。


炒めた野菜の香ばしさと、ベーコンの旨味が口いっぱいに広がり、思わず目を細める。




「……これは、良いわ…新しい味だけど


どこか懐かしい気もする」




「そう言ってもらえると、報われるよ」


店主は照れたように笑う




撫子色の妹のエルフが近づき


「先生、こんどは粉チーズもかけてみてください


それとこのタバスコも


店長、辛いの苦手なのに納得するまで頑張ったんですよ?」




「間違ってないけど余計なこと言うなよ…」


軽口を言えるくらいの信頼関係はある様で


良好良好と銀髪のエルフは内心安心した




テーブルに置かれたタバスコと粉チーズに手を伸ばす


まずはタバスコを数滴、慎重に


次に、粉チーズをふわりとひと振り


赤と白のコントラストが、皿の上に新たな表情を加える




再びフォークを手に取り、チーズとタバスコソースを絡めて口へ運ぶ




「…ッ、これは……!」




ピリリとした酸味がトマトの甘さを引き締め、味に奥行きが生まれる


粉チーズのコクが全体をまろやかに包み込み、まるで別の料理のような変化


舌の上で踊るような刺激と、ほっとするような旨味の余韻




「タバスコの刺激が、こんなにも合うなんて


チーズの香りも、まるで魔法みたいに全体をまとめてくれる……」




カップに手を伸ばし、クリュバーバたんぽぽコーヒーをひと口


ほろ苦さが口の中をリセットし、また次のひと口が恋しくなる




「これは……クセになるわね」




カウンターの向こうで、店主が小さく笑った。


「でしょ?」




店主は照れたように笑い、カウンター越しに腰を下ろす


「今日は他に客もいないし、少し話しましょうよ」


「そうだな、久しぶりに…ゆっくりできそうだ


2人もおいで、何があったか聞かせてくれよ」




庭の風がカーテンを揺らし、クリュバーバ(たんぽぽ)コーヒーの香りがふわりと漂う


青年はふと思う


――案外、こんな生活も悪くない。

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