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転生したら校長だった件   全校生徒が勇者でした  作者: 双鶴


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8/10

第8話 勇者、進路希望「魔王軍のパン屋になりたい」

 進路希望調査票の束をめくっていた俺は、ついに笑った。


 「……パン屋?」


 生徒の名前は、トモヤ。

 回復魔法科の1年生で、癒し系男子。

 模擬戦では“パンで回復”という謎の戦法を使い、教師陣を困惑させている。

 でも進路希望欄には、こう書かれていた。


 「魔王軍の購買部でパン屋になりたいです。焼きたてで友情を届けたいです」


 俺は職員室で、元・魔王軍の補給部隊長だった家庭科教師に尋ねた。


 「彼、何かあったのか?」


 「いえ、本人は真剣です。昨日の授業で“パンの魔力配合率”を計算してました」


 「……それ、理科じゃなくて料理だろ」


---


 校庭の隅にある石窯に行くと、トモヤがパンを焼いていた。

 しかも、魔法陣を使って発酵時間を短縮している。


 「校長先生、見てください! “回復パン”完成です!」


 「それ、魔法アイテムじゃなくて……パンだよな?」


 「はい! 食べるとHPが回復します! 友情も回復します!」


 俺は、ちょっと感動した。

 でも、頭も痛かった。


 「なんで魔王軍のパン屋になりたいんだ?」


 トモヤは、真剣な顔で言った。


 「戦場で一番必要なのは、食べ物です。

 敵も味方も、お腹が空いてたら戦えません。

 僕は、パンで世界をつなぎたいんです」


---


 その日の午後、魔王軍購買部への“職場体験”が設定された。

 場所は、魔王軍本部の地下厨房。

 俺は、校長として“付き添い”という名目で潜入した。


 「校長殿、ようこそ。こちらが“焼きたて部隊”です」


 厨房には、炎属性の魔族が火力調整をしていた。

 水属性の魔族が生地をこね、風属性の魔族が冷却を担当している。


 「トモヤくんには、“友情パン”の開発をお願いしています」


 トモヤは、魔族たちと笑いながらパンを焼いていた。

 その姿は、まるで“平和の象徴”だった。


---


 放課後、トモヤが校長室に戻ってきた。


 「校長先生、友情パン、完成しました! 食べますか?」


 俺は一口かじった。

 ふわふわで、ほんのり甘くて——なんか、泣きそうになった。


 「……うまい。これ、世界救えるかもしれないな」


 「ありがとうございます! 将来は“魔王軍公認パン職人”になります!」


 俺は、進路指導室の椅子に座り、深くため息をついた。


 「……定時で帰れる日は、パンの焼き上がりより遠いな」


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