第10話 卒業式と、校長の進路希望
卒業式の日。
校庭には、魔法で浮かぶ花びらと、ドラゴン型の送迎バスが並んでいた。
俺は、壇上に立っていた。
勇者養成学校「セント・ブレイヴ学園」の校長として、最後の挨拶をする。
「卒業生諸君。君たちは、勇者である前に、人間だ。
戦うだけが勇気じゃない。選ぶこと、悩むこと、笑うこと——それも勇気だ」
生徒たちは、泣いたり笑ったりしていた。
魔王軍に就職する者、猫型勇者になる者、農業科を立ち上げる者——
進路はバラバラ。でも、みんな“自分の道”を選んでいた。
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式のあと、職員室で教師陣が集まった。
「校長、今年は濃かったですね」
「魔王軍との連携も進みましたし」
「購買部のパン、評判よかったです」
「恋愛体験学習は、来年度から正式科目に」
俺は、進路希望調査票を1枚、机に置いた。
それは——俺自身の進路希望だった。
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「進路希望:教育者を続けたい。
でも、肩書きは“校長”じゃなくて、“伴走者”でありたい。
勇者たちの隣を歩く者として、世界を育てたい」
元・魔王の倫理教師がうなずいた。
「それが、あなたの“勇者の形”なんですね」
俺は、笑った。
「定時で帰れる日は、結局来なかった。
でも、誰かの“未来”に関われたなら、それでいい」
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校庭では、卒業生たちが空に向かって魔法を放っていた。
虹がかかり、風が吹き、パンの匂いが漂ってくる。
その中で、俺はそっとつぶやいた。
「勇者たちよ——お前ら、自由すぎる。でも、最高だったよ」
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こうして、勇者養成学校の校長としての一年が終わった。
でも、教育は続く。世界は変わる。
そして、次の“進路希望”は——まだ白紙だ。




