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心に恐るべきはノーコンの味方である

「そういえば、貴方ユーリ・モニークとおっしゃいました?」


 それまでセシリアと言い合っていたミリアリアが、飽きたと言わんばかりにユーリに振り向いた。


「はい! ユーリ・モニークです!」


 姿勢を正してミリアリアに向き合ったユーリはどこか緊張した面持ちでミリアリアを見つめる。


「もしかしてガドリング国でタランブトンと呼ばれていらっしゃる?」

「そうです、恐れ多いのですけど……」

(あぁ、確かそんな呼び方だった)


 ユーリ・モニークは稀な才能を持っている少女だ。

 普通はアンナが白魔法一つしか使えないように、魔法が使える人間は多くて二つの魔法の属性までしか使えないことが殆ど。

 しかしこのユーリ・モニークは四大元素全ての魔法が使える。逸材中の逸材でガドリング国では将来は国を支える一人として熱望されていた。

 しかし――


「こんなところに居て良いのですか?」


 ミリアリアの言うことはもっともだった。ユーリはガドリング国にとっては重要人物である。


「私はガドリング国には帰りません……」


 輝いていた瞳に影が差して暗くなる。


「オズ王国に来たのは冒険者になるためなんです。ガドリング国では駄目だって止められるから……」


 しゅんとするユーリに、パーティーメンバーは黙ってしまう。だがアンナの明るい声がパッとユーリを笑顔にした。


「ユーリさんの人生だもん。自分らしく生きるのが一番じゃない? 辞めたかったらガドリング国へ戻れば良いんだし!」


 シナリオ通りならアンナが言わなくてもパーティーメンバーにはなる。しかし最後のひと押しをしておいて損はないはずだ。完璧な私情ではあるが、ユーリが加入することは三人にとっても悪いことはない。


「ここにいる三人は腕が立つ上に、既に顔見知り、幸太郎たちだって将来有望視されている魔法使いがパーティーに入るのは有難いんじゃない?」

「丁度魔法使いが居てくれれば良いと思ってたし、あたしは賛成」


 セシリアが手を挙げると、ミリアリアが飲み干した紅茶のティーカップをソーサーに押して頷いた。


「私も賛成ですわ」


 二人は賛成。多数決ならここで決まりだが、幸太郎はどうだろうか? という視線が注がれる。


「俺も賛成。ユーリとはいい仲間になれそうだ」


 幸太郎にしてはハッキリとした色の良い返事に、珍しいとアンナとセシリア、ミリアリアは顔を見合わせた。


「じゃあ、よろしくユーリ」


 幸太郎の差し出して手を両手で覆い、ユーリは満面の笑みを浮かべた。


「はい! よろしくおねがいします!」

「じゃあマンチキンに冒険者登録しに行きましょ!」


 四人が立ち上がったので、アンナはシナリオ通りに進んでいくことにホッとしながら、これでようやく店の業務に専念できると思っていると、幸太郎に「アンナ」と呼ばれる。


「どうしたの幸太郎?」

「アンナもギルドに行くだろ?」

「え、私はお店があるし」


 関係のない自分が行くことないだろう、と暗に伝えても、幸太郎はジッとアンナを見つめ続ける。


「アンナはお昼休みの時間でしょう? ギルドでランチを一緒に取ればよろしいじゃない」

「い、いやでしたら、無理強いはしませんけど」と少ししょんぼりしながら呟いたミリアリアに、可愛さを感じているアンナは頷いた。こんな可愛い少女の頼みを断るわけない。


「オズ王国はとてもキレイな街ですね」


 ユーリが遠足に来た子供のように高揚を隠さず笑う。


「ユーリの居たガドリング国はどんな街ですの?」


 ミリアリアは冒険者になってから様々な国へ行くようになったが、ガドリング国にはまだ本の中の知識しかないようで、いつもの澄ました顔とは違い、好奇心に目を輝かせている。


「ガドリング国は一年中お花が咲いているんです。街全体に魔法がかけられていて、その魔法は魔塔に所属している魔法使いたちが管理しています」

「まあ! 本で読んだ通りですのね! 私まだガドリング国には行ったことがなくて……」

「ふふふ、私で良ければご案内しますよ!」


 ユーリは臆病な性格のキャラクターだが、ミリアリアの心根が優しいことを理解したのか、二人の会話は弾んでいるようだ。

 ドロシーからツーブロック出た大通りを進めばマンチキンはすぐ。その角を曲がれば大通りに出ると言うところで、複数の影がアンナ達の前を塞いだ。


「よお、この間は世話になったな」

「あなた達は……!」


 眼光を鋭く光らせ、獲物を見つけた獣のように舌なめずりをする。男たちの中に見たことのある顔を見つけ、アンナはユーリを庇うように前に出た。


「この間のならず者ね」


 幸太郎は剣の柄に手をかけ、セシリアとミリアリアは迎撃に構える。


「俺達はそこのお嬢ちゃん達に用があるんだよ。他のガキ共はすっこんでな!」


 大通りで乱闘するには分が悪いと踏んだのだろう。きっと男たちはここでアンナ達を待ち構えていたに違いない。どこまでもならず者というのは卑怯だと思いながら、アンナはゴクリと喉を鳴らした。


「……筋力強化、魔法威力アップ」


 アンナが小さく呟くと同時に、四人の体の周りをホタルのような小さな光の粒が舞って、光を纏い、そして体に吸収されていく。


「大人の怖さを思い知れ! ガキども!」


 鉄パイプを持ったリーダー格の大男が武器を振りかざす。他の男達がセシリアとミリアリアにナイフを手に襲いかかった。


「このっ!」

「汚い手で触らないでくださる?」


 ミリアリアがテイムした数羽の鷲が男たちの眼前で羽を広げて視界を遮り、鉤爪で攻撃する。そして隙きを見せた瞬間にセシリアが拳や足を男たちの体に叩き込んだ。


「う!」

「ぐえ! こいつら女のくせに!」


 セシリアとミリアリアを相手にした男達は情けない声を上げるが、彼女たちは手加減なしに暴漢に絶叫を上げさせ続ける。

 幸太郎はというと、ボスの大男が振り回す鉄パイプを剣で受け止める。アンナとユーリを庇っているのか、受け流すだけで自分から先手を打とうとはしない。


「女二人守る甲斐性があるのは認めてやる」


 にらみ合う二人を見て、アンナは必死にユーリを守ろうとしていた。そして、そんなアンナを見たユーリは唇をキュッと噛み締めて、自分の背丈よりもある杖で、地面をコンと叩く。


「私も戦います! 元はと言えば私のせいですから!」

「ユーリさん待って!」


 アンナが焦ったように止めるが、ユーリは首を振る。


「いくらお姉さまでも聞けません!」


 キッとピンクの瞳が強く上を向き、ユーリは魔力を杖へと集める。ステッキの上部に飾られた天然石の結晶に淡い光が宿り、その光が強くなった時、ユーリの周囲が輝いた。


「ファイヤーボール!!」

「ダメダメダメダメーーー!!!」


 ボッ! と数個の火の玉が大男に向かって放たれ、直撃する……! かと思いきや、綺麗に方向転換してセシリア達が相手にしていた男達の群れを燃やした。


「あち!」

「なんだこれ!」


 その火は敵だけではなく、ミリアリア達の服の端を燃やし、彼女たちは慌てる。その様子を幸太郎だけではなく、リーダーの大男も呆然と見つめていた。


(……あーぁ……)


 アンナだけが知っているユーリの弱点。

 彼女は極度のノーコンなのだ。

 

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