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マイペースパーティー

 店内のカウンター席が満席になり、横一列に並ぶ四人組は、傍から見れば不思議な組み合わせだった。


「口に合うかわからないけど、これオススメのハーブティー」

「ありがとうございますお姉さま!」


 笑顔なのはユーリだけで、アンナが入れてくれたハーブティーを彼女は頬を染めて口をつけた。


「それで、えっと……どうしてパーティーを組むことになったの?」

(本当は知ってるけど、ここは聞かないとおかしいよね)

「パーティーは組んでいませんわ。この子は依頼人でしたの」


 ミリアリアがカチャリ、とカップをソーサーに置いて話し始めた。

 なんでも、ギルド前をうろうろしていたユーリに声をかけた三人に、彼女が「お姉さまを探してほしい」と依頼を持ちかけた。

 冒険者として依頼を受けるならギルドを通さなければいけないが、三人は冒険者ではなくオズ王国に住む住人としてお願いを聞いたのだそうだ。その日はギルドからの依頼があったので、日を改めようと待ち合わせに使われたのがアンナの店。そしてそこでユーリは念願のお姉さまに会えることになった。


「まさかアンナに妹がいたなんてね~。こんな小さい子残して何してるのよ」


 呆れたように言うセシリアに、アンナは待ったをかけた。どうやらセシリアはユーリがアンナの妹だと信じているようだ。


「違う違う! 私はユーリさんの実姉じゃない! この間会ったばかりの他人よ!」

「はあ!? だってお姉さまって!」

「お姉さまはお姉さまです。私を助けてくれた勇気あるお姿、今でも忘れられません……」


 ほう、と頬に手を当ててうっとりしているユーリにアンナは固まった。


「俺たちが勘違いしてたみたいだな」


 アンナとユーリは似ていない。強いていうなら魔法使いという共通点だけだ。しかしそれも無理な話で、ユーリの言葉を鵜呑みにしていたセシリアは盛大な溜息を、ツンとしたミリアリアは他人事のように、幸太郎はユーリに良かったな、とだけ声をかけている。


「それで、私を探してたみたいだけど……」


 自分を探していたなら目的があるのだろう。アンナはユーリとカウンター越しで向かい合うと、彼女はモジモジと身じろぎた。


「いえ、その、……お、お礼がしたくて……」


 三角帽からチラリと見えるピンクの瞳が忙しなく左右を行ったり来たり。


「私、この街に来たの初めてだったんです。右も左も分からなくて、悪い人に追いかけられて、怖かったところをお姉さまが守ってくれて……だから、その……ありがとうございました……!」


 鈴のような声が感情をいっぱい乗せてアンナへと届けられる。


(か、かわいい!)


 キュンとした胸を抑えて、アンナは努めて冷静に言葉を返した。


「うん、こちらこそ。あの時魔法で助けてくれてありがとう」


 小柄な体を震わせていたユーリ。アンナが暴漢から守る時、逃げることも出来たはずなのに、ユーリはそれをしなかった。


(なんか、小説を読んでるだけじゃ気付かなかったことが多いな……)


 セシリアは聡く、ミリアリアは穏やかで、ユーリは勇敢だ。

 そして幸太郎は――


「アンナはいつも誰かを助けてばかりだから」

「そうなんですか? さすがお姉さまです!」


 ユーリとアンナのことを話す幸太郎はどこか誇らしげで、まるで自分のことのように嬉しそうな雰囲気を醸し出す。


「大体分かり辛いのよ! お姉さまって言われたら本当の姉だと思うでしょ?」

「セシリアがおっちょこちょいなだけではなくて? あの時の貴方、依頼そっちのけでお姉さまを探しに行こうとしたではありませんか」


 フン、と鼻を鳴らしてからかうミリアリアに、セシリアは悔しそうに食らいついた。


「なによ! ミリアリアだって疑問に思わなかったくせに!」

「わ、私ぐらいの家柄ですと、お姉さま呼びは普通ですもの!」


 子犬同士が戯れのようにキャンキャン言い合う二人は馬が合うのか合わないのか、まとまっているようでそうでもないパーティーは今日も平和そうだ。


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