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凡人の俺にだけ“声”が聞こえるようになった件 ―地方創生チート始動―  作者: バグ製造機
高校生法人編

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第29話 成田との会話

夕暮れの部屋に、スマホの着信音が鳴り響いた。

 画面に浮かぶ名前——成田。

 誠は一瞬躊躇したが、通話ボタンを押した。

「もしもし」

「あっ……あの……えっと」

 成田の声は、いつもの冷静さを失っていた。

 言葉が詰まり、息を呑む音だけが聞こえる。

 誠は黙って待つことにした。

 急かしても、余計に混乱するだけだ。

 数秒の沈黙。

 やがて成田が、ようやく口を開いた。

「……その、クラファンの件なんだけど……あの」

 誠の背筋が冷たくなる。

 だが表情は変えず、静かに応じた。

「ああ。何か?」

「あの……サイト、大丈夫だった? なんか、噂で聞いたんだけど……」

 言葉が曖昧で、要領を得ない。

 成田らしくない。

 いつもなら論理的に、結論から話すはずなのに。

 誠は短く息を吐き、こちらから切り出すことにした。

「……成田。実は、な」

 そして淡々と告げた。

 詐欺に遭ったこと。

 資金が全て消えたこと。

 ダイヤが責任を感じて泣き崩れたこと。

 成田は、ずっと黙って聞いていた。

「……そっか」

 ようやく返ってきた声は、妙に平坦だった。

「俺、知らなかったんだ。そのサイトが怪しいなんて……全然、気づかなくていやその僕としてはそこまでおすすめしたわけではないんだけどダイヤ君が.....」

 その瞬間、誠は思うところがあったが何も言わずに聞くことにした。

 成田の声のトーン、言葉の選び方、間の取り方。

 全部が、何かを隠している。

 けれど誠は、それ以上追及しなかった。

 ただ静かに言った。

「……わかった。ありがとな心配してくれてるんだろう」

「え?っいやそのごめん

あの ....これはその


僕にも少しは責任があるから進めた身としてはだからそのいくらか僕のほうでも担保しようかと打診したくて

50万以上は無理だけどただ手助けはできると思うんだそっそれにせっかく始めたのにここで終わるのはもったいなくて僕もここまであつま..... いやこんなことになるなんてその」

「いいよ無理しなくていい

電話、ありがとう。また連絡するごめんちょっと今はまた電話切ってもいいかな?

一人になりたいんだ」

「あっわかった.......」

 成田が短くそう告げ言葉が終りかけた直前、誠は通話を切った。

 画面が暗くなり、部屋にまた静寂が戻る。

 誠は天井を見上げ、深く息をついた。


 * * *


 電話が切れたあと、成田は一人、自室のベッドに座り込んでいた。

 窓の外では雨が降り始めていて、ガラスを叩く音が妙に大きく聞こえた。


 ——俺は、知ってた。


 あのクラファンのサイト、"Future-Link"。

 最初に見たとき、すぐにわかった。

 運営情報が曖昧で、問い合わせ先が不自然で、口コミもほとんどない。

 ネットで少し調べれば、すぐに怪しいとわかる程度のものだった。


 ——そして、俺はわざとあそこに誘導した。


 ダイヤが資金調達の方法を探していたとき。

 小春が「いい方法ないかな」と言っていたとき。

 俺は、さりげなくそのサイトの話を出した。

 「こういうのもあるよ」って。


 ——あのとき、わざと教えた。


 ダイヤが嬉しそうに画面を見せてきたとき。

 小春が目を輝かせていたとき。

 誠が静かに頷いていたとき。

 俺は、わかっていて止めなかった。


 ——だって、あいつらが楽しそうにしてるのが気に食わなかったから。

 ——そんなに集まるとは思ってなかったし、ちょっと痛い目に遭えばいいと思い


 でも、あの後——

 ダイヤが泣きながら謝ってきたとき、俺は愉悦じゃなく、罪悪感に押し潰されそうになった。

 こんなことになるなんて、思ってなかった。


 そう思うと、胸が詰まって何も言えなくなった。

 そして五日前、クラファンの金額が膨れ上がっているのを見たとき——

 俺は、逃げた。

 自分が誘導したせいで、こんな大事になるなんて。

 そう思うと、怖くなった。

 責任を取れない。

 誰かを傷つけたくない。

 だから、あのとき部屋を出た。


 ——でも、結局こうなった。


 俺が誘導したせいで、ダイヤは傷ついた。

 誠も、小春も、巻き込まれた。

 俺は拳を握りしめた。

 雨の音だけが、部屋に響いていた。


 ——誠は、怒らなかった。


 罵倒もしなかった。

 ただ「わかった」と言っただけだった。

 その優しさが、逆に胸に刺さる。

 俺は目を閉じ、小さく呟いた。

「……ごめん」

 誰に向けた言葉かも、わからないまま。

俺はただ罪悪感を感じながらも真実を知っていたということだけは告げず匿名で

ダイヤあてに現金書留の封筒を送ることにした

こんなことしてもよくはならないのはわかってる

自分がどんどんみじめな存在に思えてくる



 * * *


 あれから五日が過ぎた。

 港町には初夏の日差しが戻り、空は高く澄んでいた。

 誠からチーム全員に連絡が入った。

 《明日、旅館の離れに集まってほしい。大事な話がある》

 ダイヤも、小春も、成田も——だがなぜかマリア先生はぬきで

 全員が、返事をした。


 翌日の夕方。

 旅館の離れには、四人と先生が揃っていた。

 障子越しに夕日が差し込み、畳の上に長い影を落としている。

 誠はゆっくりと顔を上げ、全員を見渡した。

 そして、静かに口を開いた。

「……話がある」

 その声は、いつもより少しだけ、低かった。


 成田は、心臓が早鐘を打つのを感じていた。


 ——もしかして、バレたのかな。


 俺のせいで、全部終わらせてしまったのかもしれない。

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