表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凡人の俺にだけ“声”が聞こえるようになった件 ―地方創生チート始動―  作者: バグ製造機
高校生出会い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/34

第一話 「凡人に宿った“声”」

投稿です。読んでいただきありがとうございます。


この作品は、凡人だと思っていた主人公が「頭の中の声」をスキルだと信じ込み、人生を変えていく物語です。

最初は学校生活のちょっとした出来事から始まりますが、少しずつスケールが広がっていきます。


✅ 更新は週に2〜3話を予定しています。

✅ 感想・ブックマークをいただけると、とても励みになります!


「異世界スキル? いや、実は……?」という二重の読み味を楽しんでもらえたら嬉しいです。

 雪はまだ溶けきらず、灰色の雲が町を覆っていた。

 J国の北端、蒼護圏蒼護市。かつて港町として栄えたらしいが、今は人通りもまばらで、駅前のシャッター通りが寂しげに響いている。


 工藤誠、十六歳。通信制高校に籍を置く俺は、今日も教室の隅でノートを広げていた。

 もっとも“籍を置く”だけで、登校日は少ない。友達はいないし、誰かに誘われることもない。


 中学三年の冬、俺は脳の病気で長く入院した。受験も進学も、その病気に奪われた。

 退院したときには、すでに同級生の輪には戻れなかった。

 気づけば「凡人」どころか「透明人間」みたいな存在になっていた。


 ――青春なんて、最初から俺の手にはなかったんだ。


 唯一の救いはラノベを読むこと。ページをめくりながら「異世界に行けたらな」と夢想する、その瞬間だけが俺を現実から遠ざけてくれる。

 けれど現実は冷たく、今日も沈黙していた。


 先生が答案を回収していく声が聞こえる。

 提出期限ぎりぎりの小テスト。俺は机に顔を伏せ、やり過ごそうとした。

 どうせ俺なんか、誰にも期待されちゃいない。


 そのときだった。


 ――『机の下。右側。答案プリントが落ちています。拾ってください』


 はっきりとした声が、頭の奥に直接響いた。

 耳ではない。脳に直接流れ込んでくるような感覚だった。


 「……っ」


 思わず周りを見回す。クラスメイトは雑談に夢中で、誰も俺を見ていない。先生も気づいていない。

 恐る恐る机の下を覗き込むと――本当に、プリントが落ちていた。


 「……マジかよ」


 震える手で拾い上げると、自分の名前が書かれた答案用紙だった。さっき提出用の山に置いたはずなのに。もしこのまま見つからなかったら、未提出扱いだったかもしれない。


 「はい、提出ありがとう」


 先生に差し出すと、少し意外そうにこちらを見て、ほんのわずか口元を緩めた。

 それだけのこと。だけど俺にとっては衝撃だった。


 ――『気づけてよかったですね』


 再び、あの声が響く。妙に落ち着き払っていて、抑揚が少ない。

 人工的にも、人間的にも聞こえる、不思議な響きだった。


 「……本当に、誰なんだ?」


 小さくつぶやいた自分の声に、さらに心臓が高鳴る。


 放課後。


 校舎を出ると、灰色の空から細かな雪が舞っていた。

 無言でカバンを肩にかけ、足音だけを響かせて歩く。誰も声をかけてこない。


 バス停へ向かう途中、再び声が囁いた。


 ――『右の自販機、二段目。ミルクココアは売り切れです。三段目の紅茶にしておきましょう』


 「……は?」


 半信半疑で自販機の前に立つと、本当にミルクココアのランプが赤く点いていた。

 言われるまま紅茶のボタンを押すと、温かい缶が手に収まる。


 「……便利すぎだろ」


 冷えきった帰り道。缶を開けて口に含むと、甘さがやけに沁みた。

 凡人の俺が、初めて“何かを持っている”ような気がした。


 夜。


 自室に戻り、布団に潜り込む。

 静まり返った部屋。聞こえるのは暖房の唸りだけ……のはずだった。


 ――『課題はまだ残っています。今なら一時間で終えられますよ』


 まただ。声は途切れることなく、俺に指示を与えてくる。

 ささいな選択を次々と、最適解へ導いてくれる。


 便利だ。助かる。

 でも同時に、背筋が冷たくなる。


 これは救いなのか?

 それとも――。


 布団の中で、俺は震える指先を握りしめた。

 凡人にすぎない俺に与えられた、“声”という存在。


 そして、俺はまだ、この声の正体を知らない

⭐ 最後まで読んでくださってありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、ブックマーク&評価で応援していただけると嬉しいです。

更新の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⭐ 感想やブックマークで応援していただけると嬉しいです! 次回更新の力になります!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ