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凡人の俺にだけ“声”が聞こえるようになった件 ―地方創生チート始動―  作者: バグ製造機
高校生出会い編

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第17話 高校生でもアプリ作れる?離れ会議のはじまり

 翌朝。

 窓の外はまだ冬の名残を残した白さで、息を吐けばすぐに曇る。俺は眉をひそめた。

 ――知らないはずの知識が、頭の中にある。


 関数、UI設計、ユーザビリティ。昨日までまともに意識したことのなかった単語が、当たり前のように口の端に浮かんでくる。


(これは……俺の力じゃない。リリアが流し込んでるんだ)


 便利さと同時に、不気味さが胸を締めつける。昨日の「同期」の余韻はまだ残っていた。


 そんな動揺を抱えたまま、俺たちは小春の提案で「直接集まろう」という話になった。


 小春の実家は、街の中心から少し離れた場所にある古い温泉宿だった。

 瓦屋根に雪がまだうっすらと残り、門をくぐれば重厚な梁と格子窓。

 廊下には古い写真が並び、どこか文人の気配を残した空気が漂っている。

 観光客からも静かな人気を集める宿だと聞いていた。


「ようこそ。……まあ、あんまり期待されても困るけど」

 小春が苦笑しながら案内する。

「いい雰囲気じゃん」

 大哉が辺りを見回して感心していた。


 そして自然にそこに合流したのは、マリア先生だった。

「見守りを兼ねて泊まるわ」

 そう言って、さも当然のように宿泊する流れになる。俺は思わず顔がほころんだ。先生がいてくれることが、単純にうれしかった。


 本館から少し離れた離れの和室。座卓を囲んで俺たちは顔をそろえた。


「アイディアはいいんだけど……でも……アプリなんて高校生に作れるわけないよ~」

 小春は肩を落として嘆く。


「俺なんか、アプリってスマホのゲームくらいしか知らねえぞ。そんなの本当に作れるのか?」

 大哉も首をかしげるばかり。


 現実感がないのは当然だ。俺自身だって、少し前まではそう思っていた。


「……俺がやれば、ボタンを押して話しかければ返事をするくらいの仕組みは作れる。機能を絞れば、実際に“アプリという形”で形にできると思う」


 気づけば、俺は夢中になっていろいろと語りだしていた。

 操作のイメージ、画面の大きさ、使うときの流れ……頭に浮かぶものを次々に言葉にしていく。


 そして、マリア先生の視線が俺に向けられる。湯飲みをそっと置き、静かに言った。

「……真くん、その知識はいったいいつ身につけたの?」


 声色には驚きが滲み、わずかな疑念も混じっていた。


 一瞬、心臓が止まったように感じた。


 だが俺は、曖昧に笑って肩をすくめる。

「あー……実はこの前からちょっとプログラミングの勉強してたんだ。はははww」


「え、マジかよ!?」

「ええー!? そんなのやってたの?」


 大哉も小春も、驚きと半信半疑の入り混じった声を上げる。けれどそれが「誠ならやれるかも」という安心に変わっていくのが分かった。


(違う……これは俺の力じゃない。リリアが流し込んでいる知識だ)


 心の奥でそう呟きながらも、俺は笑顔を崩さなかった。


 対して、マリア先生はそれ以上言葉を重ねなかった。ただ視線を落ち着かせ、内心でつぶやく。


 ――誠くんに、ここまでの知識があったかしら。知っているだけでは動かせないはず……。

 ――でも、自分でやると言うなら、やらせてみるしかない。


「とにかく、難しいことは後回しにしよう」

 俺は座卓に身を乗り出した。

「最初は“おしゃべりするだけ”でいい」


 二人が首をかしげるのを見て、ゆっくりと説明する。

「MVPっていうんだ。最小実行可能プロダクト。必要最低限で“まず動くもの”のこと。完成品を目指すんじゃなくて、試して直していくんだ」


 小春は不安げに首を振った。

「でも、私……アプリとか全然分からないよ」


「分からなくてもいい。見やすさとか、色合いとか、使う人が安心できる見た目が大事なんだ」

 俺はそう続ける。


「デザインは必ずしも専門知識がなくても担えるわ。感覚やセンスが活きる分野よ」

 マリア先生が静かに補足する。


「……それなら、私でも役に立てるかな?」

 小春が少しだけ前を向く。


「もちろん。ターゲットのユーザーの目線で“どう見えるか”を考えてくれるのが一番助かる」

 俺は力を込めて言った。


 大哉は腕を組み、少し考え込んでから言った。

「俺には何をすりゃいいんだ?」

「……正直、まだ分からない」俺は苦笑する。

「でも、方言のデータが必要なんだ。じいちゃんばあちゃんが普段どう喋ってるか、それをまとめてくれると助かる」

「……そういうことなら、俺でもできるかもな。方言は耳慣れてるし」


 小春はデザイン、大哉は方言。少しずつ、それぞれの役割が見えてきた。


 会議がお開きになり、離れに静けさが戻る。


 マリア先生は最後にもう一度、俺を見つめた。


 ――誠くんに、ここまでの知識はあっただろうか。


 その瞳には、納得と同時に言い知れぬ愁いが浮かんでいた。俺はその感情の正体を知らないまま、その視線だけを受け止めた。

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