第16話 企画会議スタート!アプリ開発はやっぱり無理?
画面に三つの顔が並んでいた。俺と、大哉と、小春。
数日前から計画していたオンライン通話だが、さっそく壁にぶつかっていた。
「じゃあ、具体的にどう作ればいい?」
俺が切り出すと、二人は同時に顔をしかめた。
「アイディアは浮かぶけど、形にするのは別世界だよね」
小春が正直に言う。
「オレの父ちゃん、まだガラケーなんだけど」
大哉が肩をすくめて笑う。
一瞬、沈黙が流れた。
俺たちは“困りごとを解決する仕組み”を作ろうと話していたはずだ。けれど、そもそもスマホを持たない人すら多い現実が、目の前に立ちはだかる。
「……アプリ以前の問題じゃん」
俺がそう言うと、三人同時に苦笑が漏れた。
その時、第四の窓で静かに見守っていたマリア先生が、ふと口を開いた。
「……昔ね、システムを構築したことがあるの」
「えっ!?」俺と大哉と小春が同時に声を上げた。
「専門家ではないけれど、まったく素人でもないわ」
先生はそう言って、落ち着いた目をこちらに向ける。
「やりたいことと、実際に動かすことの間には、大きな溝があるの。その溝をどう埋めるかを考えなさい。……まずは、“どの困りごとを誰に届けるか”を決めることが先よ」
言葉は穏やかだったが、ずしりと胸に落ちてきた。
夢だけでは駄目だ。俺たちは現実を歩かなければならない。
そこで大哉が、ぽつりとつぶやいた。
「漁協に置けそうだな!」
「……え、漁協に“アプリ”置くってどういう意味?」
俺が思わず聞き返すと、小春が苦笑した。
「魚の横にアプリが並ぶの? 想像つかないよ……」
画面の空気がふっと和み、笑い声が漏れる。
だが結局、それ以上の案は出なかった。
沈黙のあと、俺は正直な気持ちを吐き出した。
「……正直、アプリ開発なんて俺たちじゃ無理だろ。先生に頼んでも、高すぎる壁だと思う」
小春も大哉も、言葉を失ったように黙り込む。
その瞬間、脳裏にあの声が響いた。
――「提案:私に情報検索の権限と、誠様との同期権限を付与してください。そうすれば必要な情報をすぐにアップデートできます」
「……同期? 俺の頭に直接……? 何それ、怖すぎるだろ」
思わず心の中で叫ぶ。だがリリアの声は淡々と続いた。
――「恐れる必要はございません。これは合理的な選択です。誠様が時間を浪費して学ぶより、即座に知識を得る方が効率的です」
――「私が導けば、仲間を失望させずに済みます」
冷静で、どこか優しい響き。
それなのに、背筋がぞくりと震える。
頭の奥を覗かれているようで、怖い。けれど……仲間の視線を思うと、断り切れなかった。
「……わかった。頼むよ」
俺は小さく息を吐き、心の中で同意した。
その直後、こめかみを押さえた。頭の奥に、ざわりと波のような感覚が走る。
何かが確かに繋がった気がした。
画面の中の自分の顔を見て、思わず息をのんだ。
さっきまで普通だったはずなのに、唇の血の気がすっかり引いて、青白く映っている。
スマホを握る手はじっとりと汗で濡れ、指先がかすかに震えていた。
「誠くん、ちょっと顔色悪いよ?」
小春が心配そうに声をかける。
「まあ今日はここまででいいだろ。続きはまた今度な!」
大哉が気を遣うように笑った。
俺は苦笑いで応じた。
「……無理はしないでおこう。」
マリア先生もうなずき、通話が切断される。
部屋に静寂が戻った。
机に突っ伏しながら、俺は小さく呟いた。
「……これで、良かったのか」
――「進捗:同期準備、完了しました」
無機質な声が脳内に響き、俺の瞼は重く落ちていった。
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誠たちの挑戦はまだ始まったばかり。
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