第15話 オンライン会議とリリアの斬新提案
夜。俺は迷った末に、スマホを握りしめて発信ボタンを押した。
呼び出し音のあと、落ち着いた声が耳に届く。
「――工藤くん?」
「はい、あの……先生。少しお話、いいですか」
声が少し震えていた。俺は今日の登校日での出来事をかいつまんで説明した。
大哉や小春と“何か始められないか”と話したけれど、結論が出なかったこと。
それでも、どうしても挑戦してみたい気持ちが残っていること。
黙って聞いていた先生が、やがて静かに口を開いた。
「挑戦してみなさい。大丈夫、失敗しても学びになるわ」
「……でも、失敗したら怖いです」
「無茶はしないでね。私は見守っているから」
その優しい声に、胸がじんわり温まる。
「もし不安なら、オブサーバーとして参加しましょう。口は出さない。ただ、あなたたちの挑戦を静かに見守るわ」
思わず苦笑いが漏れた。
「……なんだか、顧問みたいですね」
一瞬、受話口の向こうで間があった。
そして、少し柔らかく笑う声が返ってきた。
「顧問、ね。そう思ってもらっていいわ」
電話越しなのに、先生が微笑んでいる姿がはっきり思い浮かんだ。
◆
数日後。俺、大哉、小春の三人は、初めてオンライン通話で顔を合わせた。
「おー、繋がったな!」大哉がいつもの調子で声を張る。
「ちゃんと映ってる?」小春が不安そうに画面を覗き込む。
「えっと……実は今日、もう一人参加してもらうことにしてるんだ」俺は少し真面目に切り出した。
「マジ? 誰誰? 気になるんだけど!」大哉が目を丸くする。
「えっ、知らない人?」小春も首をかしげる。
「うん。俺が昔から世話になってる人で、まあ……保護者みたいな立場の人かな。今日は“オブサーバー”として見てもらうだけ。口は出さないから安心して」
そう説明すると、画面に新しい窓が開いた。
そこに映ったのは、落ち着いた微笑を浮かべる女性――戸来塚マリア。
柔らかく光を受けた髪、整った顔立ち。どこか異国の香りを漂わせるその姿に、二人は息を呑んだ。
「はじめまして。戸来塚マリアです。今日は見守るだけにしますので、気にせず話を続けてください」
大哉が思わず声を上げる。
「……え、めっちゃ綺麗じゃね!? モデルとかじゃないの?」
小春も目を丸くして、「すご……ハーフなのかな」と呟いた。
俺は気恥ずかしくなって、画面を伏せかける。
「……やっぱり顧問みたいだ」
マリア先生はふっと微笑んでみせた。
◆
「それでさ、この前出た案をもう一回整理しようぜ」
大哉が仕切るように言う。
「魚を配る、とか」
「宿のお客さんにスマホを教えるとか……」小春も続ける。
「悪くないけど……なんか、決め手に欠けるんだよな」俺は呟いた。
その時――
――『提案:高齢者が“困った”を簡単に送信できる仕組みを設計してください。初期段階は紙や既存アプリを利用し、将来的に専用アプリ化します』
リリアの声が脳裏に響いた。
「例えばさ」俺は自然を装って口を開く。
「“困りごとを簡単に送れる仕組み”を作ったらどうだろう?」
小春がぱっと顔を輝かせる。
「それ、うちの宿のお客さんに絶対必要! 予約も観光も、よく聞かれるし!」
「魚配るよりよっぽど現実的じゃねーか!」大哉が笑う。
マリア先生が静かに言葉を添えた。
「発展性があるわね。無理せず、少しずつ形にしていけばいいのよ」
◆
「でもさ、これタダでやってたら、ただの便利屋だろ?」大哉が首をかしげる。
「最初は“お気持ち”でいいんじゃない?」小春がぽつりと言う。
「まずは無料で試して評判を作って、需要があれば有料にする。それなら現実的か」俺が考えをまとめる。
――『補足:実証段階ではデータ収集を優先。需要が確認できた時点でマネタイズ設計に移行してください』
(……やっぱり“仕組み”を考えなきゃダメなんだな)
◆
「じゃあ、次は“どう仕組みを設計するか”を考えよう」
俺がそう言うと、大哉が力強くうなずき、小春も笑顔で賛同した。
通話を終えたあと、画面を見つめて俺は呟く。
「これが……俺たちの最初の一歩になるのかもしれない」
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