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凡人の俺にだけ“声”が聞こえるようになった件 ―地方創生チート始動―  作者: バグ製造機
高校生出会い編

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第14話 工藤パンは即却下? 仲間と夢見るおしごと計画

「蒼護市を舞台に、凡人の高校生が“声”に導かれて動き出す物語です。今回から仲間との相談パートに入ります!」

 前日のマリア先生の言葉が、まだ耳に残っていた。

 「挑戦しなさい」――あの凛とした声。母親のようでもあり、厳しい響きを持つ言葉だった。


 翌朝、俺は久しぶりに制服に袖を通し、通信制高校の登校日に向かった。数少ない“直接会える日”だ。普段は画面越しにしか会えない同級生と、こうして顔を合わせる時間は貴重だった。



 蒼護市の郊外にある校舎は、平日でも少し寂れている。廊下を歩くと、ちらほらと生徒の姿があるだけだ。

 その廊下の角で、佐藤大哉と佐々木小春の二人に出くわした。


「おっ、工藤!」

 大哉がいつもの調子で手を振る。

「ひさしぶり」

 小春は控えめに笑った。


 教室で数時間の授業を受けたあと、俺たちは自然と机を寄せて雑談を始めた。教科書より、話題は将来やバイトのことに移っていく。


「なあ……」

 俺は、昨日から胸の奥でくすぶっていた思いを口に出した。

「俺たちでも、“仕事”とかできると思う?」


 二人がきょとんとした顔をする。

 けれど次の瞬間、案外真剣に考え始めた。



「魚を配ればいいじゃん!」

 真っ先に声を上げたのは大哉だった。

「父ちゃんの漁で余ってるのあるし、それ配ったら感謝されるぞ!」


「……いや、配るだけじゃ稼ぎにならないだろ」

 俺がツッコむと、小春が小さく手を挙げた。


「せめて料理して売るとか? 干物とか」


「なるほどな」

 確かに現実的ではある。でも俺が思い描いていた“何か新しいこと”とは少し違う。


 小春はさらに言った。

「宿のお客さん、スマホ全然使えない人多いの。教えてあげたら喜ばれると思う」


「うーん……なんか、それバイトっぽいな」


「いやバイトだって稼ぎだろ!」

 大哉がすかさず突っ込む。

「でも夢がないよね」

 小春の一言に、大哉は「ぐっ」と黙り込んだ。


 確かにどれもリアルだけど、“法人”とか“ビジネス”という響きからは遠い。



「じゃあさ!」

 大哉が急に声を張った。

「パン屋は? “工藤パン”とか!」


「「即却下!!」」

 俺と小春が同時に叫んだ。


「……いや、それ絶対どっかで聞いたことあるし。やったら怒られるやつだ」

「“イギリスなんとか”とか出してる会社っぽくなるから」

「イギリス!? 関係なくね!?」


 教室に変な笑いが広がった。大哉の迷走はいつも場を和ませてくれる。



――『提案:近隣住民に有料でWi-Fiを再販するビジネスモデルを検討してください』


 突然、あの“声”が脳内に響いた。リリアだ。

(いやいや、それ違法っぽいから!)

 思わず口に出してしまった。


「おい、どうした工藤?」

 大哉が怪訝そうに覗き込む。

「あ、いや……なんでもない!」

「また独り言……?」

 小春の目が少し心配そうになる。


 やばい。リリアの声に反応するのは、独り言みたいで危ない。



 結局、その日の勉強会――いや、雑談会は大きな結論を得られないまま終わった。

「まだ俺たちにできる仕事は見つからないな」

 俺が言うと、二人は苦笑いしてうなずいた。


「でも、考えるだけの価値はあるかもしれない」


 大哉は「まあな!」と笑い、小春は「次また考えよ」と小さく言った。

 俺たちは軽く手を振り合って、それぞれの帰路についた。



 夜、自室でスマホを握りしめる。

 俺は迷った末に、マリア先生にLINEを送った。


「先生、ちょっと相談があるんです」


 送信を押した瞬間、心臓が跳ねる。

 既読がつくまでの数十秒が、やけに長く感じられた。


 数分後。

 画面に文字が浮かぶ。


『もちろん。いつでも話していいのよ』


 その優しい言葉に、胸の奥が少し軽くなった。


「……やっぱり俺、何か始めてみたいのかもしれない」


 声にならないモノローグを呟き、俺は画面を見つめ続けた。

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