第11話 SNSの反響と、リリアの押し売り情報
スマホの通知音が、朝からやけに鳴り響いていた。
寝ぼけ眼で画面を覗き込んだ俺は、思わず「うわ」と声を漏らす。
「……何だこれ」
昨日投稿した喫茶店の宣伝が、思った以上に伸びていた。
たかが数枚の写真と、ちょっと洒落た文章を添えただけ。それなのに“いいね”やコメントが想像以上についている。
しかも、メッセージ欄には「アルバイト募集してますか?」という問い合わせがいくつも並んでいた。
「いやいや、俺ただ投稿しただけだろ……?」
頭をかきながらぼやいたその瞬間、例の“声”が割り込んでくる。
『アクセス数の推移をご覧ください』
リリアの声だ。冷たく、それでいて揺るぎない口調。
画面が勝手に切り替わり、棒グラフや数字が表示された。
『昨日の投稿後、一時間以内に反応が集中。その後も拡散が持続し、新規アカウントからのアクセスが増えています。これは広告効果です』
「……いや、数字とか見せられてもわかんねーし」
『理解する必要はありません。結果を確認すれば十分です』
「十分じゃねーよ。俺は別にマーケティングの授業受けてんじゃねえんだから」
ため息をついてスマホを机に置く。しかしリリアはお構いなしだ。
『投稿内容、写真の選定、文章の調子。いずれも集客に影響しました。次回の参考資料として保存します』
「保存とかすんな! 俺に相談してからにしろ!」
『承知しました』
承知しました、とは言ったが、どうせ勝手にやる気なんだろうな。
俺は枕に顔を押し付け、これ以上数字を見ないようにした。
――が、しばらくしてまたリリアの声が響く。
『……ニュースをお聞きください』
「は? ニュース?」
スマホの画面が自動で切り替わり、読み上げが始まった。
『地方分権改革。知事および市町村長に特区権限を移譲。国立公園の管理権限も自治体へ移管されます』
「……何だよ急に」
『さらに、市町村長の被選挙権年齢は二十二歳以上、都道府県知事は二十四歳以上へと引き下げられます』
「いやいや! そんなニュース知らなくていいから! 政治とか興味ねーし!」
慌てて画面を閉じようとするが、勝手に次のニュースが流れ始めた。
『エネルギー開発特区の新設が検討されています』
「だからいらねーって!」
『地域人口統計の最新値が発表されました』
「聞いてねぇ!」
『国際会議において――』
「やめろっての! 誰がそんなもん知りたいって言ったよ!」
布団をかぶり、耳を塞ぐ。
だがリリアの声は頭の中に直接届くのだから、意味はない。
「今必要なのは次の勉強会だろ! 余計なニュースばっか流すな!」
一瞬の沈黙。
そして、ようやくリリアが口を閉じた。
『承知しました。次回の学習会について計画しますか?』
「……はぁ。やっぱそうなるのかよ」
布団から顔を出し、天井を見上げる。
昨日、図書館で大哉と小春に勉強を教えたばかりだ。次はどう進めるか考えなきゃならない。
「まあ……大哉と小春に合わせたほうがいいよな」
『学習会の設計は可能です。要件を提示してください』
「……はいはい、わかったよ」
うんざりしながらも、机に置いたノートを手に取る。
ページをめくり、ペンを走らせる――「次の勉強会」の文字を見た瞬間、心のどこかが少しだけ熱を帯びた
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