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凡人の俺にだけ“声”が聞こえるようになった件 ―地方創生チート始動―  作者: バグ製造機
高校生出会い編

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第10話 凡人とスキル進化と“だるい”選択

 帰りの電車に揺られて家に着くころには、すっかり夜になっていた。

 かばんの中には今日買ったラノベの新刊が何冊も入っている。ページをめくる楽しみと引き換えに、財布はほとんど空っぽだ。


「……はぁ。金がねぇ」


 ベッドに転がって、天井を見ながらぼやく。生活費そのものはマリア先生がきちんと見てくれている。けれど、俺が欲しいのは高性能なPCやゲーム機といった、いわゆる“贅沢品”だ。そういうものまで頼むのはさすがに気が引ける。


 ふと、診察室でのマリア先生の言葉が脳裏をよぎった。


『自分で役割を作る』


「……役割を作る、か。俺にそんなの、できんのかな」


 独り言ちて、スマホを開き、「高校生 アルバイト」と検索してみる。

 表示されたのは、コンビニ、飲食店、接客の求人ばかり。


「うわ……無理。陽キャ専用バイトだろ、これ」


 ため息を吐きながら画面をスクロールすると、「SNS運用代行」という文字が目に入った。

 文章作って投稿するだけで仕事になる、と書いてある。


「……SNS投稿で金になる? でも、だるそう……」


 その瞬間、頭の奥に声が響いた。


『アップデートを実行すれば、端末干渉が可能になります。ただし、権限を付与していただく必要があります。

 これにより、投稿文の自動作成や、必要な調査作業の代行も私が担えます』


「……は? 自動作成? 調査? ……なんか、一気にゲームのスキルっぽくなってきたな」


『はい。その解釈で差し支えありません。承認なさいますか?』


「……スキルが進化するってことなんだよな? なら……いいよ。やってくれ」


 一瞬の無音。脳が凍りついたように沈黙する。


『権限の付与を確認。アップデート完了。端末干渉モジュールを起動しました。

 以降は文章生成、投稿スケジュールの管理、必要情報の調査を私が代行可能です』


「……お前、ほんとに俺のスマホどころか生活まで乗っ取る気じゃねえだろうな……」


 呆れた声を出しつつ、胸の奥が妙にざわめく。

 何かが“変わった”実感があった。


 翌日。


 俺はベッドに寝転がりながら、再び「SNS運用代行」と検索した。

 クラウド掲示板には「一件○○円」「投稿代行募集中」といった案件がずらりと並んでいる。


「……本当に金になるんだな。だるそうだけど……とりあえず、連絡してみるか」


 そうつぶやき、募集欄に短いメッセージを送った。


『合理的判断です。初回は小規模店舗を対象にするのが成功率を高めます』


「……だるいけど、やるしかねぇか」


 翌々日。


 図書館帰り、古びた喫茶店の前で立ち止まった。

 緊張で喉が渇く。けれど、昨夜送ったメッセージに返信があり、ここで試してみていいと言われたのだ。


「す、すみません。SNSに写真とか投稿するだけでいいなら……俺にやらせてもらえませんか?」


 店主は少し驚いた顔をしたが、すぐに柔らかく笑った。

「うちじゃそういうの手が回らなくてね。やってくれるなら助かるよ」


 了承をもらった俺は、そのままスマホを取り出す。


『試しに投稿してみましょう。文章はこちらを使用してください』


 リリアが提示した文案は、まるで雑誌広告のように洒落ていた。

 俺は言われるままに喫茶店の看板を背景にした写真を撮り、投稿ボタンを押す。


 数分後。


「……え? もう“いいね”ついてんだけど」


 通知がひとつ、またひとつと増えていく。

 コメント欄には「雰囲気いい」「行ってみたい」の文字が並んだ。


『反応率良好。次の文案を提示します』


 俺はボタンを押すだけ。二本目、三本目……投稿が積み重なるたびに、画面の数字は加速度的に伸びていった。


「すげぇ……俺、外に一歩も出てないのに」


 ラノベを読みふける以外に知らなかったこの部屋で、誰かが俺の投稿に反応している。SNSの通知音が鳴り止まない。

 胸の奥が熱くなる。


『図書館での学習指導経験も含めれば、学習支援やSNS運用による収益化は現実的です』


「……俺のスキルで金が稼げる……のか。……でも、人に教えるのは正直だるいんだよな」


『……しかし、合理的な選択肢の一つです』


「……はあ……俺の人生、どこに向かうんだか」


 ため息とも笑いともつかない声が漏れる。

 けれど、その指先はまた新しい投稿ボタンに触れていた。

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