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練習




部活の練習にも力が入ってきた夏服に衣替えしたある日、というか

単純な練習に飽きてきた今日この頃。もう何人か退部してるんですけど。。。

授業もけっこう忙しいしついていくのも大変だけど、それ以上に部活も

大変だ。中間テストがあるし傾向と対策があるような無いような曖昧さ

が蔓延してる。クラスでのおしゃべりや、部活の同級生、それ以外の

友人との会話はものすごく楽しいけど、一番肝心な勉強が不安なのは困った

もんで。伯父や従姉妹は口を揃えて心配ないと言うけど実際にテスト

受けるのは私だし。授業の中身を理解していないとは思わないけど本当に

これで大丈夫なのかな?



道場の隅っこで2年生と3年生、それにOBがごしょごしょ話してる


「そろそろどうですか?」


と主将


「それって主将判断だよ?反対する理由はない」


「個人的にはいいと思いますよ」


「前に飛べばめっけもんだから段取しないと」


「弓道部名物、道場裏開設? ワクテカ」


「それじゃ畳用意して。全員は無理だけど何人かはいけるでしょ」


「1年生集合~ 伊藤君、沢田君、滝沢さん、片野さん。


巻藁で実射に行きます。ゆがけの付け方教えますから新井先輩のとこへ集合


他の1年生は村石君と一緒に畳と段ボール用意して。段取は彼に聞いてください」



ゆがけの準備は分かるけど畳の用意??何だろ?どこからか畳が10枚ほど出てきて

巻藁の向こう側と下側、それに壁側に立てたり敷き詰められた。解放された側には段ボール

が2重に立てかけてある。


「それじゃー説明するね。今まではゴム弓で練習してたから指の先端でゴムを引っ掛けて

離れの練習してたんだけど、実際に矢を弦につがえて射るときにはゆがけ使います。」


実際にゆがけを見せながら説明がある。


「見れば分かるけど弦を親指の根元にある溝に引っ掛かった状態で引いてるのよねー

ゴム弓との最大の相違点がここ。試験には出ないけどしっかり覚えておいてね」


ゆがけの装着方法と紐の処理、それと矢のつがえ方。確かに矢を落さないだけでも

注意することが多いのは教わったけど実際に引き込むのは初めてだから緊張する。


「それから畳と段ボールだけどね、目の前1メートル未満で直径60㎝の巻藁外すとは

思ってないでしょ?外すんだなー・・これが」


先輩、脅かしてるんでしょ?ね?ね?


「誰か言ってたけど前に飛んだらめっけもんと思ってればいいよ。

最初の10射は本人と指導する一人以外は全員退避するから」


「えーっ!そんなに危ないんですか?」


「慎重すぎるってことはないからねー、大丈夫、落ち着いてやれば平気だよー

2年生だって一年前は同じことやってたんだしー私達3年だって2年前は同じだったよ?」


「弓道部名物道場裏四畳半畳の下貼り、始まり始まり~ぱちぱちぱち」


2年生も妙にテンション高いんですケド・・・


「新井さん、おねーさんちょっとちょっと」


平田先輩が新井先輩を手まねきして呼んでる。


「あーたね・・誕生日が2日遅いからって人をおねーさん呼ばわりしないのっ」


空手チョップが水平打ちと見せかけて垂直に頭のてっぺんにきれいに決まった。

うーん元主将でいじめられ役?本当に良く分からない人だ。


「っつたくもう・・2代続けて叩かれるって何かの呪いかねぇ・・ごにょごにょ」


「そっかそっか・忘れてた。あんたが指示するわけにもいかないもんねー、さんきゅ!」


慌てて新井先輩が道場に戻って胸当てを持ってきた。


「女子は制服のベスト着用してねーその上からこれつけてねー 

胸が大きくても当たらない人は当たらない。平坦でも当たる人は当たる。

ださい制服でも脇にファスナー付いてると便利なのよなー

耳に当たるかどうかは・・最初は運次第かな?うふふっ」


先輩、何だか黒いんですが・・


「伊藤君だったかな?これ付けて」


平田先輩が手首から肘の手前まであるサポーターを彼に渡した。


「あー他の人はいらないから。伊藤君専用だ」


「なるほどねーそっちはその準備かーいろいろあるよねー」


三年生は顔を見合わせて頷きあってるし、二年生は不気味な微笑を浮かべてるし。


「それじゃ4人集合。左手でじゃんけんして、勝った人から並んでちょ」


じゃんけん・・負けた。最後だ。最初は伊藤君。顔が強張って緊張しまくり。

歩く姿はロボコップですねぇ。彼を中心にして彼の前にいる主将を除き全員

10メートル離れる。正確には前方は畳で保護した壁、横方向は段ボール

後方10メートルにワクテカしてる2.3年生とどうなるか興味深々の1年生。


「みんな、見てて。落ち着いていままでやってきたことと同じことをすれば

いいだけの話なんだけどさ、弓を射るのがこんなに難しいと感じる瞬間かもしれないよ」


「まーねー初体験だしぃ」


先輩ちょっと意味が違うような・・なんでもありません。

伊藤君がゆっくり動作に入るちゃんと引ききって・・離したけど弓が大きく揺れた。

主将が笑いながら矢の抜き方を教えてこちらを振り向き指を3本立てた。

弓手(左手)の使い方を説明しながら2射、3射と続けて終了。戻ってきた伊藤君

汗びっしょりの額を乱暴にタオルで拭う。


「痺れた・・弓を射るってこんなに難しいって再認識したよ。二の腕も打ったし」


左腕のサポーターを外すとうっすらと赤くなってる。


「本郷が説明してたと思うけど弓手の使い方がなってない。弓を支える点がどこか

考えながら巻藁に向かって欠点矯正だな」


平田先輩が弓を持ちながら欠点を指摘してる。2人目は片野さん。1,2射目は無事だった

けど3射目で矢を弓手から落としてやり直し。4射目で巻藁外して畳に矢が刺さった。

虚ろな目のまま戻ってきて一言


「外した・・こんなに難しいんだ・・・」


「お疲れ。活手(左手)の肘の使い方研究しようねー手首使って矢を押し付けてると

引いている途中で力が抜けて矢が落ちるから。口や唇で載せて動作続けることもできるけど

一番上手いというかやった主将が後で説明してくれるよー」


3人目は沢田君。動作とか問題ない・・・のかな?それにしては最後に動揺してるし、

主将が耳元覗き込んでるけど・・ん?指2本立てたけど笑い顔ではないな。

2射、3射で終了して戻ってきた。


「耳が・・耳に弦が当たって痛い」


耳を見ると先のほうが赤くなってる。次は私なんだけど不安になるなぁ

主将の前に立って一礼。


「お願いします」


「大丈夫。慌てないでいいから。矢を番えるのも初めてなんだから上手くできなくて

当たり前。緊張するなは無理な話だから落ち着いてね」


やっぱり緊張してる。練習でやってきたことが頭から飛んで体がばらばらに動いてるのが

分かる。


「何も考えなくていいから、体を前後に伸ばして矢を離すイメージだけでそう・・

そのまま・・・ぽんっと」


ゴム弓とはまったく違う感覚。耳の横を矢と弦が弓の力で走っていった。怖くは無いけど

ものすごい緊張感と集中力が必要なんだ。


「うん。最初はそんなもんでしょ。4人の中では一番落ち着いてた。続いて5射」


矢の抜き方を教えてもらい、続けて練習。極度の緊張感は無くなったけど、物凄く疲れる


「何も考えないで引けるようになるといいんだけどね。お疲れ様」


相変わらずちょっとつんとした雰囲気で初めての巻藁射が終わった。


「最初の組の4人、10分くらい借りるよ~」


平田先輩が2年生に声かけて4人を引き連れて自販機コーナーへつれ出した。

千円札を自販機に突っ込んでアイスコーヒーのボタンを押す。


「好きなの押して。おごりだから」


「「「「はい」」」」


4人が飲み物を手に取ったのを確認して


「お疲れ様、初巻藁終了を祝って乾杯。時間もそんなにないから感想だけ聞かせて」


「緊張しまくりました」


「精神的にタフでないとできないんでしょうか?」


「分からないことがどんどん増えていくんですけど」


「練習量はもっと増えるんですよね?大変かも」


ひとしきり感想や疑問が並んだところで先輩が口を開いた。


「まぁ練習量=慣れなんだどね。2週間程度で実際に的に向かって射るし

夏休み前までに最低でも1日10射できればいいんだけど。人数が多いから

大変だよ。引いたもん勝ちってとこもあるし、武道だから向き不向きが

はっきり出るから入部した目的が分からなくなって退部するのも多い。

でもそれでいいんじゃない?わからない事は悪い事じゃない。。

はじめから出来る奴なんているわけないし。

分からなければ分かるように努力し、知らないならば知ればよい。

分からない事を侮る奴がいれば、それは愚かなんじゃないかな?

別のことがしたくなるのが分かったらそれだけで進歩だと思うよ。

ってとこでまた主将に怒られるから休憩終了ね」


うーん奥が深いな。続けてみよう。週一で合気道の道場にも通う予定だけど

どんどんハードな体育会系に漬かって行くなぁ

お仕事、かなり悲惨になってます。

デスマーチ真っ最中で更新時期不明ですわ。

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