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入部

うーん・・・弓道の道具って普通の人には縁が無いですもんね

どこまで描写すればいいんだろう?

結局、弓道部に入ることにして放課後に道場へ行った。

入部したいと告げたら戸惑うと困るからって練習の最初と

最後にする礼のしかたと神棚への二礼二拍一礼の作法から

教えてくれた。練習が始まるとこれからのスケジュールを

ざっと話してくれた。的を射るまで2月はかかること、その前

に巻藁に矢を射るまで1月半くらい、それまでは形の練習や

ゴム弓を使った練習になるそうだ。

練習前に弓保険に加入するので住所氏名を記入してから練習が

始まった。

ふむふむ・・・呼吸法は共通してる、両足を真横に揃う形で

開いて軽く筋力を張ってリラックスした態勢で動作をするのも

共通してるかな。


「しばらく何をやってるのか分からないと思うけど、実際に

弓を持ったときに余計な力が入らない姿勢を会得してもらうので

地味だけど頑張ってください」


主将が1人ずつ細かい修正をしながら声をかける。二年生も自分の

練習を交代でしながら教えてるから忙しそう。教える人数と教わる

人数が違いすぎるのかもしれない。


「主将、ちょっと・・・」


この前説明してくれた3年生が主将を離れたところへ呼んで何か話してる。

戻ってくると1年生が集合させられた。


「どうしてこの練習させるかの理由ですけどね、山口君だったっけ、

ちょっと前へ出てきて」


体格のいい男子の1年生が前に呼ばれた。


「これ、私が使ってる弓。ちょっと素引きしてみて。弦を離す前までで戻して」


「足踏みから胴造り・・そうそう・・」


引き下ろし始めてからぶるぶる震えだした。引ききって会まできたけど不安定で

震えてる。やっぱり無理みたい


「はい、戻していいよ。実際に引くと全然違うでしょ?」


「こんな強い弓を先輩使ってるんですか?とても引けないです」


「実際、男子の使ってるのはこれより強いから。身体を入れるとか実際に持たないと

感覚が掴めないことも多いけど、まったくの初心者だからそれ以前なのよ。そこらを

最初の段階として習得してもらいます。明日から実際に弓を持ったり、ゴム弓で

離れの練習も少し入れますが、何も持たないほうが直すの簡単だからこの練習は

引退まで量はすくなくなってもやる必要のあることです。滝沢さん引いてみる?」


いきなりこちらへ話を振られた。


「やってみます」


足踏み・・胴造り・・構え・・立ち上げ・・引き下ろし・・

同時に同じ力で引き降ろすのって難しい。右手が肩で受け止めてるのが

よく分かる。


「はぁ・・やっぱり無理です」


じっと見ていた主将がちょっと驚いた顔をしていたけどヘマしたのかな?。


「弓手(左手)は手の内覚えれば大丈夫、活手(右手)は肩が詰まってるから

そこらへんを直さないとね。それじゃ解散。練習に戻って」


一日目の練習はこうして終わった。

帰りの地下鉄が同じ方向の片野さんと一緒なのが分かって一安心。

喋りながら乗る。彼女のほうが駅で3つ先だから先に地下鉄を降りる

ことになるはずだけどどこかの高校生3人組が声をかけてきた。


「ねーねー、どこの高校?これから遊びに行かない?」


眉毛きれいに揃えてイケメンのつもりなんだろうけどどう見ても

頭悪そうにしか見えないんですケド。当然シカト。

それにしてもよく喋る男達だ。こんなのに付いていく子っているのかな?

いないから声かけて歩いてるんだろうけど、気が付かないんだろうな。

どちらかが一人になって付き纏われるのも嫌だから彼女に囁く。


「駅から10分かからないで家に着くし途中交番もあるからうち寄ってお茶しよ」


彼女が頷いたのを確認していつもの駅で降りる。しつこいなぁ・・ぺらぺら喋りながら

まだついてくる。大学に沿って大通りを歩いて次の交差点を左に曲がるんだけど

こっちからは死角になるなる場所に・・・あと5メートル・・・


「遊びに行こうぜ~」


馬鹿丸出しの猫撫で声出しながら人の肩を掴んで引きとめようとした瞬間角を曲がって


「止めてくださいっ」


大声を出した目の前には交番があってそこで立哨してるお巡りさんの目には女の子を

無理やり引っ張ってる高校生の姿が。同時に高校生の目には女子高生の声で

警戒モードに突入した警察官の姿が・・・ダッシュで交番に突入する。


「地下鉄からずっと付き纏われてますっ。今、拉致されそうになりましたっ」


お巡りさんの顔色が変わって


「待たんかい。ゴルァ!」


3馬鹿が蜘蛛の子散らすみたいに逃げ出した。一人ポケットから何か落としながら

逃げてったけど・・お巡りさんが追跡を諦めて拾いあげる。ん?iphone?

液晶の割れた携帯を机に置いてお巡りさんがこちらを向く。


「大丈夫ですか?」


「ありがとうございます。地下鉄の車内で絡まれて駅からこの交番まで

付き纏われたんで助かりました」


「もし、今後も付き纏われるようだったら相談してください。今回は

携帯という証拠があるから取りにきたら説教しときますから」


「滝沢貴美と申します携帯番号は・・で住所は・・・・ですので

事情聴取が必要でしたらご連絡ください。ありがとうございました。

では失礼します」


坂を下りながら家に向かってるけど片野さんは展開が早すぎて固まってる。


「度胸があるというか・・凄いんだー」


「そんなことないよ。交番があるのは知ってたし、何も無くても付き纏われて

困ってますって駆け込むつもりだったんだ。肩掴まれたから叫んだけど

電車の中で分かれるとどっちかに付き纏いそうだからお茶に誘ったの。」


家に着いてドアを開けるとみーちゃんがお迎えに出てきた。にゃぁと鳴いて

片野さんを見て小首を傾げる。


「ただいまー」


「失礼します」


「お帰りなさい・・あら、お友達?」


「帰りに赫々云々・・・・」


亜美さんが夕飯の支度しているところへ帰ってきたみたい。


「大変だったのねぇ・・・コーヒー、紅茶どっち?お父さんが

昨日ザッハトルテ作ったから食べられるよ。片野さん、チョコレート

と甘みが強いケーキだけど大丈夫かな?」


「紅茶で。ケーキは何でも食べられます!お父さんが作ったって

パテシェなんですか?」


苦笑しながら亜美さんが答える


「違うけど、私は下手なケーキ屋より腕がいいと思ってる。

趣味というか・・何か考えをまとめる時や逆に何も考えたくない

ときに作るのよね。ある種の精神安定動作・・かなぁ。

とりあえず食べてみて」


ザッハトルテにお約束の甘さ控えめ生クリームが添えられて出てきた。

うん、美味。濃厚なチョコレートとジャムにクリームが良く合う。


「美味しいですねー、市販のより絶対美味しい!」


片野さんが絶賛してくれた。


「そろそろ失礼しないと・・門限うるさいんですよ」


「ただいま」


伯父が帰ってきた。


「ん?友達が来てるのかな?いらっしゃい」


今日の経緯と門限をかいつまんで話すと


「片野さんの家は西ヶ原あたりになるのかな?よければ車で送りますよ。

10分もかからないでしょうし、門限の件も私と貴美が同行してストーカー

まがいの説明とお礼とご挨拶すれば大丈夫でしょう」


「ありがとうございます。家に電話してから帰らせていただきます」


『もしもし、お母さん?うん・・帰りに変なのに付き纏われて・・・』


「あれ出してくる。すぐ戻るから」


あれ?由美さんのゴルフなら車庫にあったけどあれって??


片野さんの電話が終わった頃に伯父が戻ってきた。


「行くよー」


家の前に濃いグリーンの大きなセダンが停まってる。


「これ、俺の車ね。2年で2000キロしか走ってないけど。さ、2人とも

乗って。亜美、夕飯よろしく。30分位で戻るから」


恐ろしくスムーズに走る車だな。伯父の運転もあるんだろうけど

まったく興味が無いから分からないけど車が大きいせいかな。


「あのう・・これジャガーですか?」


片野さんが聞く。聞いたことがある名前だけど何?


「そう。ジャガーですよ」


伯父が答えた


「初めて乗りました。兄に言ったら羨ましがります」


「ジャガーって車の名前?この車東京に来て今日初めて乗った

けど滑るように走るんですねー」


「あのねぇ・・イギリスの高級車だよ。車に興味なくても名前

は知ってるでしょ?」


「名前は知ってても見分けつかないもん」


「別に車の名前なんて興味なければ覚えることもないよ」


彼女の家の前にハザードをつけたまま停車して私と伯父も同行して

玄関で片野さんのお母さんに挨拶する。伯父がかいつまんで出来事を

伝えてお礼をしてくれた。私も頭を下げる。あちらも恐縮していたけど

玄関先で失礼してきた。

戻りの車の中で片野さんのお母さんと本人の話になるのは当然で・・


「ところで彼女はクラスメート?」


「クラスは違いますよ。報告遅れたけど弓道部に入部したんで同期です」


伯父が一瞬ハンドルを握る手に力を込めたらしく車の挙動が変わった。


「そっか・・歳の離れた双子の姉でOGがいないか聞かれるかもしれないけど

正直にいないとだけ答えてね」


「え?姉いないですけど?」


「近くに双子いるでしょ?あれ、部の先輩だし、私もそう」


「えーっ!だから高校の部活何か教えてくれなかったんだ・・・」


「でも、自分で決めることだしその判断に口を挟むのはやるべきでなかったから

黙ってたんだよ。悪い選択ではないと思うけど、現役やOB,OGに余計な

気を使わせることもないから」


家に帰ると伯父が亜美さんに一言


「弓道部だって」


亜美さんは手を叩きながら笑ってる。伯父がかばんから週刊朝目を取り出して


「ここに載ってる。綺麗に撮れてるね、さすがプロというか表情を引き出すのが

上手いわ。」


いやいやいやいや・・これ奇跡の写真でしょー、顔が写ってるのは2枚だけど

表情が全然違うから別人にしか見えない。着てる服もミッション系女子高の

制服だから雰囲気違う。テーマが女子高生の制服図鑑だから問題ないか。


「大人向けというか、中高年向け雑誌を高校生が読むとも思えないからバレない

んじゃないですかね?」


「何とも言えないなぁ・・写真と実物を直に比べれば気がつくけど意識して

そんなことしないのが普通だわな。悪いことした訳でもないから黙ってれば?」


夕飯の後、電話番しながら昔の部活や今日の付き纏った男子の話になった。

制服の区別がつかないけどどこの学校だったんだろう?同じ電車に乗り合わせる

可能性もあるんだよな・・考えてもしょうがないか。


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