承前
「ふぅ・・さ、入って」
「お邪魔します」
玄関の扉を開けて伯父さんが入るように促した。以前に訪れたことはあるらしいけど自分の記憶には無い場所。
来る途中の動物病院で引き取った三毛猫が部屋に放されてけげんな顔でこちらを見る。
「亜美、由美、着替えたらお風呂頼む。それととりあえずお客用の布団、奥の部屋に敷いておいてあげて」
「「はーい」」
「貴美ちゃんは座ってて」
『もしもし、裏の滝沢ですけどお刺身お任せで4人前、上にぎり4人前、ねぎとろ巻2本お願いします』
電話を切ると伯父は祭壇を組み立て、私の両親の遺骨を安置して蝋燭に火をつけた。無言で促す伯父
お線香を立てて手を合わせる。伯父も拝んで、従姉妹の2人も続く。
「先にお風呂入って。シャンプーとかは娘に聞いて、ドライヤーは洗面所の突き当たりに据置のがあるから」
「着替えは脱衣所に置いとくね 洗濯物は横の袋、、部屋着は私の使ってくれれば。パジャマはお布団の脇にあるから」
「あの・・私が先でいいんですか?」
「ん?全然構わないよ。出前来るまで少しかかるし、明日からの仕事の打ち合わせもあるから」
「それではお先に使わせていただきます」
湯船に浸かって目を閉じる。悪夢のような1週間が頭の中でループを始めた。
学校から帰ったら家が全壊していて消防車が何台も止まっていた景色。伯父がやってくるまで
警察署の一部屋でじっと待っていた景色。ドアが開いて黒いコートを着た伯父を見た後は景色が
ぼやけてよく覚えていない。『黙って座ってろ』と言われてお通夜も告別式も荼毘に付すときも
紗がかかったような現実ではないような気がしている。
はてさて・・どうなりますやら




