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邂逅

三話です

宜しくお願いします。

 それからというもの今宮は部活帰りに俺を自身の神社に連れて行っては祈祷をしてくれる。


「あらたま、みたま、はらえたまえ、きよめたまえ……」


 電気も点けない薄暗い部屋の中で、火を前にして今宮は正座をし、呪文を唱えながら大幣(おおぬさ)を振る。

 ※大幣(おおぬさ)……神主などがお祓い時に使う棒のこと。


「本日はこれにて終了です」

「ありがとうございました」

「すみません。私自身、呪力が弱いものですから、時間をかけないとしっかりお祓い出来ないのです」

「いや、ゆっくりしてくれて全然良いよ」

「ありがとうございます」


 それからしばらくして最近部活帰りに俺と今宮とがよく一緒にいるところを周りに目撃されるようになる。

 付き合ってる訳ではないから周りに説明したら分かってくれるが、これではいけない。しなければならないことがあると思って俺は一大決心をする。


「別れてくれ」

「……は?」


 下校中の道端で俺は笑里に別れ話を切り出した。笑里はきょとんとした顔になる。いや、なんでだよ?


「嫌よ。なんで別れるのよ」

「そりゃあお前、俺に隠れてこそこそと他の男と浮気したからだろ!?」

「あれは違うの。そいつとは単なる遊びの関係で! 私の好きな人は昔も今もコージ、貴方だけよ」

「あ……遊びであってもだな、恋人がいるならあんなに他の男とイチャイチャしたらダメだろ!?」

「じゃあ例えばさ、コージは猫飼ってるけどさ、その子と家ではイチャつかないの?」

「え?」

「イチャつくでしょ?」

「そりゃあ可愛いペットだから、イチャつくのは当たり前だろ?」

「それと一緒よ! 私という恋人がありながらも他の子とイチャつくでしょ? それと一緒!」

「………」

「私はそれが人間という生き物だっただけ。恋人とかそういうんじゃなくて、単に可愛がってる遊び相手よ」

「???」


 はっ、そんな言い訳通用するわけないだろ? ここは毅然と言い返さねば!


「そんなこと……あるわけ…ないだろ?」


 ダメだーー!! こいつに言い返そうとするとまた尻込みしてしまうー! いつもそうなんだよなあ、昔からそう。なんか言い返そうとするとついビビっちまう。


「別れてほんとうに良いの?」

「え?」

「貴方の良い面、悪い面をここまで知り尽くしてるのは私だけよ。これほどまでに貴方を知ってる女性は後にも先にも私しかいないわ」

「……」

「貴方が小4の時、クラスでう○こ漏らしてイジメられた時も助けたのは私だった」

「……」

「中二の時にイジメが原因でクラスで大泣きしても、励まして貴方を支えてきたのは私だった」

「……」

「色んなことがあっても、いつも貴方のそばにいたのはいつも私でしょ?」

「……」

「そんな女を手放すの? それで貴方は本当に良いの?」

「……」


 昔あったことを俺は目の前の出来事のように鮮明に思い出す。そう確かにいつも助けてくれたのは君だった。辛いとき、嫌な時でもいつも俺の近くには君がいた。それでも、それでも……、


「とにかくお前とは別れるんだ!!」


◇◇◇


「はあ……」


 笑里と別れ話を終えて、俺は一人帰路をぶらぶらと歩く。あまりにもフラフラと歩きすぎて警察に補導されるところだった。

 勢いあまって幼馴染をフッたのだが、若干後悔している自分もいる。これでよかったのか、と。確かに今までここまで支えてくれた相手がいただろうか。二度と俺の前にそういう相手が現れなかったらどうしよう……。不安が募る。

 そして家に着く少し前にスマホが揺れる。今宮からの連絡だ。


『今日は神社には来れますか??』

「あ……」


 そうだった! 別れ話をして神社に寄る予定だったのだがすっかり忘れてた!


『ごめん! 今すぐ行く』


 そうして俺は急いで今宮の神社に向かった。


「ごめん、遅くなった!!」

「いえ、大丈夫ですよ」

「今からでも間に合うか?」

「はい、今からでも問題ありま………」

「コージにしてはやたら強気だったなと思ってたら、こんな可愛らしい()()()()がくっ付いていたなんてねっ」


 そう、俺の後ろには笑里が腕を組んでニヤリと笑っていたのだった。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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