新しい運命
二話です
宜しくお願いします
今目の前に起こっている出来事がまだ信じられずにいる。夢か幻か、夢なら悪夢。幻なら悪い冗談だ。
俺の唇は強ばってブルブルと震えている。怒りというかあまりの意味の分からなさに少し恐怖を抱いている感じ。
笑里は愉しそうに隣の男と手を繋ぐ。アイスクリームか何かだろうか。ジェラートかな?二人とも繋いでいない方の手でコーンを携えている。あ、二人仲良く食べた。美味しそうに食べてアイコンタクトしては二人してハニカむ。あ、お互いにアイスを食べさそうとしてる。あれでは間接キ……。
「…! コージ?」
「え?」
目の前の二人がこっちを見て驚いている。俺は気づけば向かい側の歩道に渡って、二人の前にいた。いてもたっても居られずに来たようだ。
「あ、いや……その………」
「どうしてコージが……ここに?」
「こ……友人とたまたまここまで散歩してたんだ」
「………」
否定して……。
「それより笑里もどうしてここに? 美味しそうなアイスを食べてさ」
「………」
否定してくれ……。
「まだそんなに溶けてないということは、この近くにでもあるのか。美味しそうだな、俺にも教えてくれよ」
「………」
頼むから………。
「男と手を繋いでどうした? どっちかが脚のケガでもしてるのか?」
頼むから………否定してく………。
「ゴメン……二股してた」
俺の時計は止まった。そこからの記憶は残っていない。気づけば橋のたもとに呆然と浅川を眺めていた。
「………」
今何時だ? まだ明るいが雲に隠れて分からない。
ポタ、ポタ、ザー、ザーー。
大ぶりの雨が降る。上を見ると真っ暗の雲が上空にある。
「………」
パシャ、パシャと後ろから足音が聞こえる。しばらく無言でいると、俺の上に傘をそっとさしてくれる。
「先輩、このままだと風邪をひきますよ」
「今宮か」
「はい」
「………。川西はどうした?」
「先輩は走って行った後、そのままそっと帰っていきました」
「……そうか」
ザーザーザー。
大ぶりの雨で周りの音がよく聞こえない。せいぜい今宮のカタカタと小さく震える手の音ぐらいだ。
「………なあ、今宮」
「はい」
「お前…どこまで“視えてた”んだ?」
「えと、遠くから歩いてくるのをぼやっと面影でなんとなくです」
「お前、何か“視える”だろ?」
「!」
「大会の時もそうだ。何もないところでも、何か見て、びくっとしてる時があったから」
「……」
「何が視えるんだ……?」
「……微弱なのですが、人の気の流れみたいなのが少し…」
「……そうか」
「本当に大したことはありません。何か企んでる人なら気が黒く視えたり、今日の運が悪いならその人の良くない相が視えたり」
「……」
俺は黙って今宮の話を訊く。神社の娘だからか幼少期からそういう能力が少しだけあって、子供の頃はそれで色々と苦労したらしい。
「あの、この話は誰にも話したことがないので、出来れば口外しないで頂ければ大変助かります」
「ああ、分かった。それより………」
俺はクルッと彼女の方を向く。今宮は珍しくビクッとした顔だ。
「俺の顔に変な気でもついているのか?」
「い、いえ……そんなことは……」
「じゃあなんで驚いた?」
「……目が腫れて、すごく真っ赤になっていますから」
「……そうだろうな。涙が枯れるまで泣いたのっていつ振りだろう」
「……」
今宮は黙って俺の情けない独り言を聞いては俺に傘をさしている。
「……で、今回のは何で視たんだ? 予知能力もあるのか?」
「いや……そこまでは。ただ偶に予知夢的なのは視ますね。外れる時もあるので、絶対とは言えません」
「今回もそれか?」
「はい。ぼや~っと風景を含めた輪郭だけですが」
「そ…か……」
俺は黙って目を瞑る。意識しながら呼吸をする。深い深呼吸だ。
「なあ、今宮」
「はい?」
「俺の相には何がついている?」
「……え?」
「顔の相に」
「悪い相です。特に女難の相が今すごくついてます」
「……そか」
「……」
そして俺は誰かが憑依したかのように、橋の欄干に走って川に向かって大声で叫びまくった。
「せ、先輩!?」
「はあはあはあ……。あー、すっきりした~」
「……」
「女難の相が出てるのかー。くそ~、どうすればその相がなくなるんだー? 何年経てば消えてなくなるんだー!?」
「一つだけ少し早く無くす方法はありますよ、先輩」
「え!? そうなのか!? それは一体なんだ!?」
「時間は少しかかりますが、私が先輩のおそばで、先輩についている厄災を祓い続けるのです」
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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