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浮気現場

新連載です。

宜しくお願いします。

 俺は今村恒二(こうじ)御年16歳。県立の高校に通ういたって普通の高校生。だがそんな俺には幼馴染でかつ恋人関係の同級生がおり、彼女といつも幸せに過ごしている。俺の高校生活は平和で、荒波も立たない平穏そのもの! まさに順風満帆だ。


「彼女が浮気をしているらしい」


 そう聞いたのは、先日の放課後の1階の廊下でだ。俺はいきなりのことで頭の中が無の境地に到達した。


「はえ~?」


 変な声が出る。まさか、そんな……。いや、そんなことある訳ないだろ!? 俺は昔からあいつのことをよく知ってる!! 俺をイジることはよくあれど、裏切るようなことはしない! 俺は見る見るうちに怒りがこみ上げた。


「そんな根も葉もない話、俺の前で二度とすんな!」


 友達にそう無下に言って俺はそそくさと部活に行くのだった。

 そして今日の朝、俺の彼女の村雲(むらくも)笑里(えり)と一緒に登校する。小学校から同じ学校だから家も近いのだ。

 彼女は少し茶色がかったショートヘアで、身長も170cm、胸もD以上(推定)と色々ボリューミー。因みにお尻も大きい。性格は明るくて、友達には色々とちょっかい出すタイプ。

 殊に俺にはよくイジりをいれてくる。小学校の時からそうだ。すべり台の滑る台を登ってたら、横から大声出したり、脇腹をさすさすしたり。

 そんなやつが──俺に喜んで笑顔を向けるあいつが──浮気なんてするはずないだろ……。


「どうしたのコージ? 元気ないじゃない」


 笑里が心配そうに声をかける。


「え? いや、うん……」


 明らかに曇ってる顔になってしまった。どうしよう。デマと分かっていても、なんか気持ちが落ち込む。


「あ、そうそう。そういえばこの前さ~友達とまた市内にある美味しいパフェを食べに行ったのよー」

「ほう、それは気になる話」


 気を利かせて俺の好きな食事の話をしてくれる。なかなかの長蛇の列で、買うのに10分ほどかかったそう。抹茶パフェを買ったらしい。クリームも甘すぎず、抹茶も苦すぎず、全体的にまろやかな舌触りに上品な甘さと苦みがうまくマッチしていたという。

 よほどの店だ。かなり美味かったのだろう。


「今度食べに行こうね」

「おう」


 彼女はとても嬉しそうに言う。その表情を見たら、落ち込んだ気持ちなぞどこ吹く風である。

 浮気なんてあり得ない。

 それから数日経った日のこと。部活帰りに後輩から声をかけられた。


「先輩」

「おー、今宮か」


 彼女は今宮結衣。俺の部活の後輩で、女子団体のレギュラーポジである。黒髪長髪でキリッとした目。顔は整っていて、体は少し小柄のおっとりした性格。部活中に仲良く話しあう気の合う俺の自慢の後輩である。

 そんな彼女が珍しく部活外で話をしに来た。


「どうした珍しいな。何か話か」

「はい。先輩にしか出来ないご相談です」

「うん。何だ?」

「兄にプレゼントを贈りたいのですが、何が良いか分かりません。ですから男子の意見を聞きたいので、明日の土曜日、部活終わりに一緒に買い物をお願いします」

「嬉しい相談だが、俺は恋人がいるからそういう訳には……」

「心配しないで下さい。ですからもう一人男子を呼んでます」

「? ………川西」


 川西は俺の友だち………いや、悪友だ。


「こんな可愛らしい後輩に声をかけられたら、断れないよね。ねー、結衣ちゃん♡」

「近よらないで下さい。鬱陶しい」

「……」


 こうして俺たち三人は土曜日に市内へショッピングに出かけるのであった。

 そしてショッピング当日。予定時間の5分前に集合すると、もう二人が待っていた。


「お待たせ~! 二人とも早いな~」

「早いな恒二ぃ。あとちょっとで結衣ちゃんの好きピになれたのに~」

「なれてません」

「二人は何分前に来てたんだ?」

「私は10分前に来たところです」

「俺も結衣ちゃんと一緒ぐらいだぜ~~」

「嘘はダメですよ」


 今宮は川西の腕をギュッとつねる。


「痛てっ!? 酷いよー結衣ちゃ~ん。俺は25分前~~っ」

「早ぇ~」


 二人ともなんでそんなに早いんだ?? 遠足行く前の園児気分とかか??

 そう疑問を感じながら、三人で今宮のお兄さんのプレゼントを考えるのであった。

 そして刻が経つのは早いもので、プレゼントを決める頃にはもう2時間が経つ。


「ありがとうございました。先輩達には感謝します」

「いや、たいしたことはしてないよ」

「そうだよ! でももし感謝してるなら、俺に熱~いハグーー………」


 川西のバカをよそに今宮は周りをキョロキョロと見ている。


「どうかしたか今宮?」

「いえ、別に……」


 何か気になるものでもあるのか? 俺も周りを見るがそれらしいものはない。


「もう少し街をぶらぶらしませんか?」

「? 良いけど……」


 それから20分歩くも彼女が探すものはなかった。


「結衣ちゃん歩くの疲れたよ~。どこかで休憩しようよ~」

「どこでも一人で休憩して行って下さい」

「えー、つれないなあ~。でもそんな結衣ちゃんが、好・き・♡」

「……しかし今宮。川西じゃないが俺も大分ヘトヘトだ。どこかで休まないと足にマメが出来そうだ」

「……」


 今宮はこちらを向いて眉を下げて立ち止まる。う~んと考えながら何か思案をする。俺は上を向き空を見る。青々とした空にアイスクリームのような大きい入道雲が二つ、近くに寄り添っていた。

 雲の下は真っ黒い。雨でも降るのかな。大分距離があるから、まあしばらくは大丈夫だろう。

 その時だった。


「二人とも隠れて!!」


 押し殺した小声で殺気だった今宮が俺たちを草むらの方へ誘導する。なんだ、なんだと疑心暗鬼になりながら、隠れると向かいの道に笑里を目撃した。他の男子と手を繋いで笑いながら。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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