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地獄まんが道 ートキワ荘の青春ー  作者: ロッドユール
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富山県

「二人はどこから来たの?」

 美咲さんが不二尾藤子の二人に訊く。

「富山の高岡です」

 我孫留不二子の二人が二人同時に答える。

「へぇ~」

「富山かぁ」

 みんな口々声を上げる。

「・・・」

 しかし、その後、会話が続かず、僕たちは全員沈黙する。

「富山って・・」

 僕も言葉に詰まる。

「・・・」

 誰しもが、富山について何も思い浮かばなかった。

「富山の薬売りとか」

 守也氏がそんな沈黙を破り言った。

「ああ」

 みんなとりあえずうなずく。それはみんな知っている。

「・・・」

 しかし、そこでまた沈黙――。それ以上、やはり誰も何も思い浮かばない。

「ていうか富山ってどこでしたっけ」

 赤木氏が隣りの僕を見て言った。

「えっ?僕?」

 僕は驚いて赤木氏を見返す。

「・・・」

 僕は東京からまったく出たことがない。修学旅行で京都と沖縄に行ったくらいだ。

「何言ってんのよ」

 そこで、美咲さんが呆れたように言った。

「えっ、美咲さん知ってるんですか」 

 僕たちは美咲さんを見る。

「富山は東北でしょ」

「あっ、そうなんですか」

 僕と赤木氏は驚いて反応する。

「知らなかったなぁ」

「違うでしょ」

 だが、その時、守也氏がすかさずツッコんだ。

「違うと思いますよ」

「じゃあ、どこなのよ」

 美咲さんが守也氏を睨むように見る。

「・・・」

 守也氏沈黙。

「ほらみなさい」

「いや、でも、東北じゃないですよ」

「そうだったかしら」

「僕も東北ではない気がします」

 僕も言った。

「じゃあ、どこなのよ」

「・・・」

 それには、僕も守也氏も答えられない。

「ていうか本人に聞けばいいじゃないですか」

 赤木氏が言った。

「あっ、そうか」

 僕は顔を上げた。そして、みんなで藤尾不二子の二人を見る。

「東北じゃないです」

 二人は笑いながら答えた。

「やっぱりほら」

 守也氏は、勝ち誇ったように美咲さんを見る。美咲さんはばつが悪そうにそんな守也氏から目を反らす。

「そうだったかしら」

 そして、などと言って、美咲さんは誤魔化す。

「北陸です」

 藤尾不二子の二人が言った。

「似たようなもんじゃない」

 まだ美咲さんは間違いを認めようとしない。

「いや、全然違いますよ」

 そんな美咲さんに守也氏がツッコむ。そこでみんな笑った。

「ていうか何でこんなことで盛り上がってんですか」

 僕がツッコむ。

「いいんです。大体どこもそんなリアクションですから」

 二人は笑う。

「はははっ、そうだね」

「何にもないですから」

 そして、みんなで笑った。

「じゃあ、美咲さんも来たし、あらためて乾杯しようか」

「そうですね」

 そう守也氏が言うと、みんなうなずいた。

「じゃあ、二人を歓迎してかんぱ~い」

「かんぱ~い」

 みんなのその元気いっぱいな声が部屋いっぱいに広がる。君子さんはライバルと言っていたが、でも、仲間が増えることは、やっぱり、うれしいことだった。

「私たち東京楽しみにしていたんです」

 藤尾不二子の二人が言った。

「そうなんだ。何で?」

 僕が訊いた。

「ラーメンがおいしいって」

「そこ・・?」

「はい、ラーメンがおいしいって、色々雑誌も見てたんです」

「ラーメンが好きなんだ」

 美咲さんが言う。

「はい」

 二人はうれしそうに答える。

「じゃあ、松葉に明日みんなで行こうか」

 守也氏が言った。

「いいですね」

 みんな賛同する。

「私もちゃんと誘うのよ」

 美咲さんが守也氏を睨むようにして見る。

「大丈夫ですよ」

 守也氏は、その迫力にたじろぎながら答える。

「本当でしょうね」

「本当ですよ」

 その守也氏のタジタジな姿にみんな笑う。

「ていうか、美咲さんいないとラーメン食べれないんじゃない」

 赤木氏が言った。

「何で?」

 僕が訊く。

「みんなお金ないもの」

「そうか」

「そういう時だけ、ちゃんと誘うのよね」

 そう不満そうに美咲さんはチューダーをすすりながら言うと、その姿にまたみんな笑った。

「ごちそうになります」

 そして、みんなで美咲さんに向かって頭を下げた。

「しょうがないわねぇ」

 仕方がないというような苦渋の表情を浮かべながらも、どこかうれしそうな美咲さんだった。そこはやはり姐御肌の気質で、みんなから頼られるとうれしいらしい。

 その日は、夜中まで、いつもの赤木氏特製のキャベツ炒めとチューダーでみんなで飲み明かした。

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