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十一

 王様は顎を手でさすりながら、私と伯爵様を見比べて面白そうに笑う。


「ほう、これは伯爵そっくりではないか。しかし聞いた話によると伯爵の子ではないそうだが、本当か?」

「ええ、私の子ではございません」


 そう言った伯爵様に、疑いのまなざしを向けるのは皇太后さまだ。


「その言葉、本当ですか?」

「ええ」

「証拠は?」

「私はオリビア一筋でございますから」

「……伯爵はこう言っておりますが、オリビアはどうですか?」

「わたくしは夫を信じています」

「そうですか、それならば私たちの出る幕ではありませんね」


 なんと皇太后さま御一行様は、浮気反対の婦人の会の皆様らしい。

 その会員は過去に夫に浮気をされた方や一夫多妻制に反対する方、種類は違えど、みんな夫大好きな方々の集まりだそうだ。皇太后さまをはじめ、国内の権力者が多数籍を置いていて、国外の王族まで会員がいるそうだ。


 今回、伯爵様が浮気をして外で子供を作ったという噂を聞きつけた皇太后さまが、オリビアさんを呼び出して、このようなことになっているらしい。この浮気反対の婦人の会のすごいところは、その情報網らしく、この会の皆様を敵に回すことは一国を敵に回すよりも恐ろしいのだとか。


 権力者が多いせいか顔出しNGな方もいるようで、中にはベールを被った人や、仮面をつけた人などもいてなんとも怪しい集団である。


「しかし、こんなに伯爵そっくりで、伯爵の子ではないとなると、一体誰の子なのだ」


 王様のその問いに、伯爵様は大きな声で言った。


「この中で、我こそはトリーの親という者はいないか?」


 シーンと静まる場に、私は内心でソワソワしていた。

 だってこの中に私の親がいるのかもしれないのだから。

 なんだか落ち着かない。


 けれど、名乗り出るものはいなかった。


「ちょうどいいことに、ここにはミドルトン家が揃っておる。全員に聞き取り調査を行う」


 ざわざわとするミドルトン家の人々だけれど、王様の意見に誰も反対はしなかった。


 まずはミドルトン家の女性陣。

 女性は産む側なのでわかりやすくて、五年前に妊娠していた人はおらず除外された。


 その後ミドルトン家の男性陣が一人ずつ前に出てくる。


「オリバーは今何歳だ?」

「十二歳です」

「……オリバーは除外していいだろう」


 オリバー君はよかったのだ。五年前に七歳のオリバー君が親ということはあり得ないから。

 けれど、微妙な年齢のブライアン君は違った。


「ブライアンは今十八歳だったか」

「はい」

「五年前は十三歳……なくもない年頃か?」


 その言葉にブライアン君は大きく首を振る。


「いえ、僕はそのような行為はしておりませんので、あり得ません」


 少し顔を赤くしてそう言ったブライアン君は可愛かった。

 浮気反対のご婦人の皆さんがザワザワとするほどの、純情さを見せて終わった。


「一番怪しいのはポール」

「ええ、陛下。俺も自分でそう思いまして、五年前に関係のあった女性に確認してきましたが、違いました」


 その言葉に皇太后さまの隣に控えていた女性がスッと一歩前に出てきた。


「わたくし共の調査によりますと、ポール様は白でございました」

「調査?」

「ええ、ポール様のお相手にその時期に妊娠されていた女性はいませんでした」


 その後もミドルトン家の男性陣が前に出て確認が続けられる。


 私の感想は、すごい、この一言に尽きる。

 なぜならば、浮気反対の夫人の会の方はここにいるみんなの女性関係を調査済みだったのだから。


「しかし、わたくし共の調査をもってしても、確認が取れなかった方がいらっしゃいます」

「ほう……それは誰だ?」

「マイク様でございます。マイク様はいろんな国を旅されておりましたので、全てを把握することは難しく確認がとれておりません」 


 そうは言っても、マイク・ミドルトンさんは六十五歳。

 五年前は既に六十歳だ。

 あり得ないこともないけれど、もう歳だ。

 

 私がそんなことを考えながら、マイクさんに目を向けると、私をじっと見ているではないか。


「マイクどうだ?」


 ハッとしたようにマイクさんは私から王様に視線を逸らした。


「五年前……いや、まさか」


 その一言に、騒めきが広がった。


「心当たりがあるようだな」


 王様のその言葉に、私は内心で驚いていた。


 だって、私のお父さんがマイクさんなら、今私の隣にいる伯爵様とポールさんが私のお兄さんになるのだから。


「陛下、よろしいでしょうか」


 その言葉と共にスッと一歩前に出たのはオリビアさんだった。


「うむ、発言を許可しよう」

「実はここに、トリーの母親が来ております」


 その言葉に私はもちろん、マイクさんも目を丸くしている。


 驚く私を見て、オリビアさんはニコリと笑って一つ頷く。


「こちらへ」


 夫人の集団の中から仮面をつけた女性が前へと出てくる。

 煌びやかなドレスを纏うその人が私のお母さんなんだろうか。


「この方から、わたくし興味深いお話を聞きました」

「ほう、一体どのような話なのだ?」

「はい、トリーの父親であろう男性の特徴は、大柄な体格で、真っ赤な髪の、空色の瞳がきれいな方だったそうです」


 思わずみんながマイクさんに視線を向けている。


 大柄で空色の瞳を持つマイクさんだけど、髪は真っ赤ではない。

 だから人違いなのではと思ったら、当の本人は驚きに目を丸くしていた。


「お義父様、思い当たることはございませんか?」

「……この色ではミドルトンだと言って歩いているようなものだから、髪を染め粉で赤に染めて旅をしていた時期がある」

「そうですってよ、ジェイド」


 え?

 ジェイド?


 今、ジェイドって言った?


 

誤字脱字報告してくださった方ありがとうございます。

感想を書いて下さった方ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ポールさんが良い人。 [気になる点] 結局育ての母が産みの母みたいですね。お金持ちの家に引き取られた方が良いと思ったのかもしれませんが、母親と思っていた人に「自分の子じゃない」と言われるの…
[一言] お、おう幼女に自分を捨てた人といきなり会わせるんだ 幼女に優しく無い世界ですね
[一言] 産んだ人じゃないんか
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