帝王バルド・フォン・ダンテミリオンの提案
「そうか、やはりあそこの駒はその程度だったか」
アザイラム領を貸し与えたのは3代前のことだ、当時の領主はその地で水害が起きた時、機転を利かせて最小限の被害で治めたことを買われ、アザイラム領の王権を貸し与えていた。
「確かに功績は大きかったが、教育にまでは手が回らなかったようだな、しかしその時助けられた民は献身的に領に尽くしていることも確か、どの程度の罪にするのが面白いか……のぉ? フレディよ」
「僕が考えていいんですか? ならワザと昔と同じような水害起こしちゃいますよ」
「ほう? その心は」
「事前に民間……平民にだけ水害のことを教えておいて避難をしてもらうんです、そのあと洪水でも起こしてあとは成り行きです」
「貴様も性格が悪いな、つまり初代領主と同じように水害を治めることが出来るかを民に見せつけて、落としの是非は民が決定するということだな」
「そうです、対策を正しく打てていたのか、胡坐をかいていたのか、はっきりして実に分かりやすい」
「それだけか?」
「いえいえ、帝国がわざわざ直接滅ぼしに行ったら他の領も委縮しちゃうじゃないですか、あくまで傍観していたってことにしたほうが得なだけです」
「面白い……さて、そんな性格の悪い貴様にリリスから手紙が来ておるぞ?」
「性格悪いのはお互い様じゃないですか、昨日だってチェス負けそうになったら台をひっくり返したくせに」
「で? その手紙どういう内容だ?」
「待ってくださいよ、まだ開いてもいない……って蝋が剥がれてるじゃないですか、読んだのバレバレです……なになに?」
『あなたの大好きなパトリシアが大勢の前で婚約破棄されてしまいましたよ? ですが、彼女は後日学友とピクニックに行く約束をしていたようです、彼女が無事に学友とピクニックに行けるよう、頭をひねってあげてください」
帝王陛下が僕を見てニヤニヤしている。
「で? フレディどうすると申していたか?」
「はいはい! 分かりましたよ、僕が行きます。 洪水は予定通り起こしますが街に被害が出ないようにすれば……報酬は?」
「良い良い、貴様とパトリシアで治めるがよい」
「おっしゃ! やる気が出てきましたよ」
本当にこの小僧は余を楽しませてくれるわ。
「では帝王たるこのバルド・フォン・ダンテミリオンが知性学者フレデリック・ハイデマンに命ずる、パトリシアとのピクニックを無事遂行せよ」
「かっしこまりましたあ!」