表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/46

用事があると帰った僕。実は暴言Vtuberの配信を荒らします(1)

始めまして謎サト氏です。

今回は主人公とその他もろもろの紹介です

では、どうぞ

 北海道札幌市の外れに近い地区に位置する(かしわ)高校。僕、五味(ごみ)陽人はこの学校の二年生。五つの味と書いて五味、陽の人と書いて陽人。容姿は普通。一年生の頃から先生の手伝いを積極的にし、困っている人がいたら老若男女関係なしに手を差し伸べてきた。故に付いた異名が男女分け隔てなく愛せる男


陽人(はると)ー、今日どっか寄ってかね?」

「陽人君、デートしようよ!」

「あっ! ズルい! 陽人はアタシとデートするの!」


 雪が解け切ってない四月の放課後の教室。僕の席に野次馬の如く多くの同級生が集まっていた。自慢だけどこれでもクラスのトップカーストだから無碍にはできない。


「ごめん、今日は用事があるから無理なんだ」


 僕は丁重に同級生の誘いを断った。いつもは断らないけど、今日は()()()。寄り道なんてしてる暇はない


「え~! 陽人君と遊びたかった~!」

「せっかく美味しいパフェがあるお店見つけたのにぃ~!」

「あ、あはは……ごめんね? 別の日だったら付き合うから。ね? 今日のところは許して?」

「用事があるなら仕方ねーか。次は絶対だからな!」

「うん! 次は絶対行くよ」


 女子二人は不満そうだったけど、男子の方は納得してくれてよかった。最後にもう一度同級生達に平謝りして僕は教室を後にした。





 家に帰り、ただいまも言わず足早に三階の自室の屋根裏部屋へ駆け込んだ。部屋に入り、後ろ手で鍵をかけると持っていたカバンをベッドに放り投げ、着替えもせずにパソコンへ向かい、電源を入れた


「今日もやりますか」


 パスワードを入力すると五分経たないうちにホーム画面が表示され、ブラウザを開く。ブックマークからUWОのログイン画面にアクセスした。


 UWО────通称ユニバース・ウォー・オンライン。ロボットを使用した戦争をテーマにしたPC用オンラインゲーム。後は普通のネトゲと同じ。アカウント作るのは無料でログインにはIDとパスワードが必要。一部武器やアイテムは課金しないといけない。活動可能なエリアは宇宙全体と各星々と範囲が広い。残りは追々説明するよ


 ログイン画面からIDとパスワードを入れるとホーム画面に僕の使用してる竜人型の機体と500のランク表示が現れる。ゲームの準備は完了。続けて別タブを開き、ブックマークから今度はVIDEO・POST(ビデオ・ポスト)という動画投稿サイトをクリックし、“アンジュ”と検索をかける。一番上に出てきた“アンジュの部屋”ってチャンネルを開いて一通り準備完了したところで時間を確認すると時刻は十七時


「時間まで大分あるな……」


 時間まで暇を持て余した僕は制服を脱ぎ捨て、部屋着に着替えると飲み物とお菓子を取りに一階へ降りた。




 一階へ降り、リビングに入るとパソコンで作業をしているスーツ姿の義母さんがいた。私服姿で黙っていれば女子高生にしか見えない彼女。スーツを着てるから辛うじて就活中の大学生に見えなくもない。僕は邪魔しないようにそっとキッチンへ行き、冷蔵庫から1リットルペットボトルのオレンジジュースを、戸棚からポテチを取り出し、入った時と同じようにしてリビングを出ようとした。


「帰って来たならただいまくらい言ってほしいな」


 と背後から義母さんからお叱りの声が掛かった。


「義母さん仕事中だったでしょ? 邪魔しちゃ悪いと思ってね」

「仕事中でも息子におかえりくらいは言いたいよ」

「ごめん、次からは気を付けるよ」

「うん」


 僕は義母の注意を適当に返し、自室へと戻った




 自室へ戻り、帰って来た時と同じく後ろ手でドアに鍵を掛け、ジュースとポテチをわきに置いてパソコンへ向かい、時間を確認する


「十七時五分か……」


 十七時五分。始まるのは十七時半からだから後二十五分ある。ユニバース・ウォー・オンラインに潜ってもいいんだけど、そうすると()()ができなくなってしまう。


「リビングは……義母さんがいるしなぁ……」


 義母さんは嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、一緒にいたくもない。当然、あの人達とも。悩んだ結果、椅子に身体を預け、目を閉じて瞑想する事にした。




 瞑想を始めてしばらく。時間を確認すると画面には17:20と表示されていた。どうやら瞑想を始めてから十五分が経過していたようだ


「後五分……」


 僕は部屋の隅にある箱からヘッドホンとマイクを取り出し、パソコンに接続。一度ブラウザを最小化し、デスクトップにあるボイスチェンジャーのアイコンをクリック。エフェクトから男性を選択し、ブラウザを元へ戻した


「ちょうどいい時間だね」


 全ての準備が完了し、時間を見ると十七時半。アンジュの部屋タブを開いて再度読み込みをかけた。チャンネルのホームにリアル配信のマークがある動画が現れた。


「今日も楽しませてよね。ピエロさん」


 リアル配信の動画を開くと……


 “準備中……ごめんね(´;ω;`)もう少し待っててね♡”


 という明らかに人をバカにしてる一文とペコペコ頭を下げるGIFに毛が生えた程度の水着姿で明らかに男を誘ってるような立ち絵が表示され、チャットログの方に目を向けるとコメントがいくつか書き込まれていた。こんな低クオリティの絵でVTuberと言っていいのかな……


「少し待とう」


 時間キッカリに始めてよと毒づきながら僕はヘッドホンを付け、配信開始を待った



 待つ事六分。文と立ち絵が消え、ゲーム画面が表示されるも配信主は喋らない。その一分後────


『はろ~、アンジュだよ~♡ 開始前からコメントありがちゅ~♡』


 やっと主が喋りだした。


「やっとか……」


 SNSには“17:30~配信♡ 見に来てね♡”と告知があった。だけど、実際始まった時間は十七時三十七分。少し……いや、かなり遅い。仕事じゃないから時間ピッタリじゃなくても文句を言う人は一人もいない。コメ欄には“こんちは” “早いね” “待ってました!” 等の肯定的なものが次々に書き込まれていた。


『コメしてくれたみんなありがちゅ~♡ アンジュね、昨日から風邪気味で薬飲んで寝てたんだ~♡ みんなに会えなくて寂しかったぁ~』


 ヘッドホンから流れてくるのは心配するコメントに猫なで声で返すアンジュの声。コイツはチャンネル登録者数3000人ちょっとの女性実況者。配信者の中では底辺に位置する。本人曰くJKか二十代前半らしいけど、巷じゃ実年齢は限りなく四十に近い三十代と専らの噂があり、年齢の事を弄ったり、言ったりするとブチ切れる。いい歳したオバサンがぶりっ子とか痛々しすぎて草も生えず、年齢設定がまばらだけど、JKと二十代前半じゃかなり差がある


『それじゃあ、今日もやってくよー!』


 配信開始から十分。やっとゲーム開始だ。最初のトークが無駄に長い上に中身が自分を心配する声に返事を返すだけ。だからいつまで経ってもチャンネル登録者数が増えず、3000人以上いてもほとんどがアンチと監視、その他で純粋なファンが付かないんだよ


「さてっと、こっちも始めよう」


 タブをアンジュの配信からUWОへ切り替え、ホーム画面右上の出撃ボタンを押した。僕の使ってる竜人ロボが宇宙空間へ繰り出した。


『みんな、やりたい任務あったら入れてね~』


 UWОをプレイしてる彼女の信者だったら要望に応え、ソロじゃ難しい任務か面倒臭い任務を入れるんだろうけど、お生憎様。僕は信者じゃない。要望に応える必要など皆無。


「一~二時間経った頃から始めるとするかな」


 三流の人間やキッズならすぐにやるけど、開始早々じゃ面白味に欠ける。僕はヘッドホンを外し、リビングへ降りた




 リビングへ降りると義母さんがソファーでテレビを見ながらくつろいでいた。放送されてるのは昔やってた刑事ドラマ。十七時はとっくの昔に過ぎてる。仕事を終え、くつろいでいたとしても何ら不思議はない


「お疲れ様。義母さん」

「うん」


 テレビを見てる義母さんの隣に腰を下ろした。彼女はテレビから視線を移さず答えると煎餅を一口かじった。見た目が女子高生なのにテレビを見ながら煎餅をかじってる姿をみると年相応のオバサンなんだと実感させられる


「…………」

「…………」


 テレビに見入ってる義母さんの隣で僕も同じようにテレビを眺める。話す事がないから無言になるのは当たり前。義母さんと会話しないのは今に始まった事じゃない。昔からそうだった


「ねぇ、陽人君」

「何?」


 沈黙が続く中、先に口を開いたのは義母さんだった


「学校は楽しい?」

「分からない。クラス替えして間もないからね。でも、クラスに話せる人はいるからそれなりに充実してるとは思うよ?」

「そう」

「うん」


 再び沈黙。学校が楽しい? そんなわけない。波風立てないように振舞ってるだけで楽しいと感じてはいない。クラス替えをして間もないからもあるけど、一番の理由は────


「ねぇ」

「何?」

「陽人君は……さ、いつになったら私の事名前で呼んでくれるのかな?」


 またも沈黙を破ったのは義母さん。何を言い出すんだか……義母さんと呼んでるんだから文句ないでしょ。面倒臭いなぁ……。


「いつって……そうだね……二人きりの時とか?」


 気が向いたら呼びますよって言うといつ気が向くのかって話題が逸れる可能性がある。曖昧な返事で先延ばしするよりも特定の条件下だったらと制約を付けた方が楽と考え、二人きりの時と思わず口にしてしまった。完全に僕の失態だ。今後の変化次第じゃ名前呼びも吝かじゃないけどさ


「じゃ、じゃあ、い、今、よ、呼んでくれないかな……」


 そう言って義母さんは上目遣いで僕を見つめてくる。何を名前呼びに拘ってるのやら……


「ち、千夏(ちなつ)さん……」

「うん……」


 自分から名前呼んでほしいと言ったのに呼んだら呼んだで真っ赤になって顔を逸らす義母────千夏さん。僕も一応、それっぽい反応を示そうと頬を掻きながら視線を逸らした


「こ、これで満足?」

「うん……」


 千夏さんは満足気に頷くと僕の肩に頭を乗せ、目を閉じた。仕事でかなり疲れているんだろう。


「千夏さん?」

「嫌……だった……?」

「う、ううん、嫌じゃないよ」

「なら少しだけこのままでいさせて……」

「三十分だけだよ?」

「うん……」




 あれから三十分経過。時間を見るととっくに十八時を回っていて隣を見ると千夏さんが穏やかな寝息を立てていたので僕は起さないようにそっと彼女の身体を寝かせ、椅子に掛けてあったブランケットを被せ、自室へ戻った




 自室へ戻り、パソコンに向かうとヘッドホンを付ける。さて、配信の方はどうなったかな?


『はぁ!? 自分の事ですかぁ! ブーメラン刺さってますけどぉ!』


 付けた瞬間に聞こえたアンジュの怒声。どうやら誰かにコメ欄かゲーム内で煽られたようだ。じゃあ、そろそろ始めようかな? 宇宙空間にいる僕は遠距離武器の中から超粒子砲をチョイス。プレイヤーリストを開き、現在地球にいるアンジュを選択。狙いを定めて────


「死ねッ!!」


 掛け声と共に撃った。判定は────


 “あなたがアンジュを撃破しました”


 アンジュ撃破とログに表示された。不意討ち成功。


『ちょっと~! 不意討ちは卑怯~! って! またテメェかよ!! ブジャル!! 何回アンジュの配信荒らせば気が済むんだよ!! いい加減にしろよ!! バーカ!! 一生許さないかんな!!』


 不意討ちを食らったのと撃った相手が僕だと知ったアンジュが怒声を上げ、僕の口角は吊り上がる。改めて自己紹介しよう。僕の名前は五味陽人。表の顔はクラスのトップカーストだけど、裏の顔は暴言Vtuberの配信荒らしです








































今回は最後まで読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ