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女神さまのブラウン管

作者: 立草岩央
掲載日:2020/12/17

「うーん。おかしいわ」


女神は頭を悩ませていた。

目の前にあるのは一台のブラウン管。

地上の人々の様子を映し出す、彼女にとって必要不可欠な代物。

しかし今、それは完全に壊れていた。

とある王国を映しているのだが、何処を見ても映像は砂嵐ばかりで、何も見えないのだ。


「壊れちゃったのかしら。元はお下がりだし、やっぱり買い替え時なのかも」


試行錯誤して見えたのは、少し前の王宮の映像だけ。

一国のお姫様が、皆の前で処罰を受けている様子だった。


(システィア姫! 其方が、魅了の術で王子を誑かしていた事は明白! その強大な魔力を利用し、王家の者を魅了した罪、万死に値する!)

(お待ちください! 私は、そのような事は……!)


お姫さまは冤罪だった。

王子さまが他の女性に現を抜かし、魅了の術を使い自分を洗脳したと、冤罪まがいの罪を着せたのだ。

しかし、誰もお姫さまを庇おうとしない。

彼女が元は平民の成り上がり、嫉妬故か。

酷い話だ。

何とかお姫さまを救えないだろうか。

そのためにも、先ずは詳しい状況を把握するため、このオンボロをどうにかしなければ。

そう思い、バンバンとブラウン管を叩く女神の所に、一人の老婆が現れる。


「何をしておる?」

「あれ、死神さん? 地上のお仕事は終わったんですか?」

「うむ。一仕事終えたからのう。一旦、戻って来たのだよ」


やれやれと言わんばかりに死神は腰を叩く。

それでいて女神の様子が気になったのか、勝手に上がり込んでくる。


「で? 何かあったのかい?」

「ブラウン管が、何もしてないのに壊れちゃったんです!」

「そんな初心者のような台詞を……」

「見て下さい! このお姫さまを最後に、先の様子が見えなくなったんです! これはもう駄目です! お古です! 買い替えましょう!」

「どれどれ……」


死神はブラウン管の様子を窺う。

だが暫くして見当がついたのか、彼女はその場から離れる。


「アンタ、これは壊れてなどおらんよ」

「えっ? でも……」

「それは人単位でしか見ておらんからじゃ。国全体を見るように変えてみい」


言われるがまま、女神はブラウン管を調整してみる。

すると砂嵐は消え、真っ暗闇の映像が流れ始める。

何だろうかと暫く見ていたが、ようやく意味が分かり彼女は青ざめた。


「そ、そんな……!」


言葉を失う女神の代わりに、死神が動き出す。

その手には、いつの間にか大鎌が握られていた。


「全く、死神使いも荒いものじゃのう」


しわがれた笑い声が、辺りに響いた。

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