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思惑

音を立てないように扉を開いた。


その部屋はとても真っ白で、白の蛍光灯がとても目に刺さる。


そしてシンプルなパイプの椅子とテーブル。

なにか書きかけのノートもあるが知らない外国語で書かれていたので読めなかった。


その隣には部屋の間にカーテンが引かれてあった。


そのカーテンの奥からすすり泣く声が聞こえる。


私はそっと足音を立てないようにカーテンに向かう。


私はカーテンを手にとって、少しの間から中の様子を見ることにした。

そっと顔をカーテンと壁の間から覗かせる。


その部屋には、なぜかマールとシューアがいた。

拘束され吊るされたままマールはぐったりし、シューアは泣いている。


しかも傷だらけ。

引っかき傷なのか、切り傷なのかわからないがそれが複数あり縫われた形跡がある。

他にも可愛いハートマークが火傷のように茶色く肌からうきあがっていたりと、とても痛々しい傷が体中にある。


マールは顔から赤い涙を流していてピクリとも動かない。


「シューア!マー…」


私の体が動かない。


いや、私の体は前に行こうとしているけれど

服が誰かに引っ張られていて前に進めない。


「何してる。」


とても低くておどろおどろしい声だ。


私は後ろを振り向く。


「え、アポロ…さん?」


アポロさんが私をとても冷たい目で見つめている。


「なんでここにいる。」


「え、あの、掃除してたら、声が、聞こえて。」


なんだか体の芯から震えてしまって上手く喋れない。


「残念だ。旦那様は気に入られていたのに。」


私はそのままアポロさんに引っ張られて旦那様の部屋に連れて行かれる。


どういうこと?

私もあの二人みたいに監禁されてしまうの?

あんなに痛そうなことしないといけないの?


怖い。


こわい。


「旦那様。あなたの猫が私の聖域に入ったのですがどうされますか?」


扉を開けるなり、アポロさんはそう言葉を放った。


旦那様「そんなに怒るな。落ち着け。おもちゃは壊されてないんだろう?」


アポロ「まあそうですが、これからどうするんですか?」


旦那「不良品は、新しいものに変えることが当たり前だけど、私はスティアのビジュアルとその好奇心の多さが気に入っている。でもその好奇心が面倒ごとに繋がるならなくさせないといけないね。」


旦那様はスクっと立って本棚からアルバムを取り、私に見せて来た。


旦那様が私のお父さんと写ってる写真。

ちょうど起業した頃の写真だろうか。


スティア「あの…、シューアとマールを解放してあげてください。」


旦那様「ちゃんと見て。これは君のパパの笑顔。私と君のパパが出会って商談が成立した時の写真。君はパパの綺麗な鼻筋を受け継いだみたいだね。」


私の話は無視して急に思い出話と私の鼻筋を褒める。

旦那様は何がしたいの?


ペラっとめくると、シューアとマールが小さい頃の写真とともに二人の父親と母親が写っている。


旦那様「シューアとマールの父親は敏腕の営業マンだったたから無名だった私のおもちゃ屋を大きくしてくれたんだよ。二人もこの親のいいとこ取りしたいい顔立ちだ。」


旦那様は、私がアポロに後ろで腕を掴まれているおかしな状況なのに微笑みながら昔話をする。


二人とも頭がおかしい。


スティア「離してください!」


私はとりあえず逃げれないか暴れて腕を解こうとする。


[ガシ…]


スティア「うぐぅ…」


旦那様が私の首を大きい手で締め付ける。


旦那様「おてんばが過ぎる子は、ちゃんと真実を知って大人にならないといけないんだよ。ちゃんと私の話を聞きなさい。」


さらに力が増して、息ができない。


私は力なく頷く。


旦那は手を離す。


旦那様「それでいい。話は聞ける子だったからね。」


旦那様はまた微笑む。

そしてまたペラっとアルバムをめくる。


旦那様「これはね、喧嘩する直前に君のパパと二人の父親の3人で撮った写真。仲良しだったんだけど、君のパパはね色々小言がうるさくてねー…。」


眉をひそめながら、またアルバムをめくる。


飛び込んできた写真は、私のパパの車。

事故にあった時の写真。

そこには生々しく、パパが頭から血を流しているところやママの心臓に刺さったガラスが一枚の写真に収められてる。


旦那様「あんまり大きいことはしたくなかったんだけど、アポロがこれが一番自然って言って聞かなかったんだ。まあそのおかげでスティアが手に入ったからなにも文句は言えないんだけどさ。」


ど、ど、どういうこと…?

アポロさんが私のパパママを殺したの?


旦那様は容赦なくまたアルバムをめくる。


さっきシューアとマールと一緒に写っていた両親が私のパパとママのようになっている。


旦那様「これは君のパパたちを殺したのがバレたから。営業する人間は必要だったんだけど警察に行こうってうるさかったからさ。」


スティア「え…。なんで…?」


旦那様「君に惚れちゃったんだよ。その透き通った白い肌にナチュラルに赤い唇。

綺麗にスーッと通った鼻筋に綺麗な二重で黒目が大きく、その黒目にはまばらにゴールドが混じっているところがとても人間とは思えないほど美しい。

私はなんでも手に入れるために色々やって来たからさ、納得がいく人を見つけて腰を落ち着けたかったんだ。」


意味が理解できない。

それで人を殺すの?


旦那様「君のパパに相談したら、絶対娘は私にやらないって怒るんだよ。ひどいよなぁ…。恋愛は歳や経験人数で決めつけるものじゃなくて感情が動かされてするものなのにさ。」


旦那様は苦笑する。


旦那様「君は頑張り屋だから一人でなんとかしようとしたけど10代文無しが簡単に生きていける世の中ではないからね。だから必然と私の手の中に入ってきたんだよ。シューアとマールは君より頭が弱いから早めに声をかけて家に入れた。少し手間取って君が後になってしまった。

欲しいものはなかなか手に入らないって本当だね。」


スティア「私をどうするんですか。真実を知ったから殺すんですか?」


私は死を覚悟する。


旦那様「そんなことしないよ。」


旦那様は棚の引き出しからアクセサリーボックスを出す。


[シャララン…]

[リリーン…]


旦那様は私の耳にピアスを開けてその鈴の音がなる耳飾りをつける。

首には猫のような首輪、案の定鈴が付いている。


腕にも工具を使わないと取れない、シャラシャラと音がなるブレスレットをつけられる。


旦那様「やっぱりスティアはゴールドが似合うね。」


旦那様は優しく壊れないように私の頭を撫でる。


旦那様「じゃあご飯食べようか。」


二人に連れられてキッチンに向かい、アポロさんがご飯を作る。


温かそうなクリームシチュー。


アポロさんが私の目の前に食事を出す。


旦那様「初めて一緒に食べるね。いただきます。」


スティア「…いただきます。」


食欲はない。

けれど、きっと食べなければまた苦しい思いをする。


私は、ほくほくの味のしないシチューを食べる。


そして完食する。


旦那様「今日は記念日だね。アポロ。」


アポロ「はい。」


アポロさんは、カメラを手に取る。


アポロ「スティア、これなんだと思う?」


アポロさんが小さい瓶を、カメラの上で赤ちゃんをあやすように見せる。


スティア「…わかりません。」


アポロ「軽度の毒。明日には解毒剤をどこかの食事で入れるからね。そしてまたどこかの食事で毒を入れる。軽度だけれど、解毒剤を飲まないと1日で死んじゃうからね。これからもちゃんとご飯食べてね。」


アポロさんは微笑んだ。


旦那様「だからもう逃げられないよ。」


旦那様は私の肩を抱く。

その拍子に体が揺れて耳飾りが鳴る。


私の人生の終わりの音色はすずしげだ。




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