二人のメイド
次の日、いつものようにみんなより早く起きて食事の支度を始める。
あのあと、シューアとマールは話が出来て落ち着いたのか寝ることには笑顔を見せてくれていた。
今日は二人が好きなコーンスープを作ってあげようとトウモロコシを茹でる。
[コンコン]
「おはよう。」
「おはようございます!」
私は手元の作業を一旦やめて、振り返りながら挨拶する。
アポロさんだ。
「シューアとマールの事を旦那様に話したんだ。」
「ありがとうございます。…どうでしたか?」
「二人はしばらくの間お暇を頂くことになった。と言っても旦那様が経営しているマンションに少しの間住むからそこは安心してほしい。」
「今日行ってしまうんでしょうか?」
「ううん、昨日のうちに行ってしまったよ。」
「あ…、そうだったんですね。」
少しの間だとしても、挨拶なしに行ってしまうのはなんだか寂しかった。
「しばらくの間、二人だけで家の管理をしないといけなくなるがよろしくな。」
「はい!」
アポロさんは、旦那様を起こしに行くとって行ってしまった。
せっかく作ろうと思っていたコーンスープは、
コーンサラダに作り変えて朝食に出した。
二人は今頃何をしているんだろう?
のんびり起きて、のんびり朝食をとっているのかな?
元気で過ごしているなら、それでいっか。
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二人が居なくなってから数ヶ月。
この数ヶ月の間、旦那様は反省したのかセクハラをすることがなくなった。
シューアとマールがやっていた仕事をアポロさんと分担してやっていたことも慣れ始めて時間が余るようになって来た頃、私はあまり掃除が行き届いていないと思われる地下室の掃除を勝手ながらやることにした。
二人がいた頃は、旦那様とアポロさんがいない間お茶会を開いていた。
二人の心の調子が良くなったらまたお茶会したいな。
私はバケツをモップを持って、地下室に向かう。
ここは暗くて足元が見えにくいから一人の時は入らないようにってアポロさんに言われたけど、
いつもお世話になってる分私も何か恩返しがしたい。
薬が並ぶ棚や、医学書がアポロさんの部屋以上に並んでいる。
倒さないように気をつけなきゃ。
私はゴシゴシと腰を入れながら床掃除をしていると、
モップがけの音と、私の息遣いとともになにか声が聞こえる。
来た当初は気づかなかったけど、だれかが泣いているような声が少し遠くだけれど聞こえる。
…おばけ?
私は怖くなったが、好奇心の方が勝ってしまい声が聞こえる方へと足を向ける。
この地下室はとても広く上の階のように部屋が何個もある。
非常時用の食料庫や、アポロさんの趣味のもの、旦那様が好きなワイン、それぞれ役割が扉の上に書いてある。
だんだんと奥の方に進むとどんどん声が聞こえやすくなっている。
ここ…?
ほかの扉と同じ型をしているが、ドアノブがない。
でもここから声は聞こえる。
上の部屋の用途は…、書いていない。
どういうことなんだろう。
私は、地下室にあった道具箱で近くの部屋のドアノブを借りその部屋を開けて見ることにした。