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13話 「ボス」


 「さて、どうやって戦おうか」


 俺は佐藤さんを床に寝かせながら考える。


 スキルが使えないとなると少し面倒だな。

 必然的に己の拳で戦うことになるが、剣と鎧をつけた相手に通用するかどうか……


 それにあいつはダンジョンのボス。

 舐めてかかると痛い目に合うかもしれない。


 ……その前に。あれが敵対的な魔物だとは限らないし、一応話しかけてみるか?

 日本語通じないとは思うが。


 「あの、ダンジョンのボスの方ですか?」

 「……」


 鎧は歩みを止める。


 「あの?」

 「…………名は何だ」

 「……へ?」


 日本語喋ったぞコイツ。言葉のキャッチボールが出来てないけど。

 なんだか不思議な気分だな。

 それに、敵対的でも無さそうだし安心した。


 「た、拓真です」

 「……ほう、我が殺すのに相応しい名だな」


 鎧は右手で剣を構える。


 前言撤回。

 奴は俺を殺す気満々だ。

 言葉を話せるのだったらあまり戦いたくはないのだが。


 「は、話し合えば必ず分かち合え――」

 「死ね」


 俺が最後まで言い終わる前にその鎧は目にも留まらぬ速さで俺の目前に移動した。


 「速――――ッ!!」


 それと同時に俺へ目掛けて剣閃が走る。


 首に鋭い衝撃。

 まるで切り落とされたかのような。


 何が起こった?

 速すぎて何も見えなかった。


 ……死んだのか? 俺は。

 今まで感じたことの無いような感触……あれっ。


 「切れて、ない?」


 恐る恐る驚いて閉じていた目を開けると、鎧が振るった剣は俺の首にしっかりと入っていた。

 しかし、皮膚が切れずに止まっている。


 「な、に……?」


 鎧は驚いた様子だ。

 と、いうことは剣に問題がある訳ではない。

 俺の物防の数値が……コイツの物攻の数値を上回っているのだ。


 「何かの漫画で、人を殺そうとする事は逆に殺されるかもしれないという危険を常に覚悟している、というセリフを見たことがあるのですが……」

 「くっ……!!」


 先程とは打って変わってひしひしと伝わってきた自信が消えている。


 いける。

 もうコイツには剣を振る以外の手がない。

 スキルが使えたとしても、この魔法陣の影響で使えない筈だ。


 「ふぅーー…………」


 俺は息を吐き、拳を握りしめた。

 そして、それを構える。


 「や、やめろ」

 「……」


 強く、強く握りしめていく。


 「ま、待ってくれ、話し合えば分かち合え――」

 「俺と同じこと言ってんじゃねぇ!!」


 鎧が話し終わる前に鎧の頭に最大限の力を込めた拳を叩き込んだ。

 ぐにゃりとした柔らかい物に触れたような感覚。


 「オラァッ!!」


 更に、金属が変形し鎧の原型を留めていない頭にもう一発。

 首が180度回転し、捻れた。

 辺りに暴風が吹き荒れ、床が砕け散る。


 「ハァァァァァァァ!!!!」


 殴る。殴る。

 殴り続ける。

 剣を当てられても殴り続ける。

 やりすぎかと一瞬思ったが、この鎧は俺を殺そうとしたのだ。『覚悟』して貰わないとな。


 「まだ、やるか?」

 「ひ……あっ……」


 数分殴り続けて離れると、鎧の魔物は只の鉄の塊になっていた。

 どうやら鉄自体が魔物そのものらしく、まだ生きているらしい。


 「やった」


 何はともあれ、一応は戦闘不能にしたから勝ったと言う事でいいだろう。

 鎧は反省するまで永久に鉄の置物だ。

 

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