12話 「俺だけの攻略法」
今更は真っ暗で何も見えなかったダンジョン内部が松明のおかげでよく見える。
……俺、明かりを灯せるスキルを持っていないんだよな。少し不便だ。
「よし、奥へ進もう」
普通なら怖気づくだろうが、俺はダンジョンを知っているからな。
アニメや漫画で得た知識では、下に行けば行くほど強い魔物が現れていく。
そして最下層にはダンジョンのボス。
どれぐらい深いかは分からないが、少し時間はかかってしまうだろう。
……いや、ちょっと待て。
今の俺なら……道なりに行かなくてもボスまで直下掘りで行けるんじゃないか?
試しに壁に『滅雷』を放ってみると、土埃を上げて吹き飛んだ。
その奥には更なる通路。
予想通りだ。
「もう一発」
「『バゴォォン!!』」
なんか楽しくなってきたな。
「『バゴォォン!!』」「『バゴォォン!!』」「『バゴォォン!!』」
これだと移動も簡単だし、ダンジョンは俺の独壇場かもしれない。
俺は『魔力探知』を起動し、前回使った時より魔力を多く込める。
「……ほう」
眼下に広がるのは大量の光の粒。
このビルを中心にして大体半径1キロの円の範囲に所狭しと詰まっている。
それに、全てがゴブリンの光より大きい。
更にはその深さ。
目測で50メートル以上はある。
下へ行くほど光りが強くなっていき、ある地点からは何も無いようで、真っ黒だ。
もし道順で攻略しようものなら最低でも1年はかかりそうな大きさである。
さて、この中から一際大きい光の粒を探して……
「ん? 何だあれ」
光の粒を眺めていた俺の目に異様なものが映る。
「光があそこだけ……ない」
一箇所、光の粒が突然消え、球状に黒くなっている場所があった。
さっき俺は光の粒が所狭しと詰まっている光景を見た。それだからか光が消え、黒くなっている部分の異様さがひしひしと伝わってくる。
光がないということはつまり、魔物が居ないということなのだ。
「あそこに……何かあるのかもしれない」
俺は黒くなっている部分の真上に移動する。
少し奥まった場所で普通ならば行こうとはしない場所だ。
「『観察者』さん、あれ何だか分かるか?」
《……距離が離れすぎているため『鑑定』できません》
「そうだよなぁー」
やっぱ行くしかないか。
……もしかしたら財宝でもあるかもしれない。
いやいや。俺は中に引きずりこまれた人を助ける為にボスを倒すんだ。
財宝はそのついで。断じて欲しいってわけじゃないぞ!!
「……さて」
一応、『空中浮遊』を使っておこう。
洞窟とかあって落っこちても嫌だからな。
真下に向けて手を向ける。
成功するかは分からないが……その時は戻ってこれば良い話。
問題はない。
「すぅ……はぁ……」
一つ深呼吸。
使うのは『滅龍の咆哮』だ。
集中しろ。
鋭く……長く……いける。
「『滅龍の咆哮』!!』
俺の手から大量の水が轟音と共に勢いよく放出される。
「『バコン』」
地面が破壊されるような音がした瞬間、『空中浮遊』で体がフッと軽くなる。
破壊は可能な様だが水飛沫で何も見えない。
「『バコン』」
「もう一段」
「『バコバコッ』」
「一気に二段!!」
「『バコッバキキキキキ』」
「う、うおおぉぉぉ!?」
「『バキキキキキキキキキキキ!!』」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』」
ドミノのようにどんどん崩れていく。
おそらく瓦礫が積み重なっているのも相まって威力が増していっているのだろう。
このまま直行だ。
「あと少し……!!」
黒い部分が近づいてくる。
こんなダンジョンの攻略法……俺しかできないんじゃないか?
そうだ、このままボスがいたとしても速攻吹き飛ばしてやる。
これが俺だけの攻略法だ。
「着いた――――え?」
『滅龍の咆哮』が黒い部分に触れたと思った瞬間――水流が消えた。
同時に体が一気に重くなり、地面に叩きつけられる。
「な、何だ? 急に『滅龍の咆哮』と『空中浮遊』が……消えた?」
急いで体を起こし、周りを見渡す。
何もないただっ広い空間。
壁は岩で出来ており、ドーム状の天井からは輝く鍾乳石が伸びている。
「……美しいな」
本当はよく鑑賞したかったが、一度『空中浮遊』で戻らなければならない。
何が起こるかわからないからな。
「『空中浮遊』!!」
『「……………」』
「『空中浮遊』!!」
『「……………」』
魔力が……放出されない……?
《恐らく……地面に仕組まれた魔法陣が原因のようです》
咄嗟に下を見ると、床がぼんやり光っている。
なるほど、これの影響で魔力が……だから『魔力探知』で真っ黒になって――――
俺は一瞬、思考を止めた。
そう、何かが歩いてくる気配がしたからである。
『「ガシャ、ガシャ、ガシャ』」
音がしてきたほうから出てきたのは……鎧だった。
顔まで覆った金属の鎧を揺らしながらこちらに歩いてくる。
その手には剣が握られ、戦う気満々だ。
おそらく……あれがボスなのだろう。
「おいおい……ここまで来てスキル無しのタイマンかよ!!」
だが、俺の物攻、物防の数値はそこそこあった筈だ。
スキルなしでも……戦える。
俺はそう、歩いてくる鎧を前にして思った。




