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第六話 ログハウス

-レオとの出会いから一週間後-


プレハブの真横に丸太を組んだログハウスが少しづつ形になっていく

レオはひたすらハヤテの指示どうりに斧で木を切り続け、ハヤテは切った木の枝をノコギリで丁寧に切り落とし皮を剥いでいくと綺麗な木材へと変わっていく


「いやぁ、だいぶ木材がストックできたな。」


そこには皮を剥いだ美しい丸太が山積みにされていた


「ハヤテさーん!お昼持ってきましたよー!」


ラータの方角から手を振りながら馬に乗ってきたソフィー


「おー!レオ!昼食にしよう!」


斧を木に立てかけて歩いてくるレオルンド

ソフィーはハヤテとレオルンドに向かってバケットを開けるとサンドイッチが入っていた


「ジャーン!今日はソフィー特製サンドイッチですよぉ!」


丸太に腰を下ろして三人で昼食をとっているとレオルンドは建築中のログハウスを見る


「ハヤテ殿、【ろぐはうす】とやらはここからどのくらいの日数がかかるのですか?もうしばらくすれば冬がやってきます。それまでには完成するのですか?」


「よく聞いてくれたレオ・・・もう間もなく必要な木材はすべて揃う。そうなれば俺の高速クラフトで一気に組み立てれば2日もあれば終わる!」


「あ、あの骨組みの状態から2日ですか!?」


「俺は物作りに特化したスキルだからな。それにレオが斧で木を切ってくれてるおかげでかなり効率いいんだよ!俺が斧を使うと一回の使用で壊れるんだよね・・・。」


苦笑いするハヤテ


「ラータの武器屋で色んな種類の武器を買って、どれが一番俺に向いてるか試したんだよ。そしたらことごとく壊れたんだよね・・・」


「そ、そんなまさか・・・鉄製の武器が壊れるだなんて。」


「そこにまだ一回も使用されていない斧が一つある。」


そう言うとハヤテは斧を取り近くにあった木の前に立つと木を切り倒すように構え斧を振る


ズドンッ!


木には斧の傷が入るが、肝心の斧は一回で刃が割れてしまった


「ほら・・・何も悪い使い方してないのに一回で壊れるんだ・・・」


「ええぇ・・・・・」


レオルンドは唖然としていた


「俺が思うに【武器】は絶対的に相性が悪いんだと思う。これを見てみろ。」


ハヤテは木の枝を切り落とすのに使っていたノコギリを取り出す


「これは俺の世界の木工をする上の【工具】で素材は今壊した斧と一緒だ。むしろコッチのほうがペラッペラで変な力をかければすぐに変形してしまう。」


そう言いながらハヤテはノコギリを斧と同じような使い方で思いっきり木に当てる

レオルンドは駆け寄ってノコギリを見るとノコギリは刃こぼれすらしていない


「これでわかったろ?俺は武器はどんな使い方をしても壊してしまうし、工具はどんな使い方をしても壊さない。」


「にわかに信じがたい・・・」


ムッっとするハヤテ


「よしじゃあレオの剣を貸してみろ!一撃で壊してやる!」


「やめてくださいよ・・・」


レオルンドは大剣を遠ざけた


ソフィーはサンドイッチを頬張りながら二人のやり取りを笑って見ていた


「私、獣人さんを誤解してました!こんなに私達と話したり一緒にごはんを食べたり出来るなんて思いませんでした。誰かと食べるご飯って大好きです!」


レオルンドはソフィーの後ろにハヤテから遠ざけるように大剣を置いた


「ソフィー殿はご家族は?」


「私居ないんです。物心ついたときには帝国バルトゥーラ領のアドキスという街のスラム街にいました。一年中雪に覆われた街で、親も居ないお金もない貧しい人間は毎日夜を越して【翌朝】を迎えるのが命がけでした・・・」


「大変失礼なことを聞いてしまった・・・申し訳ない。」


悲しそうな顔をするレオルンドを他所にハヤテはソフィーの隣に座った


「続き・・・聞かせてくれないか?」


「ハヤテ殿!!!」


止めようとするレオルンドの手をそっと掴むソフィー


「いいんです!私の中で聞いてもらいたいって気持ちもあるし・・・」


レオルンドはハヤテとソフィーの正面にあぐらをかいて座った


「とにかく当時12の私は生きるためにいろんなことをしました。最初は貴族の通う料理屋で残飯を漁り、腐ったものでもなんでも食べました。そして他の人からお金を盗んで闇市で食べるものを買ったり・・・

一日をその場しのぎで過ごすならなんとかなりますが、バルトゥーラは一年中雪の降る寒い国。

ボロ布の服に裸足で過ごすのは地獄のようでした、アドキスでは寝ている間にそのまま命を落とす人はたくさんいました、それも毎日・・・だから私はそういう人たちから衣服を剥ぎ取り寒さとも戦ってきました。」


レオルンドとハヤテはただ静かにソフィーの言葉一つ一つを聞いていた


「ある日私は地獄のようなあの街から逃げ出そうと吹雪の中の雪原をひたすら南に向かって歩きました。当時の私は聖国アルトークを思い違いしてました。聖国というからきっと素晴らしく温かい国なんだと思っていました。

そこにたどり着けばきっと暖かく保護してくれる。きっと幸せになれる・・・そう思って。

3日間あるき続けました、もう足の感覚が無くなって歩いているのか停まっているのかも分からず。でもひたすら南に向かって・・・」


ソフィーの顔は少し険しくなった


「そして私は国境にたどり着きました。ですがそこでいたのは幸せどころか、私を殺そうとした聖騎士でした。帝国の生まれである私は彼らから見たら汚らわしい存在。

今でもはっきり覚えています、あの大きな戦鎚をもった白金鎧(プラチナメイル)の聖騎士。彼に殴られ蹴られ意識が遠のく中であの男の笑った顔だけは忘れません。

その時助けてくれたのが冒険者のパーティーでした、大きな斧を持ったアマゾネス族の女戦士さんが聖騎士を蹴り飛ばして転がってる隙に私はパーティーの方々に担がれて国境沿いに西へ走り、エルシアへ入りました。」


ハヤテは察したようにソフィーを見た


「その女戦士って・・・」


「はい!ブレダさんです!ブレダさんたちはたまたまクエストの帰り道で暴行を受けている私を見つけてくれて助けてくれました。それから私はラータで冒険者ギルドのギルド支部長になるブレダさんに付いていくことに決めて6年・・・今に至るのです!!」


ソフィーが笑顔で話し終わるとレオルンドは号泣していた


「幼くしてそんな過酷な人生を歩まれていたなんてぇ!」


レオルンドの頭を撫でるソフィー


「本当に獣人さんは暖かくて優しい人達なんですね・・・私たち人間同士でさえ差別や迫害があるのに・・・」


しばらくするとソフィーは帰っていき、ハヤテとレオルンドは作業を再開した


「ハヤテ殿!これで必要な木材が揃いましたよ!」


レオルンドがハヤテの方を向くとハヤテは一本の丸太の前に立っていた


「すぅぅぅ・・・・」


大きく息を吸い込むと両手で丸太を持ち上げる


「はや、ハヤテ殿・・・あの丸太を一人で・・・」


ハヤテは丸太を片手に持ち替えて丸太を空に向かって投げ飛ばした

投げた丸太は重力に任せて落下してくるとハヤテはスレッジハンマーを構えた


「おおおりゃああ!!!」


丸太にスレッジハンマーを叩き込むと丸太は粉々に粉砕された


「ああ・・・!なんて力だ・・・」


レオルンドは驚きながらハヤテに近づく


「なぁレオ。聖騎士だっけ?そいつやっぱ強いのかな?」


「聖騎士は十二神と言われる大天使たちの加護を強く受けた者たちだと聞きます、その強さは一人にして兵1000人を上回るとか。そしてそれぞれの聖騎士が持っている武器【神器】は天使の力を宿したものと聞きます。決して壊せないとか噂になっておりますな・・・」


「戦鎚・・・ハンマーのことか。へぇ・・・決して壊れないかぁ・・・」


「ハ、ハヤテ殿??」


レオルンドがハヤテの顔を覗き込むとハヤテはニヤリと笑みを浮かべていた


「まさかハヤテ殿!その戦鎚を奪うつもりでは!?」


「いやまさかそんな物騒なことはしねえよぉ♪」


ニヤニヤとしたハヤテの顔の不安に感じるレオルンド


(・・・戦鎚を奪おうとしている。【神器】を奪って壊れなければハヤテ殿の物にするだろう。神器を失った聖騎士はきっと立場を失う。壊れたとしても聖騎士は立場を失う・・・笑顔ではいるけど、ソフィー殿の話・・・相当怒っているのだろうか。)


「よしっ!作業に戻るぞ!今から高速クラフトすれば一階部分だけでも形になるはずだ!」


「はい!」


「ああ・・・そうだレオ。」


「はい?」


「追加でもう一本だけ木を切ってくれ。一本駄目にしちまった。」


「はい・・・」


レオルンドは粉砕された木材を見る


(本当にハヤテ殿は人間なんだろうか・・・)


ハヤテは丸太を持ち上げ壁を組んでいく


(そもそも人間があんな軽く丸太を持てるのだろうか・・・我々獣人でも二人がかりで持ち上げるようなものを・・・ハヤテ殿の世界はあんな人間で溢れているのだろうか。)


そう考えているうちにハヤテはログハウスの一階の外壁部分を完成させ、玄関のドアを作成していた


「は?」


レオルンドは何が起きたのか理解できなかった


「家を建てるのに高速クラフトが適用されてよかったよ。」


「ハヤテ殿、壁の一部に四角い穴が空いてますがあそこは?」


「あそこには暖炉を作ろうと思ってる。レンガは簡単に作れるが問題はセメントだな。」


「セメント?なんですそれは?」


「セメントってのは石の接着剤だと思えばいい。この世界って石造りの建物も多いけどただ積み上げただけなんだよ。もし衝撃を受けたら崩れてしまうだろ?石と石の間にセメントを塗って乾燥させれば強度が一気に跳ね上がるんだよ。」


「そのようなものが・・・して、どこに行けば手に入るんですか?」


「建物に使われてないところを見るとセメント自体存在してないんだろうなこの世界は。レオ、明日はラータに行って情報収集と荷車を借りに行くぞ。」


-翌日・ラータ-


冒険者ギルドにやってきたハヤテとレオ


「火山?」


ブレダは不思議そうにハヤテに聞き返した


「そう火山!昔火山だった場所とか知らないか?できれば噴火したことがあるやつだとなお良いな!」


「うーん。ちょっとまってな、エルドももう少しで来るから。エルドなら開拓者の先祖の記録なんかも知っているから分かるかもしれない。」


ブレダはレオをじっと見ている


「なんでレオはそんなそわそわしているのさ?」


「いや、私が人間の街にいるというのはなんとも・・・」


「あんまり気にすることはないさ。それにこのラータはもしかすると面白い方に変わるかもしれないしね。」


「??」


レオルンドは首を傾げながらブレダを見る

冒険者ギルドのドアを開けてエルドが入ってきた


「おや、レオも来ていたか。それでハヤテ、聞きたいこととは?」


「このへんでさ、活火山でも休火山でも良いんだけどとにかく【火山】はないかな?」


「あるぞ。父の話だがここは開拓をする前に噴火があったらしい。今は煙すらあげない休火山みたいだが。だがどうしてだ?」


「噴火があったのか!そりゃなお都合がいい!ちょっと家の資材に必要なものがあるからね。火山だと採取に効率いいんだ。ついでといっちゃなんだが荷車を貸して欲しい!結構な重量集めるからさ!」


「それは構わんが荷馬も貸してやろう。火山はここから南西に見える山がそうだ。」


「オッケー!よしレオ!行くぞ。」


椅子から立ち上がるレオルンド


「はっ!」


「とりあえず昼飯と水はいくらか持っていくか。ソフィーちゃんお弁当お願いしてもいいかな?」


「私も連れて行ってくれるならいいですよ!」


「そうきたか・・・別に面白いことなんてないぞ?」


「いいんです!」


「ならいっか。よし!一時間後に出発するから用意しよう!」


ブレダはギルドのカウンターに「休業日」と書かれた木の板を置いた


「じゃああたしも行くよ!」


エルドは呆れた様子でブレダを見る


「お前はここのギルド支部長だろ。」


「いいじゃんどうせ暇なんだし。こんな田舎のギルドに依頼なんてこないわよ。」


-続く-


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