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第五話 獣王の子孫

-プレハブ付近-

ハヤテは資源感知で調べた場所に向かって斜めに縦横2メートルの穴を掘っていた

トンネルは4メートル間隔で崩れないように木材で補強されている


「あー、だりぃ・・・スキルに高速採掘とか有ればよかったのに・・・」


しばらく掘り進むと鈍く銀色に光る岩にぶつかった


「これって・・・鉄鉱石だ!!いやったぜぇ!!」


ハヤテは埋まった鉄鉱石をある程度崩すと外に出て乾いた炉に細い丸太をぎっしりと縦につめていく。そして中心に細かい枝を詰め込んで火をつけ投入口を粘土で塞ぐと炉のてっぺんから白い煙が立ち上る

白い煙を確認してからハヤテは簡単な一輪車を作り出す。

木材をナイフで削り木製タイヤを作り出し

試しに転がしてみるがガラガラと激しく揺れる


「めっちゃガタガタ揺れるな・・・やっぱゴムのタイヤがほしいな・・・」


作った一輪車で鉄鉱石を外へ運び出すと小さなハンマーで少量の鉄鉱石を細かく砕いて、ひたすら砕き続け鉄鉱石を粉状になるまで砕くと水を練り合わせた粘土と合わせてこねていく。

均一に練り合わせた粘土で器を作り、レンガを焼いた方の窯で焼き始める


「あーつかれたぁ・・・。ちょっと休憩すっか!」


プレハブからパイプ椅子を出して戸棚を漁る


「おっ!あった!」


見つけたのはタバコのカートンが4つ


「増税前に買い込んであったの忘れてたよ。」


箱を一つ開けて椅子に座りタバコを吸いながらぼんやりする


(働きもしないで好きなことやってるのって背徳感あるけどいいなぁ♪・・・地盤改良用に敷き詰めた砕石を叩いて締めないとな。)


「あー。転圧機ほしいなぁ・・・」


するとハヤテは少し離れた林から緑色の大きな生き物が歩いているのを見つける


「・・・あれは・・・・」


ハヤテは追いかけるとそこを歩いていたのはトロールだった


「おいおい!いいとこにいやがるなこいつ!おい!ちょっと付いてこい!」


ハヤテは小石をトロールの顔に投げつけトロールを怒らせた


「グアァァァァァァ!!!」


トロールは棍棒を振り回しながらハヤテを追いかける


-同時刻のラータ-


領主エルドが屋敷の二階テラスからハヤテの家の方角を見ると白い煙が上がっていることに気がついた


「ん?あれは・・・狼煙か!何かあったのか!」


エルドは屋敷を出る際にメイドに言伝をした


「私の馬を出せ!それとギルドに行きブレダにハヤテの家まで来るように伝えよ!」


エルドは猛スピードで馬を駆りハヤテのもとへ向かった


-同時刻・プレハブ近くの森-


アドラシアを出てエルシアに入ったレオルンドはプレハブの近くにいた


「先程の音は何だったのだ・・・トロールの声だとは思うが怒り狂ったような叫びをしていたな。」


遠くからドシンと何回も衝撃音が響いてくる


「一体なんなんだ・・・」


レオルンドは音のする方へ行く


-プレハブ付近-


ハヤテはトロールを怒らせながら砕石を敷き詰めた穴に飛び込む


「おらぁ!こっちだこっち!」


トロールも穴に飛び込む


「当たらなきゃ大丈夫・・・当たらなきゃ大丈夫・・・」


トロールはドシドシと砂利の上を歩きハヤテに殴りかかるが後ろに飛び回避する


「よし、こんだけトロければ余裕だ!」


トロールは何度もハヤテに攻撃を仕掛けるがすべて避けられイライラしている


「グオォォォォ!!!!!」


その位置より少しラータ側に馬で駆けつけたエルドが近づいていた


「この雄叫びはトロールか!くそっ!無事で居てくれよ!ハヤテ!」


更にその後方、馬に乗ったブレダが続いていた。その後ろにはソフィーも乗っていた


「グゥゥゥゥゥ・・・・」


トロールは少しバテたのか攻撃の手を緩めている


「何だこいつ・・・意外とスタミナはないなぁ。そんな武器なんか振り回してるから疲れんだよ!」


トロールの棍棒をスレッジハンマーで殴りつけると棍棒がトロールの手から離れて宙に舞っていく

その様子を少し離れた所で目撃したレオルンド


「あれは!トロールは何と戦ってるんだ!」


レオルンドは茂みから飛び出しプレハブの前に出た


「なに!?」


レオルンドはエルドと遭遇する


「な、獣人だと!?」


エルドは腰からレイピアを抜く


「待て!戦うつもりはない!剣を収めよ!」


レオルンドはすばやく下がり敵意がないことを知らせるとそこへブレダも到着する


「こんな所に獣人なんて珍しいわね・・・そんなことよりあれは何なの・・・」


穴から上半身だけを出して拳を振り回すトロール

はたから見ればひたすら地面を殴ってるように見える


「人間よ、落ち着いてくれ!私はアドラシアから来たレオルンドと言う。トロールの咆哮が聞こえたのでここへ駆けつけたんだ!私はあなた方と戦う気はない!」


ブレダはレオルンドを見てエルドに武器を下げさせた


「エルド、武器を下げて!彼は本当に戦闘する意志はないわ!それに獅子の獣人だもの・・・戦ったとしても私達の死が目に見えてるわ。それよりもハヤテくんよ!」


その時穴からハヤテが飛び上がってきた


「あれ?なんだみんな揃って・・・」


エルドは緊張した表情でハヤテを見た


「いや、君の家から狼煙が上がってたから何かあったと思って・・・」


「えっ?ああ・・・炉に火を入れてるだけだよ」


「え?」


エルドの後ろからブレダの痛い視線が突き刺さる


「えぇ・・いや。そんなことよりもだ!あのトロールは一体なんなんだ!」


「ああ!あれはちょっと地ならしを手伝ってもらおうかと思ってさ・・・・」


その瞬間トロールの腕がハヤテを薙ぎ払いハヤテはふっとばされ木に激突した


「ハヤテくん!!」


ブレダとソフィーが駆け寄り、レオルンドが背負っている大剣を構える


「人間よ!私があいつを引き受ける!今のうちに彼を!」


その時ハヤテがふっとばされた方向から戻ってきた


「いってえなこらぁ!!」


スレッジハンマーでトロールの右肩を攻撃すると肩から腕がちぎれ血が吹き出した

レオルンドは驚きながらも冷静に分析しようとした


「な、なんだ・・・肉体強化のスキルか!それにしたって人がトロールの肉体を破壊するなど・・・聞いたこともない。」


レオルンドの視線の先のハヤテはトロールの頭上から脳天にスレッジハンマーを叩き込むとトロールはそのまま倒れた


「いやー!思ったより早く地ならしが終わったぜ!」


穴の中の砂利はぎっしりと締まっていた

ブレダは穴の中を覗いた


「あんたトロール利用してたのかい?呆れた・・・」


ソフィーは興奮した様子でトロールを見ていた


「この間は見られませんでしたが今回はちゃんとトロール仕留めるの見れました!」


エルドはただただ口を開けたまま呆けていた


「君トロールにふっとばされて平気なのかい?」


「んー、大丈夫みたい。ちょっと痛かったけど。」


ハヤテはクビをぐるぐると回しながら答えるとあることに気がつく


「・・・・・」


ハヤテはレオルンドへと視界を向けていた


「・・・・・」


レオルンドも驚いた様子でハヤテを見ていた


「ライオン・・・。ライオンだ。」


ハヤテはレオルンドの周りをグルグル回りながら観察する


「これが獣人かぁ!うわぁ!すっげぇ!」


エルドがハヤテを静止する


「ハヤテ!不用意に近づくな!獣人は決して友好的ではない!」


再びレイピアを抜くエルド


「やめろ。こいつは俺がふっとばされたときに武器をとってトロールを引き受けようとしたろ!人を見た目で判断するな!」


レオルンドは驚いた様子でハヤテを見つめた


「ふふ・・・・人か。面白いことを言う人間がいるもんだな。」


ブレダはハヤテを見てこたえた


「このハヤテはね異界からの転移者なの。だからこの世界の種族なんてものもわからないし、人種でどうこう考えてないんじゃないかしら?」


「そうか・・・。面白い人間に会えて良かったよ。それじゃあ、またどこかで・・・」


レオルンドが立ち去ろうとするとハヤテに腕を掴まれる


「まぁ待てって!せっかく知り合ったんだから一緒に飯でもくおうぜ!」


ポカンとするレオルンド


「飯・・・だと?獣人の私とか?」


「なんだ?人間なんかと飯を食いたくないか?」


「い、いや!そんな事言う人間は初めてだから驚いてしまった・・・すまない。」


「おっし!決まりだ!まだ夕方前だし時間もあるな・・・」


ハヤテは蒸発したトロールの死骸からでた大きな魔力結晶を取り出し、プレハブから金の入った袋を取り出しソフィーに渡した


「ソフィーちゃん、これで食い物と酒を買ってきてくれないかな?どうせふたりとも来るだろ?」


ビシッと敬礼するソフィー


「わっかりました!ブレダさんラータに戻りましょう!」


エルドはじっとレオルンドを見ている


「さっきはすまなかった・・・いきなり剣を抜いてしまい・・・」


「気にしないでくれ。」


レオルンドはエルドの肩をポンと叩いた


エルドとブレダ、ソフィーは馬に乗って一度ラータに帰っていった


「エルド?アンタも一緒にどうだい?」


「いや、まだやることが残ってるんだ。」


「そうかい、じゃあまたの機会に。」


「なぁブレダ、私も考え方を改めたほうがいいかもしれないな・・・」


「さっきのことかい?」


「ああ。ラータはエルシアの中でも最もアドラシアに近い・・・もう少し物事を柔らかく考えてもいいのかもしれないな。」


-夜・プレハブ-


プレハブにハヤテ・レオルンド・ブレダ・ソフィーの4人が集まり酒を酌み交わす


「流石にここに4人は狭いな・・・」


苦笑いするハヤテ


「すまない、私が大きいから。」


申し訳なさそうにするレオルンドの背中を叩くハヤテ


「気にすんなってレオ!そもそもこの部屋はこういうのを想定して作られてないからな!」


ブレダはレオルンドを見ながら不思議に思った


「レオ?」


「レオルンドってかっこいい名前だけど長くて呼ぶのかったるいからなぁ。略してレオ!」


「単純だねぇ・・・。じゃあ私もレオと呼ばせてもらうよ。そんで?レオはハヤテくんのここにいる経緯はもう聞いたの?」


レオは酒を飲みながらブレダを見る


「ああ。こんなこと聞いたことがないが実際にハヤテ殿に会ってここにあるものを見れば信じずにはいられまい。しかしあのトロールを軽くあしらう様子には驚いた・・・、あれで魔力がないって本当なのか?人間があれだけの動きをするなんて肉体強化の魔法を使わない限り難しいはずだ。」


「たしかにねぇ・・・でも鑑定版で調べたときも魔力はゼロだったよ。魔力を必要としないスキルを幾つか持ってるけど、どれも戦闘スキルじゃない。ただ物理的な攻撃力に関してはバケモノだよ。」


ブレダの話を聞くとハヤテはあることに気づいた


「あれ?スキルと魔法って違うのか?」


「違うねぇ、私を例にするとスキルは【物理耐性】と【ノームの加護】前に見せた私の斧技(アックススキル)【グラウンド・ヴァイパー】は地の大精霊【ノーム】の力を借りて放つスキル固有の技だね。あとは大して多くはないが私も魔力はあるから、自身を強化するための魔法も少しは使える。魔法は魔力さえ有れば努力次第で覚えられる。

ちなみに【グラウンド・ヴァイパー】は魔力が有れば努力次第で使えるようになる、要は自力で放つか大精霊【ノーム】の力を借りるかだ!」


「だから俺には使えないって言ったのかぁ。いいなぁ。」


すねているハヤテを励ますレオ


「しかしハヤテ殿は強化魔法なしであれ程の強さなんですからそこまで悲観することはないのでは・・・」


「もしかしてレオも魔力使えるのか・・・」


「ええ・・・、私は【限界突破】と【獣王の加護】と【ゼファーの加護】ですね。魔力は本当に少ないので、魔法は自分の回復くらいしか習得してません。」


ブレダはガタッ立ち上がり驚く


「獣王の加護!?あんた!まさか獣王の子孫なのかい!?」


「ああ・・・」


ハヤテはレオのタテガミをそっと触りながら質問した


「獣王?なんだそれ・・・」


「獣王ってのはかつてアドラシアの英雄と言われていた獣人だよ。レオと同じライオンの獣人でね・・・かつて魔族と大天使たちの戦争があった頃、この世界は戦争に巻き込まれてね。

悪魔族は魔物や魔獣を従え、天使は人間を従え長い長い戦争が続いた。

その長く続いた戦争を無理やり終結に導いたのが【獣王の率いるアドラシアの亜人連合】と【エルミガントのドワーフとエルフ連合】」


「へぇ!すっげえな亜人たちって!」


「獣王【レオニール】ドワーフの王【シグムンド】エルフの女王【アリア】この三人が中心となって【5人の大精霊】の力を借りて戦争を終わらせ、魔族と大天使たちを黙らせたのよ。」


「んで?そんで獣王の子孫がなんでこんな所に来てたんだ?」


レオは酒の入ったジョッキを作業台に置いた


「私は・・・未来を探しに来た・・・。我々獣人を含めた亜人は何事にも戦いを用いる。だが我々も新しい生き方をしなくてはいけない、こんなことを続けていたら我々はいつか滅んでしまう・・・。だから新しい道を探さなくてはいけないと思い、そのためには我々にないものを学びに旅に出た。」


「ふーん・・・じゃあ俺とここにいれば?」


驚く一同


「なんで驚いてんだよ・・・」


ハヤテを見るレオ


「私は獣人だぞ!いいのか!?私といることでハヤテ殿が他の人間から蔑まれるかもしれないんだぞ!」


「そんなことで蔑む人間と付き合いを持つつもりはさらさらねーよ。俺から言わせてもらえばそんな事を気にすることがくだらない!」


「いい・・・のか?」


「ああ!まだ家建ててないし、まだまだこれからだけどな。俺は持てる知識をすべて使って人の助けになるものを作り出す!」


レオに手を差し出すハヤテ


「これからよろしくな!レオ!」


-続く-

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