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第十話 帰宅

第二章 工房と仲間はこの話で終わります。

次話から第三章 ポルカ消滅が始まります。ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

ポルカからラータまでの道中の街道でハヤテとソフィー、それにベルトリクスの乗った荷馬車はガラガラと音を立てて進んでいた

ベルトリクスはチラチラとハヤテを見ていた


「・・・・おい、ベル。さっきからなんなんだチラッチラッ見てきて。」


「分からんのだ。お前がなぜ私を助けたのか。私を助けるときに使った金・・・我々には人間の金の価値が分からんが・・・結構な額だったんだろ?」


話を聞いていたソフィーは金の入った袋を見る


「こまけぇ事はいいんだよ!俺がそうしたかっただけなんだからお前が気にすることじゃない!」


ハヤテはベルトリクスを笑い飛ばすとベルトリクスはため息を付いた


「分からん、私を迫害し殺そうとするものもいれば。お前のように私を恐れず扱うものもいる。・・・全く分からん。」


しばらく無言が続くとハヤテはあることを思い出した


「あっ!!ブレダが行ってた魔法ギルドに行くの忘れた!」


苦笑いするソフィー


「ま、まぁギルドは逃げたりしませんから。また今度行きましょう。・・・・あっ!」


ソフィーも思い出すように大声を出した


「どうしたんだ?」


「ハヤテさん!そう言えばゴブリンさんたちに使ってもらう荷馬車も買ってませんよ!」


「あ・・・ああ・・・・。ってか残り60万バッツで荷馬車買えんのか?」


「多分無理ですね・・・馬がそもそも高いですから・・・」


「ん~。どうすっかなぁ・・・荷車はこれをそのまま渡しちまうとして・・・」


「これって・・・エルドさんの持ち物ですよ!」


「黙ってりゃバレはしねぇだろ。」


「バレますって!それに荷車が良くても引くための馬はどうするんです?」


ハヤテは青ざめた顔をして考えている


「やべぇな・・・初っ端から約束やぶるのだけは避けなければいかん・・・」


そこへベルトリクスが会話に混じる


「おい。牽引すれば馬でなくてもいいか?」


「馬じゃないって・・・どうやって引くんだ?」


「アドラシアには【メルゴート】と言う生き物がそこらに居て我々亜人はメルゴートに荷車を引かせたりする。馬ほどの速度はないが荷馬車にするなら速度はいらんだろ?メルゴートは速度は早くはないが力もあり身体のデカさの割に餌も少なくて済む。」


ハヤテは目をキラキラさせながらベルトリクスを見る


「そんな生き物がいるのか!簡単に手に入るのか?」


「メルゴートはアドラシアの全体に生息する。賢いからすぐに扱えるようになるし、何度も同じ道を通るならそのうち道も覚えて単独で移動できる。」


ハヤテはソフィーと目を合わせる


「よっし!そのメルゴートを手に入れれば残り60万で荷車を買えばいいんだ!」


「良かったですね!・・・あっ!」


ソフィーが前方を指差すと一階だけのログハウスとプレハブが見えてくる


-プレハブ-


レオルンドは先日から引き続き石灰石を砕いている。その様子をじっと見ているルミカ


「レオルンドさん、何か来るでし。」


レオルンドが顔をあげると遠くからハヤテとソフィーを乗せた荷馬車が向かってくる


「おお!帰ってきたか!・・・ん?何か荷台にいるな・・・」


ハヤテはプレハブに居るレオルンドを見る


「あいつ真面目だなぁ。ちゃんと作業してるよ。・・・ん?なんか横にちっさいの居ないか?」


荷馬車がプレハブの前に停まるとレオルンドとベルトリクスの目が合った


「リザードマンか、エルシアに入ってこんなに亜人に出会うなんてな・・・」


「獣人・・・本当なんだな、人間と暮らしているというのは。」


「ハヤテ殿、この者は?」


ハヤテは荷馬車から荷物を下ろしながら応える


「そいつはベルトリクス。ポルカで不当に処刑されるところだったから100万バッツで身柄を買い取った。・・・・・あっ。」


ハヤテは青ざめた顔をしながらレオルンドの前に歩み寄り静かに土下座した


「レオ、ごめんなさい。お金がもう60万バッツしか残ってません・・・」


レオルンドはすぐに腰を落としてなるべくハヤテと頭の高さを合わせようとハヤテの肩に手をかけて起こそうとする


「ハヤテ殿、なぜ謝るのですか。頭を上げてください。」


ハヤテは土下座の姿勢から頭だけ少し上げる


「いや、レオの分の金も使ってしまったから・・・」


レオルンドはその言葉にキョトンとした


「も、もしかして。懸賞金を私と分けようとしていたのですか?」


「当たり前だろ。二人で魔獣を倒したんだから、その報酬も二人で分けなくちゃいけないだろ?」


(本当にこの人は種族で隔てるようなことはしないんだな・・・我々亜人が金を持った所で使う機会もないのに・・・)


レオルンドは少し微笑みながらハヤテの肩をポンと叩いた


「そんな事は気にしないでください。これはハヤテ殿に必要なものを買うためのお金ですから。そこのベルトリクスを助けるために使ったというのなら私は反対しませんよ。」


このやり取りを見ていたベルトリクス


「レオルンドと言ったな、この人間は何なのだ・・・見ず知らずの・・・しかも我々亜人に・・・大金を使って。」


「見たまんまのお人だ。種族で接し方を変えたりしない。まるで我々を人間として接してくれる・・・そういう人だ。ベルトリクス、お前とくに行く所がないのならここでハヤテ殿の手伝いをしてはどうだ?」


ベルトリクスはレオルンドの目を見つめる


「お前はなぜこの人間と一緒にいる?」


「この人のやることが・・・アドラシアの未来を照らすことになると思ってるからだ。」


ベルトリクスは土下座をしたままのハヤテを見つめる


(我々の大陸の未来・・・)


「よし、それでは私もここで世話になろう。助けてもらった命もあるが興味が湧いた!」


レオルンドとベルトリクスは握手を交わす


「なぁレオ。」


土下座したままのハヤテ


「なんですかハヤテ殿?ほら、もう起きてください。」


「レオの背中に張り付いてるのは何だ?」


レオルンドの背中にはルミカがしがみついていた


「い、いつの間に!ルミカ!離れんか!」


「嫌でし!ルミカだけのけ者でし!」


レオルンドが身体を振って振り落とそうとするが、落とされまいと必死にしがみつくルミカ。

そのルミカを両手で持ち上げレオルンドから下ろすハヤテ


「うさぎの獣人か?」


「いかにも!ルミカは兔人とじんでし!」


「レオ・・・いくら腹減ってるったって、しゃべるやつは食っちゃ駄目だぞ。」


「ハヤテ殿!・・・その者はハヤテ殿を見るまで帰らないといい・・・。」


ルミカはハヤテをじっと見つめる


「すごいでし。人間が獣人とリザードマンを従えるなんて・・・」


「いや、従えてないぞ?一緒に暮らす仲間だぞ?」


レオルンドはルミカの背中を軽く押す


「ほら、もう見ただろう?アドラシアに帰りなさい。」


「嫌でし!決めたでし!ルミカもここに住むでし!」


「はぁ!?」


レオルンドはルミカの頭をまた鷲掴みにする


「いい子だから帰りなさい。私が集落まで送ってあげるから方角だけ教えなさい・・・」


レオルンドはルミカを投げる体制に入った


「まぁまぁレオ、落ち着けって。ってかそこまで感情出すの珍しいな。」


ハヤテはルミカの目を見る


「ここに住んでどうするんだ?」


「さっきレオルンド様が言ったでし!ハヤテ様はアドラシアの未来でし!だから興味があるでし!」


少し考え込むハヤテ


「レオ・・・木材を180本追加だ・・・斧がもう一本あったからベルも手伝ってくれ。」


ベルトリクスは右腕で力こぶを作った


「力仕事なら任せてくれ。レオルンド、斧はあるか?」


「レオでいい。私もベルと呼ぶ。コッチだついてきてくれ。」


レオルンドとベルトリクスは斧を手に取りプレハブの裏手の林に入っていく


「さて、ちょっと家の構造を考え直すか・・・」


ハヤテはルミカに背中に張り付かれたままログハウスへ入る


「グーグー・・・」


ハヤテの毛布にくるまって寝ているブレダ

それをソフィーが起こそうとしていた


「ブレダさん。起きてくださいよぉ。」


「んー、やだぁ・・・」


ハヤテはブレダのそばに近寄り片膝を付いた


「ゴホン・・・。あー、あー。」


するとハヤテはブレダの耳元に口を持っていきドスのきいた低い声を出す


「おい、ブレダァ・・・・さっさと金返せよぉ。」


「!! アルドバ!?」


ブレダはすぐに飛び起きると目の前にはハヤテとソフィーが立っていた


「・・・・なんだ。アルドバの取り立てが来たかと思った・・・」


「ブレダさん、ポルカ支部から新型の鑑定盤とかもらってきましたよ。あとこれ、アルドバさんからの手紙です。」


ブレダは寝ぼけ眼で手紙を広げる


【ブレダへ。 金返せ!積もった借金は120万バッツになったぞ!】


クシャクシャと手紙を丸めて投げ捨てた


「・・・さて、欲しいものは手に入ったのかな?ハヤテくん」


「おい、今さらっと捨てやがったな。とりあえず殆どは目処が付いたよ。後はアドラシアの国境近くでエルゴートって生き物を捕まえに行く、っとその前にまだ午前中だし・・・家の二階を完成させるか。」


ハヤテはプレハブに行きレオルンドが下処理した石灰を触ってみる


「うん。良く出来てる。・・・なぁルミカ。そろそろ降りてくれないか?」


ずっとハヤテの背中にしがみついているルミカ


「気にしないでほしいでし。」


呆れるハヤテはプレハブから一冊のノートを取り出しログハウスの設計図を開く


「うーん。予定は4部屋だったけど・・・6部屋に増やすわけだ・・・これは一階に柱を追加しないとな。入れるならココと・・・・ココかな。」


設計図を書き直すと表に出てノコギリを持ってレオルンドとベルトリクスが切り倒した木を加工していく


「て、手の動きが見えないでし!」


ルミカはハヤテの背中からずっと作業を見ていたが恐ろしく早い動きで目が追いつかない


「ルミカそろそろ本当に危ないから降りてくれ。」


「しょうがないでし。」


ルミカはハヤテの背中から降りて近くの切り株に座ってハヤテを見ている

ハヤテはツナギの上半身を脱ぎ、腰で袖を結んで止める


「おっし!」


加工した丸太を左右の肩にそれぞれ担ぎ一階の上に向かってジャンプする

立っていた地面から二階の床になる部分まで約3~4メートル

そのジャンプを偶然目撃したベルトリクス


「お、おい!レオ!今ハヤテが丸太を担いで飛んだぞ!」


必死に斧を振り木を切り倒すレオルンド


「それは飛ぶだろう。ハヤテ殿だし、丸太を担いだり投げたりもするさ。私も最初は驚いたが、そもそもあの人を我々の基準で当てはめようとするのが間違っている。」


「獅子のお前が言うほどだ・・・強いんだろう?」


「ああ。私より。」


ベルトリクスはハヤテを見て面白がっていた。


「本当に興味深いな。」


「ベル。一度目をそらして、数秒数えてからもう一度見てみろ。面白いものが見えるぞ。」


「・・・?」


ベルトリクスは言われるまま視界からハヤテを外し、木を一本切り倒してから再度ハヤテを見る


「は?」


ベルトリクスの視界に入るログハウスは二階の壁が完成していた


「レオ!」


「ハハハ。私も最初は目を疑ったよ。」


-ログハウス-


ハヤテは丸太を何本も地面に立てていくとノコギリを上から振り下ろす

一回の振りで丸太は4回に切られ角材へと姿を変える

その様子をログハウスの玄関から見たブレダはポカンと口を開けていた


「なにいまの!?あたしには一振りに見えたけど・・・4回振ったの?」


「いや?一振りだよ。なんか出来た。」


「出来たって・・・・その四角い木材はどこに使うの?」


「これは更に切って板状にスライスする。本当はベニヤ板があればいいんだが、いつかはベニヤ板を作る環境にして商売にしたいなぁ。」


「ベニヤ?・・・何だいそれは?」


「丸太を薄く削って、削ったものを接着剤で貼り付けて圧縮するんだ。厚さによっては屋根や床に使い分けができて強度もある。これがあればこの世界の建築事情をひっくり返せるな。」


そう言うとハヤテは幾つも作った角材に一振りしていくと角材はバラバラと厚さ1.5センチほどの板に姿を変え、板を屋根の骨組みの上に乗せてキレイに隙間なく並べていく


「なあブレダ。俺をちょっと上に打ち上げてくれないか?」


ハヤテはブレダの大斧を指差す


「えっ?いいけど・・・何するの?」


「それは打ち上げてからのお楽しみだ。」


ハヤテはツナギのポケットにポルカで買った釘を入れ両手でも釘を持つ


「おっし!行くぞ!」


ブレダは大斧を構えるとそこへハヤテが走ってくる

ハヤテは飛び上がりブレダの大斧の先端に乗るとブレダは大斧を空へ向かって振りハヤテを打ち上げる

ハヤテはログハウスよりも更に高いところに上がっていく


「おぉ・・・たっけぇ!ってか打ち上げすぎじゃね?まぁいいや。」


ハヤテは屋根に向かって両手の釘を投げつけると釘は屋根に並べた板に刺さっていく

更にポケットの中の釘も投げて板に差していくときれいに屋根に着地すると金槌で釘を打ち込んでいく


「後は瓦だな、レンガも必要数は焼いたから瓦の生産も始めるか。」


ハヤテは屋根から飛び降りて内装に取り掛かる


-続く-



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