第一話 ファンタジーな世界
俺は【ササキ・ハヤテ】
アニメ・ゲーム好きの独身の34歳。運送業に努めている。
趣味は機械工作や電子工作、趣味のために実家の庭を潰してプレハブの小さな作業場を作ったくらいに物づくりが好きだ。
本当はそっちを仕事にしたかったんだが、よくある家庭の事情ってやつで諦めて運転手なんかやってる。
正直やりたくてやってる仕事じゃないから、毎日が楽しいわけじゃないし結構うんざりしている。
今の生きがいは休日に作業場に引きこもって拾ってきたジャンクを解体したり修理したりしている。
こんな充実とは程遠い生活が変わるとは思わなかった・・・
あの雷のひどく鳴り響く夜まで。
-二日前-
強い雨が降り雷が鳴り響く夜
「いやすっげぇ雨だな。こりゃ収まるまで作業場に居るか。」
プレハブの作業場には様々な工具はもちろんノートPCにラジオに小型の冷蔵庫、人一人が生活するのに十分な物で溢れている。部屋の隅には知り合いの自動車整備工場などからもらってきたジャンクと言っていいガラクタが積まれている。
「なんか収まるどころか雷の音が近くなってないか? ん?」
ハヤテは窓から外を見ようとした瞬間、雷がプレハブに落ちる。
稲光のあまりの強烈さにその場で意識を失い床に倒れ込む
どのくらいの時間が経ったろうか、うっすらと意識を取り戻すハヤテ
「うう・・・頭がグラグラする・・・気持ち悪い・・・」
這いずりながらプレハブを出るとハヤテはその場で仰向けに転がった
「・・・ん?作業場につないでる電線が・・・断線したのか?」
ゆっくりと立ち上がり周囲を見渡す
「あれ・・・家・・・え?」
プレハブのそばに建っていたはずの家が見当たらない、それどころかプレハブのある場所は何もない平原に存在していた、近くに小川があるくらいしか目立ったところはない
ハヤテはプレハブの屋根に登りさらに周囲を見渡すと遠くの方に建造物の集まりを見つける
「あれは・・・はぁ?城?」
屋根の上で座り込み考え込んだ
(おいおいおいおい!これってあれか。アニメでよく見る異世界転生ってやつか!・・・ん?俺死んでないから転移か・・・。ってかどうすんだよこれ!まずどうすればいいんだ!?こっから見える城とか行ったほうがいいのか!?
いやまて、行ったところで向こうの人と言葉が通じなかったらどうすんだよ。そもそもアニメだから言葉が通じたりとご都合主義が成立してんだから、俺が実際に行ったら全く違う言語かもしれんし・・・・)
「よし。怖いから行くのやめよう。とりあえず今何があって何がないのか確認せんとな!」
プレハブの中に入りノートPCに触ったり何が使えて何が使えないのかを調べていると壁にかかった鏡を見て唖然とする
「若返ってる・・・うっそだろおい。」
自分の顔をペタペタと触る
「高校生の時の俺と同じだな・・・まじかよ・・・若返ったってのかよ。」
ハヤテは驚きとともに確認を終えると外に出る
「こういうのってどうせ元の世界に戻れないんだろうな。・・・電気は使えない。明かりは・・・廃油があるから今夜はそれで簡単なランプを作るか。あとは食い物か、冷蔵庫には缶コーヒーとチョコレート・・・あとは缶詰が数個・・・食いもんだけは早めになんとかしないとやばいよな。」
ハヤテは近くを流れる小川まで歩き覗き込む
(川底まで透き通ってるな・・・魚は・・・居ないか。小さい割には結構流れ早いな・・・作業場からここまで30メートルってとこか・・・。川の水はそのまま使えそうだ。とりあえず飲料水はなんとかなるな。)
「後は食いもんかぁ・・・今夜はあるものでなんとかして明日の朝になにか探すとしよう。」
ハヤテはそのままプレハブに戻っていった
-つづく-