本日 ちょいと温泉へ
ただ一人での露天風呂。
さっきまでの喧騒は何処へ。
微笑みざわめく少女の声、今は遠し。
闇迫る灰色の世界。
宵闇とも夕闇とも言われるこの刻を、幼き頃から無性に好んだ。
昇りくる月はまだ白く、木々の影から顔を出す。
凛としたその輝きを請うは、疲れた現代人の心ゆえか。それとも光を求める人の性か。
温泉の湯気と柱に沿うように、輝きを増す月明かりに心が安らぐ。
満月を彩る雲は白々とゆたう。
風もなく、水音のみが耳をうつろう。
―――ああ、美しい。
この一瞬の輝きを、留める術はないものか。
これを私の幸せとして、ただ記憶に留めよう。




