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横四楓院絞男はタピオカミルクティーがお好き

 「にぃに! タピりたい! 今からタピりにいこ!」


 退屈極まりない大変有難くないハゲ教諭のお経授業が終わり、今日の諜報活動はナニをしようかと教科書を詰めながらボンヤリと考えていると戦場帰りの兵士のような顔した睦海が教室に襲来した。たっタピ……?な、何だそのエロそうな単語は……新手の姦、隠語か?タピる。今まで死のかほりのする世界を渡り歩いてきた僕をもってしても何のこっちゃサッパリ分からん。そしてその分からんという事実を目の前の変人妹様にそのままお伝えするのは高貴なスパイである僕のプライドが許さない。


「よし、分かったぞ睦海! 今からここで一緒にタピるぞ!!」

「…………は?」


 いや、全然分かってはいませんが。

しかし、女子力の高い僕は何となくそのタピるという言葉の意味は理解できるような気がする。この世を裏で牛耳る僕にとって分からないことなど絶対にあってはならないし、それを世界が許さないのである。……。誰ですかいま宗教乙とか思ったお局様は。僕のご立派様のトカレフで往復ビンタしてやるから廊下で勃ってなさい。それはともかく、タピる。動詞であることからナニかの行為であることは間違いないだろう。そして、言葉の響き的にスケベそうな感じはするが、今時の貧乳JCが美男子に向かってエロ行為を要求するとか僕が許しても世論が許さないだろう。エロじゃないとしたら、可愛い系関係のことだろうか。今時のひんぬー系女子といえば可愛いもの大好物である。可愛いといえば、小動物、おやぢ、マスコット。タピる。そうか、分かったぞ!タピるとはゆるキャラなのだ!いや、正確にはゆるキャラによる求愛行動だったのだ!ふな●しーがよく人前で発狂しながらモーションという名の圧をかけているあれと同じようなものである。


 『おたっぴー』の爆誕である。


 やれやれ、睦海め。疲れた僕の頭をフル回転させやがって。しかし、その行為の意味が分かってしまえばこっちのもの。今からこの横四楓院絞男が盛大にタピってやろうではないか!


「おっオっおっオオ……おたっぴィイイイイイイイイイイイイイイイ!」

「…………」

「タピタピタピタピ……おっタッピンイィイイイイイイイイイイイイイ! …………ワッショイ。おタッタタタタタピタピタッピィイイイイイイイ!」

「……なに、やってるのにぃに……?」


 小刻みにジャンプしたり、反復横びなど適度な動きをしながら大声でわめき散らかす。その行為を目の前で見ていた睦海はこの世の終わりのような青ざめた表情していた。


「ナニって……お前の大好きな『おたっぴー』の求愛行動だよ?」

「『おたっぴー』ってナニ!? いきなりキモい動きしながらシャウトしないでよ!! その内本当にしょっぴかれるよ?! そういうマジ基地ごっこは自分のお部屋で思う存分にやっちゃってくださいっ!」


 な、ナニがマジ基地ごっこだ!?

クッ、どうやら紙一重で不正解だったようである。いや、紙一重ならそれはもう正解といっても過言ではないんじゃないか?


「い、言い過ぎだろ。分かったよ、めちゃくちゃ惜しいけど間違ってたんだな僕は」

「ぜんぜん、おしくないんですけどー! もう、にぃにの世迷い言はいいよ! これ! これを飲みにいこって言ってるの!」


 よ、世迷い言とか言うな。睦海はスマホの液晶画面を僕に見せてくる。

どごぞの店のホームページだろうか。そこにはでかでかと何やら人肌の液体が写真で載っていた。ミルクティーか?そのミルクティーの底に黒い球状の物体が沈んでいる。


「ウッ……いきなりこんなグロ画像を見せんなよ。趣味が悪いなあ」

「エッッ!? どこが?! どこにグロ要素があるの!? さっきのにぃにのがよっぽど絵的にグロかったんですけど!」

「この容器の底に沈んでるウサギのフ●みたいなのは何だよ、ビジュアル的にダメだろこれは。ビジュアル系バンドが髪を振り乱して発狂するレベルだぞ」

「ウサギのフ●とか言わないでよ! その黒いのがタピオカ! 全国のタピオカファンクラブ会員に嬲られて埋められるよ! 謝って! ちゃんと謝って!」

「こ、怖いこと言うなよ。悪かったよごめんなさい。そうか分かったよ、睦海はこの武器を買いに行きたいんだな?」

「うわぁん、武器じゃないもん! 全然、分かってないじゃん、にぃにのバカァッ!! 鳥頭!!」


 睦海は何故か泣きながらぽかぽかと僕の胸板を叩いてくる。

だ、誰が鳥頭だよ、こら。どうやらタピオカなる謎の物体は様々なドリンクに沈めて飲むようである。つまりはタピる……タピオカドリンクを飲むという意味となる。フン、分かってはいたが、僕の脳内広辞苑からちょっとタピオカが家出していただけである。決して、その、知らなかったとかそういうのではないのです。それはともかくタピオカを完璧に理解した僕と睦海はタピオカを買いに寄り道を決行したのである。


 ──タピオカドリンク専門店前──


 ざわざわ…ざわざわ…


「ゲェー! な、なんじゃこりゃあ!!」


 僕と睦海がタピオカドリンク屋に赴くと長蛇の列が並んでいた。『只今、最後尾の方は三時間程お待ちして頂いております』との絶望的なアナウンスも受けた。


「何、大袈裟に驚いているのにぃに。タピオカ界じゃこんなの日常茶飯事だし、常識だよ」


 タピオカ界の常識って何ですか?


「べ、別の店に行けばいいじゃないか……それに三時間も待ってたら晩飯の時間になっちゃうぞ」

「にっしっし、いいじゃないの。こうやって、今か今かと待ち続けるのも今風のトレンド的な? 風流的な? 感じがするネーって、近所のオバさんが言ってたし」

「近所のババアの適当な嘘を鵜呑みにするんじゃないよ! 時間は有限なんだ! ナニが悲しくてそんな修行みたいな行為に僕が付き合わないとならないんだよ!」

「ウガーッ! にぃに、煩い! そんなちっちゃいこと言ってるから『不潔感丸出しのイモ男』って噂されるんだよ!」


 だっだだ、誰だ、そんな不愉快な噂を流している不届き者は!?イモはともかく、不潔は訂正してくれ!


「あれ? 何処かで聞いたことがあるような声と思ったら、義兄さんだよ」


 睦海と口喧嘩してると、背後から声が聞こえてきた。何の気なしに振り向くと、そこには学園の制服を身に纏った女子がいた。ギョッ、こ、こいつはあの時のタンバリン女じゃないか!初対面なのに僕のこと兄上様じゃなくてお兄ちゃんじゃなくてにーにじゃなくて義兄さん呼ばわりする変なウザ絡み女だ!ど、どうして、ここに……あ、JKだから別に居ても可笑しくはないか。


「あはは、寧ろ義兄さんの方がここでは浮いてるね。只の学生なのに変なグラサンして、変なスーツして、変なネクタイして、変な顔して、変な挙動して、いまここに並んでる。おめでとう、義兄さん! 株式会社センズリーべーションの代表取締役会長に就任だよ!」


 い、いきなり登場して悪口を滝の如く並び立てるな!


「…………」

「にぃに、この人、誰?」


 JKパワーに圧倒されて押し黙っていると隣にいた睦海が餌を含む配分を間違えた馬のように頬を膨らませて、非難じみた目で僕を睨んでいる。お腹が空いてお菓子でもつまみ食いしたのかな?


「いや、あの、しょの……えっエッエッ、えとえっと……し、しっしっ知らない人なんでしゅかあ?」

「何でにぃにが聞いてくるの!? こっちが質問しているんだよ! あと、何でいきなり挙動不審になるの!?」

「あははは、義兄さんの妹さんだね。これは誤解を解いとかないとね。はじめまして! 妹さん、私は義兄さんの第二の妹の田中巡たなかめぐるだよ。世間的に言えば隠し子、腹違いの妹ってところかな?」


 や、やめてえ!誤解を解くどころか誤解をさらに深めるような言動はやめてあげて!あと、何の罪のない比較的温厚で単身赴任のパパを貶めるのはやめてあげておくれ!


「そんなの知らない! にぃにの妹は世界で私だけだもん!」

「それは聞き捨てならないよ。私の義兄でもあるし……あ、そうだここは仲良く半分こってどう?」

「仲良く……半分こ?」

「うんうん、お腹から上が妹さんの分で、お腹から下が私の分ってことで!」

「でも……。それだと、平等じゃないから縦に半分この方が良いと思う」

「それはナイスアイデアだね! 真ん中でバッサリ分けると対照的だし、平等だね!」

「「和解!!」」


 睦海とタンバリン女は僕の目の前でお互いに握手とハグを交わす。和解じゃねえ!こ、こいつら本人の目の前で何を怖い会話を繰り広げているんだよ!


「お近づきの証に今日は私が義兄さんと妹さんにタピオカミルクティーを御馳走するよ」

「ヤッター! 巡ちゃん、太っ腹! にぃにとは大違い!」


 ま、前に高級寿司(※回っている方の寿司)とか奢ってやっただろうが!ていうか、態度がガラッと変わりすぎだろうが!そして、この何となくめぐみんに似たタンバリン女には今後関わりたくないっ!


 ──三時間後──


「んっ……ンン~、たっタピオカミルクティー、おいしいいいいいいいいい!」

「にぃに、煩い!!」


 タピオカミルクティーは大変おいしゅうございました。

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