横四楓院絞男は義妹(※ただし、♀とは言ってない)がお嫌い
「フン、やはり珈琲はブルーマウンテンに限るぜ」
深みが素晴らし、違うな、コク、いや、渋みか?待てよ、苦みか、香り?……。フン、一流のスパイは珈琲の銘柄などいちいち気にしないのである。素晴らしいものは素晴らしい、それでええじゃないか。別に、『ブルマウンテン』とか響きが何となく青臭い女子の脇の下を連想させるから大好きです、とかそう言うのでは決してないのである。
「くんかくんか……。今日の珈琲は実に背徳的な女子の香りがするな。そろそろ、思春期の季節だ…」
自分で吐いてて何だが、よく分からない台詞を吐きながら今日も今日とて朝の教室に入る。ピーチクパーチク駄弁りながら角界の重鎮のような女子生徒が入室してくるまであと三十分はあるな。よし、今日は仮眠するとしよう。フン、勘違いしてもらっては困るのである。これも立派なスパイの訓練です!
だいたい、仮眠はのび●クン的なサボり魔の大好物だと思われがちであるがそれは大きな間違いであることを我々は認識しなくてはならない。人の睡眠時間は基本的に七時間から八時間ほどが最適と言われているが、僕のような裏の世界で生きる闇の住人にとって夜とは休眠する時間ではなく寧ろお仕事の時間なのである。フン、具体的には画面の中の女と戦ったり、画面の中の血統書付きの洋物ワンコと戯れたり、エコロジーな自家発電を執り行うのである。そのあとスッキリして普通に寝ますがナニか?話が横道に爆走したが、続けよう。
そんなこともあって、スパイが夜時間に安眠を得られることはほぼ無いと言って過言ではない。いや、安眠という言葉程、スパイであるこの横四楓院絞男に似合わないものは無いだろう。安眠はさておき、スパイにとっての仮眠とは夜の休眠にとって代わる時間である。一般的に二、三時間が仮眠と呼ばれるものだが、プロのスパイは隙間時間の十五分からに二十分ほどの仮眠を小刻みにとる。これには理由があって、二十分程度の仮眠は脳を活発化させると言われている為である。そして、寝ている間も周囲の警戒を解かないのがップロのスパイである。手を出せないと思ってノコノコとやって来た変態トレンチギャランドゥおぢさんをズブリ……僕の逞しいトカレフによってヨガリ打ちのめされるのである。
「仮眠場所がレースクイーンやナースのむっちりむちむちした太ももでなく、冷たくて硬い机というのが至極残念だが」
まあ、仕方あるまい。
後日、この学園のハゲに『レースクイーンの二の腕まくら』を用意するよう交渉しておくとしよう。いや、待てよ。流石に、レースクイーンを用意するのは自分の性癖を大勢の人の前でプレゼンするのと同じくらい難易度が高いかもしれない。よし、じゃあ『巨乳秘書のパイ乙まくら』を用意するようにあのハゲに詰め寄ろう。なあに、巨乳秘書の一匹や二匹くらいあのハゲは飼っていることだろう。
「というわけで、おやすm」
シャンシャンシャカシャカシャンシャンシャカシャカ
天使のようにスヤスヤと寝ようとしたしたその時である。
いきなり耳元でナニかを振ったり叩いたりする音が聞こえてくる。……ラップ音か?それともこのクラスルームには髪が長い赤色のワンピースを着た女性の霊でもパラサイトしているのか?一瞬ビクッとして、漏らしてしまったが、滅茶苦茶煩い訳ではないし、ムーニ●マンを装備してるし、スパイは慌てないのである。ここは、冷静に……寝よう。まったく、完徹は辛いぜ!
シャンシャンシャカシャカシャンシャンシャカシャカ
…………。
うぜえ!誰だ!僕の安眠を頑なに妨げようとする奴は!
……。そうか、めぐみんか!僕としたことが、あのストーカー女子の対策に教室の鍵と言う鍵をロックするのをうっかり忘れていた!チックショウ!今日という今日はいくら掘られても激高しない神様仏様将軍様と呼ばれた僕でも腹が立ったぞ!どうしてやろうか、レースクイーン姿で茶しばき大会だ!僕は顔を思い切り上げ、謎の音がする発信源に目を向ける。
「ヘイヘイヘイヘイ! ヘェェェェイ! ユー、タンバリンの時間だよ!」
黒髪ロングの女が僕の目の前でキチ●イのようにタンバリンを振り回していた。……だ、誰だ、この女は?
「…………」
「ヘイ! だんまリズムは酷いじゃないかい! それとも、あれかな? いきなりの美少女の到来に、ヘイ! 下の口が大洪水って奴かな? 私~濡れちゃいますぅ~、ヘイ!」
パンパンタンバリンを鳴らしながら気さくに僕に話しかけてくる名無しの女。いきなり下ネタかよ。ヘイヘイうるさいな。あと、タンバリンをやめろ。
「あ、あのぅ……」
「ヘイ! ちっちっち。義兄さん、私たちの間に言葉は要らないんだぜ。肉体言語だ、ヘイ!」
だんまなんとかは酷いとか言ってただろうが。
何だよ、『義兄さん』って?僕はこんなタンバリン女は知らないし、見たことも無いし、関わりたくないし、とっとこどっかに言っておくれ!これ以上、めぐみんのようなストーカー女子が増殖するのはごめんだ!
「さ、さいなら……」
秘儀☆彡逃亡、である。
「ヘイ! 待ってよ、義兄さん……私はお前の秘密を知っている……」
タンバリン女から背中を向けて教室の外へ逃亡しようとした時である。タンバリン女は僕に向かって、意味深な台詞を吐いてくる。な、ナニ……僕の秘密だとお。僕の秘密って何だ?も、もしかして……蒙古斑が出来ていることを知っているのか!?い、イカしてはおけない……秘密裡に社会的に抹殺するでゲソ!
「…………ヒィ、ひ、みつぅ?」
「フッフッフ、そう、私は義兄さんの秘密を握っている。例えるなら義兄さんのお●んち●を握っているようなものだね」
それ、例える必要があったのお?
「な、なに……を?」
「義兄さんの本当の名前は佐藤雅臣ではない! 義兄さんの本当の名前は……横 痴 呆 淫 絞 男 だということをさ!」
だ、誰が、寝たきりのボケ老人やねん!?
色々と間違ってますけれど!?佐藤雅臣が僕の真名何ですけれど!いや、違う!僕の本当の名前は横四楓院絞男である!そんな要介護が必要な淫乱おやぢみたいな名前ではない!
「間違ってます……」
「白装束の幼稚園児が教えてくれたんだよ。でも、大丈夫! 姉さんには言うつもりは無いから! その代わりと言っては何だけれど、私と遊んでよ!」
聞けや、人の話を。
しかし、遊ぶ?な、ナニをして?も、もしかして……この閉鎖空間(※閉鎖していません)でイケない遊びをするつもりなのだろうか?ナニをナニして……うっ。
「ヒェェェェイ! だっダメです……だだだだダッチ●イフ的なおおおおお遊びはははははワァオ!」(←錯乱)
「何を言ってるんだい義兄さん。そうだなあ、手ごろな遊びと言ったらやっぱ、あれでしょ! 『くっころゲーム』」
なんだい、それは?
「ルールを説明するぜ! このゲームは異世界のとある牢獄が舞台なんだ。鬼畜で外道でお下劣非道なゴブリンに捕まった気高く美しい女騎士が抵抗もむなしく羞恥に塗れた姿にさらされ、これ以上の生き恥は見せまいと抵抗する……というシュチュエーションで繰り広げるゲームだよ! ゴブリンと女騎士の攻守交替製でやるのだ!」
何だその謎設定。
ど、どうやったら勝敗が決まるの?こ、攻守交替?ていうか、何のゲームなのこれ?
「じゃあ、義兄さんは女騎士でお願いね。『ゲヘアへ、オルァ、ねえちゃん良いケツしとるなぁ……ア●ル開発したるさいかいにこっちこい』」
えっっ!?
いきなりなんか始まったんですけれど!しかも、僕が女騎士役ですか?!ちょっ、待っ……。
「く、くっ……コッコォオォッ……コッ! コロしてぇン……」
なんやねん、これ。
「えー。しなをつくってて何かオカマっぽーい。じゃあ、もっかい義兄さん、女騎士役ね」
えっ、まだやるのこれ!?
こうして、始業のチャイムが鳴る少し前まで訳の分からないゲームを謎のタンバリン女とするハメになってしまった次第である。ていうか、結局誰だったんだよ、この美少女……。
─その日の田中さん家のめぐみんさん部屋にて─
「あれ? 巡、機嫌いいね。どうしたの?」
「あ、姉さん。聞いてよ、義兄さんはいぢり甲斐があって、面白いね。姉さんが夢中になるのも分かる気がするよ」
「え゛っ……だ、誰の事!?」




