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横四楓院絞男は焼肉がお好き

 焼肉は戦争である。


『にぃに! 肉! 焼肉が食べたい! 肉々しい肉をたくさん食べたい!』


 とある日の放課後。

クラスルームで帰り支度をしていると、中等部の睦海が突然やって来て駄々っ子のように僕の身体を揺すりながら何かせがんできやがった。憎々しい肉ってなんだよ…オージービーフに親でも殺されたのか?いや、あの全身凶器のオカンは絶対に蹂躙する側だよなとしょうも無いことを考えつつも、あ、これいつもの散財フラグだなと思い至った僕は取りあえず肉肉煩い睦海をオカンに相談した。コンバットナイフに服を着せたようなオカンにこのような相談をするのは全身の毛穴から毛ジラミが湧き出そうなくらい嫌な強制イベントなのだが、娘のことなら借りてきた猫のように素直に応じてくれるだろうと思い切って相談した次第である。


『フーン、焼肉ねえ……モヤシの生まれ変わりのようなあんたにしては気が利くね。ま、それなら肉買って家でやるか。三人だけでヤルのもアレだし、あんたのとこのお嫁さんとあたしの可愛い後輩も呼んでやるか。週末にヤッチまうぜ』


 この方は罵倒を挟まないと正気ではいられない精神的な疾患を患っているのだろうか。畜生、いつか枕元で『生んでくれてありがとうございます』って恨み言を唱えてやるからな、覚悟をし!それは兎も角、とりあえずは焼肉フラグはびんびんに立ったのでひと安心である。オ ヨ メ サ ン ?僕のお嫁さんって何だろう?僕のお嫁さんはつぶらな瞳が愛らしい豆柴を引き連れたレースクイーンなのだが、一体誰のことだろう。あと、いかつい顔したオラオラ系の熟女がヤルヤル連呼しないで下さい。怪しいヤリサーみたいな感じに見えてしまうではないか。


 そして、週末。


「おば様、今日はお食事に呼んで下さってありがとうございます。あと、たいしたものじゃないですけどこれ受け取って下さい!」

「良いって良いってそんな畏まらなくても……おぉ!? マル⚫ロじゃん! サンクス~」


 下品な声でタバコダースを受け取るオカンとめぐみんの姿がありました。何で当たり前のようにこの娘がここにいらっしゃるのだろう。ていうか、女子がクラスメイトのオカンにタバコを献上する姿って絵的にどうなのだ?極道の女がカタギの人間からブツを巻き上げているようにしか見えない。


「……千聖ちさと先輩。先輩の家だからあまり言いたくは無いのだが、私の生徒の前でタバコを吹かすのは出来れば辞めてほしいのだが」

「ギャッハハ! まあ、いいじゃん、いいじゃん。今日はじゃんじゃん肉を喰らってムクムクと成長しろよな育!」

「……。先輩、頼むから頭を撫でながらそういう事を言うのはやめてくれ無いか? もう、お互い学生じゃないんだ」


 そして、もう一人、意外すぎる人が我が家の食卓を囲んでいた。ケミカル幼女もとい天宮先生である。うちのオカンがペロペロキャンディをエサにさらってきたのだろうか。因みに『千聖』とかいう綺麗な名前はオカンの下の名前である。名は体を表すとは言うが、母方の祖母はどういう心境でこの名前をオカンに授けたのか小一時間問い質してみたい。『酒池肉林ちゃん』とか『猪突猛進ちゃん』とか『悪鬼羅刹ちゃん』とかの方が絶対似合っていると思うが。


「まあ、いいじゃん、堅いことはいいっこなしだよ! あ、固くなるのはビーチクとちん⚫んだけで充分ですってか? イヒヒヒヒ!」


 この二児の母、最低である。


「お母様、犯罪行為はいけましぇん」

「ハァー? 何訳の分からんことを言ってんだテメー。鉄ヤスリでテメーの頭を万年窓際バーコード係長にしてやろうか?」

「すみません、すみません」


 オカンは拳を突き出して暴力に訴えようとした為、僕は全力土下座で謝った。怖い!何て恐ろしいことを言うんだ!男子の毛根を死滅させる行為はAVで無理矢理剃毛しようとする行為と同じくらい非道い行為なんだぞ!……ちなみにAVとはアニマルビデオである。


「もぐもぐ……でも、新生児先生が佐藤くんのお母様と先輩後輩の関係って意外だなー」

「……。まあ、世の中は狭いというからな。此の親にして此の子あり、というから私にはそう意外にも感じなかった」


 めぐみんと真性児もとい天宮先生は自分が育てた肉をむくむくと咀嚼しながら話し合っている。天宮先生、絶対その言葉良い意味じゃないですよね?


「隙あり! にぃにの肉いただきマンモス!」


 パックゥゥゥゥン!!


 わっわわわわわわッ……ワァオ!

僕が三日三晩かけて育ててきた百グラム税込千九百四十四円の極厚高級牛タンが瞬く間に睦海の上の口に吸い込まれおったで!チョッチョチョチョチョッ……待てぇ!鉄板上に乗っている肉なら兎も角、僕のホームグラウンド(←取り皿)に入り婿した肉を分捕るとか人間としてルール違反じゃなかとですか!?


「むぐむぐ……脂が乗ってて、舌がチョ~とろけそうなんだよう」

「『したが~チョ~とろけそうなんですぅ~』じゃネェ!! 吐け!! 仔牛の頃から育てた僕の牛タンを吐くんだジョオォオオオウォオオン!!」(←血涙)

「グギギギギ、グゴゴゴゴ、ガガガガガルルル!(通訳:コノニクハ ワレワレノ エサダ オマエニハ アゲナイ)」


 僕は睦海の両頬を横にひっぱり吐き出させようと必死になるが、モウ既に咀嚼が終わったのか僕の牛タンはどうやら天に召されたようである。畜生、ちくせう、チクショウ……一人一枚しか与えられていない極上の牛タンだったんだぞ!!僕の妹は血も涙もない非道徳で悪魔な人間だ!!


「さっとうくん……。一定数の割合で吐瀉物とか排泄物を好む危ない人がいるってイケナイ絵本で読んだことあるけれど……そういうのは流石にどうかと思うよ。でも、睦海ちゃんの唾液まみれのタンは食べてみたいなあ」

「ムギャー! いっいいい言った! この女、今さらっと恐ろしいことをカミングアウトしたあ! にぃに、この女やっぱり頭おかしい! タスケテ!」


 ゲェッー!誤解だ!

僕をゲテモノ族といっしょくたにするな!


「……。佐藤氏、そんなに灼けるような熱い視線を私に向けるな…。そんなに見つめても私の胃液まみれの『牛の舌』は出せないぞ? まあ、お前が大好物な私の黒の下着は渡してやらんこともないが……ほら、好きだろ?」


 天宮先生は僕の手にほんのりと暖かい黒いブツを握らせる。エッ…ほ、ほんとに、した、ぎ、ってシュシュだ!シュシュだこれ!危うく甘美な破廉恥道に引き込まれそうになったシュシュだ!き、期待させおってからに何て乳児だ!赤さんのようにちうちう吸ったる!違う、僕はそういう事を言いたいんじゃない!如何にも、いつも黒い下着を渡してるみたいな言い方をするんじゃない!


「……さっとうくん、やっぱりさっとうくんは天宮先生の黒い下着とニーソが大好きなんだね……先生が下着姿で黒のニーソ履いてる姿を想像して夜な夜なシコッてるんだよね……」


 ジト目で、恨みがましい表情で僕を見つめるめぐみんさん。

おい!何か僕の大好物が増えてるぞ!女子がナチュラルにシコるとか言うの止めろ!誤解だ!僕は下着姿で黒のニーソ履いてる幼女に大事なところを踏まれるのが好きなんだ!


「フフ、そうか。佐藤氏は私がニーソ履いて下着になってる姿を想像してイタシているのか……」

「オォイ、テメー、育を見ながらイクそうになってんじゃねーだろなあ? アァン? ギャッハハ! うまいことイッチマッタ」

「にぃに、にぃに? にぃにの汚部屋にちっちゃい女の子が黒い下着とニーソ履いてる絵本が沢山あったけれど、やっぱり好きなの?」


 やめて…やめてくれ…やめてください…やめてあげて!

よってかかって横四楓院氏を精神的に追い詰めるのはやめてあげてよぉ!ていうか、さっきからなんなのぉ?焼肉の鉄板を囲んでのこの僕の性癖談話。先刻のゲロ談話もそうだが、肉を喰ってる時にする話しじゃないだろ!どうせなら、レースクイーン談話をやるんだ!


「く、悔しいよ……落とす……さっとうくんは絶対に私が落としてやるんだから……」


 僕の隣で指先を噛みながら、ブツブツと独り言を呟くめぐみんさん。く、悔しいってナニが?落とす?落とすってなにさ?突き落とす?絞め落とす?かかと落とす?地獄に落とす?こ、コエェ…な、なんでいきなりこの娘、プチメンヘラ化してるの?


「まあまあ……秀臣よ、喰えや。お前のブツのようなこのポー⚫ピッツをよ」


 オカンは僕のホームグラウンドにボトボトと小さいウインナーを投入する。ふ、ふざけるな!僕にポーク●ッツなど似合わないぞ!僕はシャ●エッセンで是非とも宜しく御願い致します!バッティングセンターでホームラン打てるくらいご立派なんだかんな!


「にぃに、ゴメンネ? 先刻のお詫びにこれあげるから……」


 睦海はショボンと気落ちした表情で僕のホームグラウンドに焼きなすやらピーマンを次々にボトボトと投入する。こ、こいつぅ、自分の苦手な物をリリースしているだけだろ!


「ふむふむ…。しかし、久し振りに『牛の屍肉焼き』を食べたが、中々に美味だな。佐藤氏、この『牛の肝臓』なんかは濃厚で口内に入れた瞬間、パサパサで口内の水分を持ってかれるぞ」

「…………」

「うんうん…『牛の横隔膜』も内臓でありながら肉肉していて美味い。『牛の大腸』も内臓特有のコリコリ感がたまらないな。この『牛の第三胃』も…」


 お願い!乳幼児先生ェ!

正式名称を日本語で言うのやめてあげてください!


「がー! さっとうくん、またあられもない新生児先生の姿をガン見してるー! もーもーもー! ガン見するなら、私を見~ろ~!」


 サクッサクサクサクサクサクッ!


「ヒェッ…ヒェッヒェヒェー! ご、ごめんなチャイ!」


 メンヘラニストのめぐみんさんは河豚のように頬をプクーッと膨らませ、僕の顔に目がけて手持ちの割り箸を突き刺してくる。あ、あられもなくはないだろ!只、肉喰って一人で実況解説してるだけだったじゃないか!


「さっとうくんの浮気者! 絶倫不能明王! イン●マン!」


 サクッサクサクサクサクサクゥ!


 箸の雨嵐が止まらない!

やめっやめやめやめやめーい!いい加減やめてあげて!僕の世界に二つしか無い貴重な目を潰すつもりか!?


「フン、これが青春の味……ってやつか」


 パワフルせっくるのオカンはハラミを口に入れながら呟いている。こら!劇画調な顔して何意味不明なことツイートしてんだ!助けてください!

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